シュペア誕生日記念SS-2/2
図書館の階段を上がると、僕は魔術を解いた。
「こんにちは。」
「あら、こんにちは。今日もお勉強?」
「うん。えっと、この前の初心者向けの攻撃魔術の本があれば見せてください。」
「分かったわ。ちょっと待っててね。」
図書館の受付にはいつもお姉さんがいて、読みたい本を伝えると探してきてくれる。
しばらくすると、お姉さんが本を抱えて戻ってきた。
「どうぞ、これでいいかしら?」
「はい。ありがとう。」
僕は本を受け取ると、机と椅子がたくさん並んでいるところまで行った。
初めの頃は読んで眺めるだけで楽しかったんだけど、せっかく覚えたのを忘れちゃうことがあったから、紙に書くようにした。
本は外に持っていくことはできないけど、書き写すなら、それは持って帰ってもいいんだって。
中には書き写すのもダメな本もあるみたいだけど、それは許可された人しか見れないみたい。
僕は羽ペンとインク瓶と紙の束を鞄から出して、本を広げた。
ルシカは槍だし、ゲオーグは斧だから、僕も槍を使うより、後衛の魔術師みたいな動きもできた方が、戦いやすいと思った。
水の出し方は分かるし、槍を遠くまで飛ばすやり方も分かる。
前に結界と、認識阻害も覚えた。あと重力操作も。
こんな感じかな?って感覚で使ってたけど、攻撃魔術は危ないから、ちゃんと勉強してから使おうと思う。
間違えてルシカやゲオーグに当たったら大変だから。
あとで森の浅いところまで行って試してみようかな。
この前、書き写して帰ったのは、氷の矢を飛ばす方法と、石を作って飛ばす方法。
今日は風の矢と、炎の矢を飛ばす方法を書き写した。
矢は、慣れてくるとたくさん出せるようになるらしい。
基本的なものを覚えれば、矢を槍に変えたり、ボールに変えたり、大きさや形を変えて色々できるから、まずは基本の勉強をしてる。
もっと上手な人は、たくさん出した矢の1本ずつにそれぞれターゲットを設定して、自分の思うところに飛ばせるらしい。
僕もいつかそれができるようになりたい。
できたらルシカやゲオーグは、また褒めてくれるかな?
それを想像したら嬉しくなって、心がウキウキした。
夕方までに帰らないと2人が心配するから急がなきゃ。
僕は鞄にペンとインクと紙の束をしまって、本を閉じて席を立った。
「本、ありがとう。」
「あら、今日は早く帰るのね。」
「うん。森で練習したいから。」
「そっか。気をつけてね。」
「うん。」
認識阻害の魔術をかけて街を走っていく。
外門の少し前で魔術を解除して、門番さんにギルドカードを見せて森に向かった。
近くに人の気配は・・・耳を澄ませて音を聞いてみるけど人はいなさそう。
この辺りなら大丈夫かな。
僕は大きな木に向かって、氷の矢と、石と、風の矢を次々に撃って練習した。
炎は危ないからまだ使っちゃダメ。
これは領主様に言われたから守ってる。
少しずつ距離を離して、遠くから矢を撃っていく。
距離を離して練習したら、次は少し形や大きさ変えたり、スピードを変えたりして練習した。
矢をたくさん出すのは、もっと練習してからにしよう。
距離を離したり、形を大きくすると魔力の減りが少し多くなることに気づいた。
スピードを上げるのは、あんまり魔力の減りは変わらなかった。
色んなことができるようになるのは楽しいな。
いつか僕も、魔術だけで魔獣を倒せるようになるかな?
魔術を練習していると、魔力の残りが少なくなってきた。
僕は魔術の練習をやめて、魔力をグルグルしながら森に落ちてた木の枝を拾って、少しナイフで削って槍の練習をした。
喉が渇くと手から水を出して飲んだ。
ふぅ。
もうそろそろ帰ろうかな。
空が赤く染まってきたから、僕は街に帰ることにした。
帰りも走って帰る。
今日は小さなナイフしか持ってないから、魔獣とか、悪い人に遭ったらいけないし、認識阻害をかけて走る。
外門が見えると、僕は魔術を解除して列に並んだ。
順番が来てギルドカードを見せると、中に入ってからまた認識阻害をかけて走って宿まで帰った。
今日は楽しかったな。
ゲオーグは鞄とアームガード買えたかな?
コンコン
「ルシカ戻ってる?」
「開いてるよ。」
「ただいま。」
「シュペアおかえりー」
一緒に帰るのも良いけど、おかえりって迎えてくれる人がいるって良いな。
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