6. 初めての薬草採集
「ルシカ、起きて。」
「今日はまだ寝る・・・。昨日依頼受けたから今日は休む・・・。」
「ルシカは休むのか。じゃあ僕は冒険者ギルドに行ってくるね。」
「あぁ・・・。ってえ?ちょっと待て。」
ガチャ
ルシカは僕が部屋を出る時に起きたみたいだったけど、休むならそのまま置いていってもいいかな。
僕はたくさん依頼を受けて、強くなりたいし、昨日ルシカが言ったみたいに、いい槍も買いたい。ルシカにご馳走してあげたいし。
今日も頑張るぞ。
「シュペア、1人で出掛けるのかい?」
「うん。お仕事に行くんだ。」
僕が宿を出て行こうとすると、女将さんが僕を見つけて声をかけてきた。
「偉いね。それに比べて、はぁ・・・ルシカは何やってんだろうね?」
「ルシカは今日お休みだって言ってたよ。」
「そうかい。気をつけて行くんだよ。」
「うん。ありがとう。」
僕は冒険者ギルドに向かって歩き出した。
「シュペア、ちょっと待て。俺も行く。」
しばらく歩くと、後ろからルシカが走って追いかけてきた。
「え?でもルシカは今日お休みでしょ?僕1人でも大丈夫だよ。」
「ダメだ。危ないから俺も一緒に行く。」
「危なくないよ。昨日はちゃんと1人で依頼受けれたし。」
「シュペア、よく聞け。
危ないのは魔獣だけじゃない。魔獣より危ないものがある。」
「え?何?この街にいるの?」
「あぁ。いっぱいいる。人だ。」
「人?」
「昨日の斧持った奴とか危ないだろ?
それに、シュペアは見た目が好まれそうだから奴隷商が危ない。
攫われて売られる。」
「なにそれ、怖い。
人を攫って売るの?まさか食べるの?」
「食べはしないが、近いことはするかもな。痛いこととか。嫌なこととか。」
そんな・・・。
人が人を・・・なんで?
「大丈夫だ。俺が一緒にいれば攫われないから。」
「うん。」
冒険者ギルドに着くと、たくさん人がいた。Gランクの掲示板の前には誰もいなかったけど、違うランクのところにはたくさんいた。
僕はまた農作業の手伝いの依頼を選んだ。
「シュペア、それで良いのか?もっと報酬が多いのもあるぞ。」
「そうなの?」
「この紙の右上に報酬が買いてある。
シュペアが持ってる紙は茶色の丸が3個。
こっちの紙は茶色の丸が5個だろ。
これがもらえる報酬の額だ。」
「知らなかった。ルシカ、教えてくれてありがとう。これ、草を摘んでくるやつだよね?僕にもできるかな?」
「簡単だ。俺がいるからな。
この草は薬に使うやつだから、依頼達成報酬とは別に買い取ってくれる。たくさん見つけたら、たくさん儲かるんだ。」
「凄い。じゃあ僕、これ受けてみる。」
僕は受付にその紙を持って行った。
受付のお姉さんがスタンプを押してくれて、その草を摘んだらそのままギルドに来るよう言われた。
そっか。これは誰かの手伝いじゃないから、サインもらわなくていいんだ。
そしてその薬草は、街の東門を出て左に広がる森にあると言われて、専用の袋も渡された。
「懐かしいなー
薬草採取とか、駆け出しの頃よくやったわ。」
ルシカは両手を首の後ろで組みながら、空を見上げてそう言った。
「ルシカもやったことあるの?」
「あぁ。昔な。」
「じゃあ今はどんな依頼を受けてるの?」
「うーん、今は色々だな。魔獣の調査とか、魔獣の討伐とか、稀に護衛とか。」
「凄い!ルシカは魔獣を倒せるんだ?」
「凄いだろ~
俺ってばこう見えて結構強いんだよね。Bランクだし。」
「Bランク?」
「あれ?登録の時に説明されてないの?
初めはGで、依頼をたくさん受けたり、強くなるとランクが上がっていくんだ。
1番上がS。今はいないが。
その次がA、で、その次がB。俺はそれ。」
「へぇー知らなかった。
僕は子供だからGランクなんだと思ってた。僕も依頼をたくさん受けて強くなればランクが上がる?」
「あぁ。冒険者は年齢とか性別は関係なく、ちゃんと依頼を受けて強ければランクは上がる。」
「僕頑張るよ。」
ルシカはニコニコしながら頷いた。
薬草採取は、ルシカが言った通り簡単だった。その草を探して摘むだけだから。
村でもこの草は見たことがある。怪我をした時にこの草の汁を付けると痛くなくなるやつだ。
「ルシカ、もう入らないかも。」
ギルドが貸してくれた袋はもういっぱいで、これ以上は入らなさそうだった。
「おぉー凄いな。こんなにいっぱい取って。
じゃあせっかく森に来たし、ちょっと散策と訓練して帰るか。」
「うん。」
「いつもはどうやって訓練してたんだ?誰かに教えてもらったとか?」
「僕1人で山に行って、走ったり、ウサギを狩ったり、鹿も一度倒したことがある。槍の練習したり、魔術はちょっと教えてもらって練習したよ。」
「鹿倒せんのか、凄いな。
シュペアの村には魔術を教えられる人がいるのか?」
「いない。領主様に教えてもらったの。」
「へぇーって領主様?
あの人ってそんなこともしてんのか~」
「領主様を知ってるの?」
「知ってる。話したことはないけど。あの人は有名だからな。冒険者だし。」
「領主様も冒険者なの?凄い。」
そっか。領主様も冒険者なんだ。
一緒で嬉しい。
そして、ルシカが僕が言ったことを嘘だと決めつけずに信じてくれたことが嬉しかった。
僕のこと、信じてくれる人もいるんだ。
「おい、どうした?何が悲しかったんだ?」
「え?」
「シュペアお前泣いてるぞ。」
知らないうちに僕の目から涙が溢れてた。
誰も信じてくれなくて絶望した。大人なんてそんなもんだと思った。
でもルシカは違った。領主様も違うと思う。
僕はルシカや領主様のような大人になりたい。
「何でもない。」
泣いているのを見られたことが急に恥ずかしくなって、僕は走って逃げた。
「ちょ、おい待て。1人でそんな奥に行くな。」
僕は少しだけ足に身体強化をかけて駆けた。
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