9. 薬草採集とゴブリン
昨日話し合って、僕のランクを上げるために、薬草採取と講座は1日おきにすることになった。
だから今日は薬草採取に行く。
「これ、お願いします。」
受付に依頼書を出してスタンプをもらうと、僕たちは東の森に向かった。
この前と同じ薬草だったから、すぐに袋はいっぱいになった。
「終わったよ!」
「お、随分と早いな。いっぱい取れたか?」
「うん。」
僕は得意げに薬草がパンパンに詰まった袋を見せた。
「マジか。あの短時間でそんなに。」
「ゲオーグ、ルシカは?」
「ん?良いのがいたから誘き寄せてくるとか言って森の奥に走って行ったな。」
「何だろうね?」
「何だろうな?んん?」
「これ・・・。」
「シュペア、お前も分かるのか?」
「うん。なんか嫌なものがこっちに向かってくる。」
「シュペア~、ゲオーグ~、
修行相手連れて来たぞー」
そう言いながら、ルシカが走ってくる。
後ろにはゴブリンが10匹くらい追いかけて来ていた。
僕はすぐに槍を構えた。
身体強化を足と腕に使って、速く動けるように、槍の威力が増すようにした。
けど、初めて戦うゴブリンは、僕と同じくらい小さくて、遅くて、力も弱かった。
「シュペア、身体強化無しでいけるか?」
「やってみる。」
「シュペアはこの歳で身体強化を使えるのか。」
「あぁ、シュペアは意外と凄いんだ。
たぶん魔力量も多い方だと思う。他の魔術も使えるしな。」
「そうか。優秀だな。まだ小さいのに凄いな。」
「そうだな。」
僕は槍で突いて倒したことがあるのはウサギだけだったけど、ゴブリンともちゃんと戦えた。
錆びたナイフを振り回されても、ちゃんと槍で止めることができた。
胸や咽喉をグッと突いて倒していった。
でも、最後の1匹のナイフを受けた時に、槍が折れて、その拍子にバランスを崩してしまった。
迫り来るゴブリンに、起き上がれず、もうダメだと思った。
「「シュペア!!」」
2人が慌てて走り出したけど、たぶん2人は間に合わない。助けて、僕を守って。そう思って丸くなって魔力が少し溢れた。
ガキンッ
グシュ、ドサッ
僕はまだ生きてる。
横を見ると、最後の1匹のゴブリンが倒れていた。
「シュペア、大丈夫か?」
「うん。」
「お前、結界も張れるのか。冷や冷やしたぜ・・・。」
「結界?」
「あぁ、感覚派だから無意識に使ったのか。」
「・・・。」
「あ~シュペアは魔術を理屈じゃなく感覚でイメージして使うんだ。
だから、時々面白いことが起きる。」
「な、、なるほど。で、今は知らずに結界を使ったと。」
「結界は自分を守る魔術だ。もし危なくなったら、またそれを使え。
ただし、相手が強かったり、結界の強度が弱いと防ぎきれない場合もあるから気をつけろ。」
「分かった。」
自分を守る魔術か。そんなものがあるんだ。
じゃあ結界を張りながら、身体強化を使ったら無敵になりそうと思って、挑戦してみたけど、同時に2つの魔術を使うことはできなかった。
そもそもできないのか、難しいだけで練習すればできるのか、どちらかも分からない。
「槍、折れちゃった。」
「ワイルドベアを倒した金で買えばいい。そう言えば防具も買ってなかったな。」
「防具なしじゃ危ないから揃えた方がいい。」
「この槍はどうする?」
「先の矢尻だけ持って帰る。唯一僕が村から持って来たものだから。」
「そうか。ゴブリン倒したんだから洗った方がいいぞ。」
「分かった。」
僕は折れた槍に紐で縛ってあった、石を削って作った矢尻を取り外すと、魔術で水を出して洗った。
「ほぉ、シュペアは水も出せるのか。凄いな。」
「うん。これは最初に教えてもらった大切な魔術なんだ。」
「そうなんだな。」
「うん。」
領主様は元気だろうか?
また色んな村を回って、色んな人を助けてるんだろうか。
僕も頑張らなきゃ。
「僕、街まで走って帰る。」
「お?どうした?」
「体力つけて早く強くなりたいから。」
「そうか。じゃあ俺らも付き合うわ。」
「そうだな。」
帰り道は、3人で走って帰った。
「シュペア体力あるな。俺、途中で身体強化使ったぞ。」
「俺もだ・・・。」
「じゃあ僕は受付にいってくる。」
「いや、俺らも行く。」
「ゴブリン倒したしな。」
「ゴブリン持って来てないよ?」
「ほら、右耳だ。これがあれば討伐した証拠として報酬がもらえる。
ゴブリンは食べられないし使える箇所もないから、右耳だけ持ち帰るんだ。」
「そうなんだ。」
「まずは薬草採取の報告だな。」
薬草採取は、また小銀貨2枚と銅貨5枚もらえた。
ゴブリンの討伐は、パーティーの報酬になった。パーティーで討伐や依頼を受けたときはパーティーの報酬になって、報酬の割合は自分たちで決めることができるんだって。
僕は3人で分けるんだと思ってたのに、ルシカもゲオーグも、全部僕にくれた。
小銀貨5枚。
僕だけもらうなんてできないって言ったら、シュペアが全部倒したんだからもらう権利があると言われた。
2人は本当に優しい。
こんなに優しい人が近くにいて、僕は幸せだ。
その後、僕たちは防具屋に行って、腕とか足とかにつけるプロテクターというのを買って、武器屋で新しい槍を買った。
槍だ。本物の槍だ。
ずっと憧れてた。これが僕の槍。
凄い。本当に僕のものなんだ。
大切に使おう。
帰り道、小さなナイフと、カバンも買った。
なんか、本物の冒険者みたいだ。嬉しい。
ーーーーーーー
お金の価値
銅貨(100円)
小銀貨(1,000円)
銀貨(10,000円)
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