11. 休日(ルシカ視点)1/2

>>休みのルシカ


「え?今日は休みなの?」

「あぁそうだ。毎日頑張っているから、たまには休みが必要だろ?

1週間に1日、休みを取るんだ。」


「そうなんだ。休みって何すればいいの?」

「どこでも好きなところに行っていい。好きなものを買って、好きなものを食べて、公園のベンチに座って花なんか眺めたりして好きに過ごせばいい。」



「じゃあ図書館に行ってみる。」

「そうか。じゃあ俺が送ってやろう。帰りは何時になる?昼は?」


「そんなの分かんないよ。

僕が読めそうな本が無ければすぐ帰るし、面白い本があれば夕方までいるかもしれないし。」

「そうか。」


そうだよな。けどシュペアを1人で出歩かせるのは危ない。

とりあえず送っていくのは決定だ。




「お?2人ともどこか行くのか?」

ドアを出ると、ちょうどゲオーグも出てきた。


「あぁ、シュペアが図書館に行くっていうから、送っていくところだ。」

「そうなの。今日はお休みだから好きなことしていいんだって。」


「俺も一緒に送っていこう。」

「うん。」


シュペアを挟んで左右を固めて歩く。





「じゃあ僕行ってくるね。」

「あぁ。」


「シュペアは何時までいるんだ?昼は?」

「ゲオーグお前・・・俺も朝、同じことをシュペアに聞いた。

そしたら分からないってさ。

読める本が無ければすぐ帰るし、面白い本があれば夕方までいるかもしれないと言っていた。」


「そうだよな。じゃあどうする?

シュペアを1人で街中歩かせるのは危ないだろう。」

「そうなんだよな。」


「とりあえず座ろうぜ。」

「あぁ。」




「あいつ、傍目から見ても可愛いよな?」

「どうした?ルシカ、そっちに走る気か?」


「いや、一般論だよ。俺は女の子が好きなの。少年は対象外だ。」

「そうか、安心した。」


「まぁシュペアは俺にとって、歳の離れた弟みたいな感じだな。」

「なるほど。俺もそんな感じだ。強いのは分かっているが、守ってやらなきゃいけないと思っている。」


「あぁ、そうだな。で、あいつ可愛いよな?」

「まぁ、その辺にいる子供よりはかなり可愛いと思う。」


「だよな。奴隷商に狙われるよな?」

「あぁ、そういう意味か。あの容姿なら狙われるだろうな。

最近、この領地では非公式の奴隷商はかなり減ってたんだが、他所から攫う専門の奴が来ていると噂がある。」



「やっぱりシュペアは1人で歩かせられないな。」

「そうだな。

奴隷商だけじゃなく、貴族に目を付けられるのも危ないな。」


「うわぁ、それもあったか。それはどうすればいい?

俺らじゃ身分的に抵抗できないぞ?」

「まぁな。貴族が行きそうなところには近づかないようにするくらいしか思い浮かばねぇな。」



「魔術が得意だし、魔術師ってことでフードがでかいローブでも着せて顔を隠すか。」

「それも有りっちゃあ有りかな。シュペアが受け入れるなら。」


「だよなー」



俺らがこんなに悩んでんのに、シュペアは楽しく読書か~

まぁ、シュペアが楽しいならそれが1番だけど。




俺は首の後ろで手を組んで空を見上げた。


晴天の空が広がっていて、白い鳥が上空を飛んでいた。



「そういえば、ゲオーグはどこかにいく予定があったんじゃないのか?」

「いや、予定というほどじゃない。

け、ケーキを、食べに行こうと思っていただけだ。」


「女の子と?」

「いや、1人で。」


「ゲオーグ1人でケーキ屋入れるの?勇者じゃん!」

「いや、勇者などではない。揶揄うな。

いいだろ男がケーキ食べても。」



「まぁ別にいいが。あの店の雰囲気はキツイだろ。

しかもゲオーグだし。」

「そこまで女子向けじゃないところもあって、そこを見つけてからはそこに。」


「そんなとこあるの?それなら俺も行きたーい。」

「ルシカは女の子と可愛い店に行けばいいじゃないか。モテるんだろ?」


「まぁ、モテる。はずだ。

だが、みんな友達止まりなんだよな~。」

「じゃあその友達と行けばいいだろう。シュペアと俺にお土産よろしく。」



「ダメだ。今は女の子との時間よりシュペアのが大事だ。」

「そうか。でもシュペアはいつ出てくるか分からないぞ?出てくるまで待つのか?」


「そうだよなー

って、ゲオーグお前もどうすんだよ。」

「俺は別にここで夕方まで待ってもいい。ケーキは別の日でも食べられるし。」



「トイレは?ご飯は?」

「トイレは近くの公園に行けばあるだろ?飯なんか一食くらい食わなくてもどうってことない。」



「ま、まぁ、そうだな。そんな休日でいいのか?」

「いいんじゃないか?いつもお前らに癒されているからな。

たまには俺も役に立ちたいというか・・・」


「なんだよ。お前もそんな見た目なのに中身は可愛いのかよ!

このやろー」


俺はその素直さがちょっと悔しくて、ゲオーグの髪をぐしゃぐしゃに撫で回した。



「おい、やめろ。誤解されるだろ。」

「それは困る。」


ふぅ。



「あれ、そう言えばゲオーグ、お前の歳っていくつなんだ?」

「俺は・・・、、、だ。」


消え入りそうな声でボソボソと話すゲオーグの声は全然聞き取れなかった。



「は?なんて?」

「18、だ。」


「え?18?マジ?

俺、何なら歳上かもしれないとか思ってたんだけど。てっきりもうベテランの域に達してる30代くらいなのかと。

あぁ、だから最近Bランクに上がったところなのか。」

「よく言われる。老けて見られるから、それで歳はあんまり言いたくないんだ。

年齢が上に見えた方が舐められないってメリットもあるし。」



「あぁ、なんかすまん。」

「ルシカは?」


「俺?俺は27だ。俺は逆だな。童顔で若く見られるから舐められる。

ゲオーグみたいにゴツい身体じゃないからなおさら舐められる。」

「そうなのか。もうベテランなんだな。俺の2-3個上くらいかと思っていた。」



「まぁ、ベテランか。そうだな。って、俺だってまだそんな年寄りじゃないからな。まだ若いからな。」

「分かっている。いや、年寄り扱いしようと思ったんじゃなくて、旅とか戦いに慣れている人がパーティーにいるのは心強いと思ったんだ。」


「そうか。ゲオーグお前、いい奴だな。

今度お兄さんが大人のお店を教えてあげよう。」

「い、いや、そういうのは・・・俺は・・・やめておこう。」



「なんだ。やっぱり中身は可愛い奴なんだな。」

「可愛いって、俺が可愛いわけがないだろう。」


周りがみんな純真だ。

俺、このまま浄化されちゃうかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る