赤い橋 2/4
ロフトだけが暖色の明かりで照らされ、部屋の大部分は暗闇に包まれていた。
何かがいて、俺を下から見上げている
それだけは謎の確信があったから、とてもじゃないけども下の確認なんてできやしなかった。
今でもときおりYoutubeで心霊系やゴーストハンター系の動画を見る。日本のではそうみないけど、海外の動画ではポルターガイストっていうんだっけ?勝手に部屋のドアが閉じたり開いたりするような現象。
あんなの見てしまったらどうしていいのかわからないけど、外国人たちは即座にスマホもってライブ配信しながら凸っていくからスゲーよな。ほんとに。
まぁそんな話は置いといて。ロフトに就寝スペースを設けていたんだけども、自分の目で確かめる勇気もなくって、気を紛らわせることしかできなかった。
足元に下とつなぐ階段があるのだけど、柵となってる壁と階段の切れ間から、ひょっこり顔とか覗き込んできたらどうしよう。もう階段使わずに飛び降りるしか手段がない。そんな心配をしながら、いつしか眠りについていた。
幽霊がなぜ怖いのか。
心霊写真と呼ばれるものを見ると、ときたま「幽霊だけどすごく美人に違いない」というものを見ることも少なくない。もしかしたら顔全てを開示せず、奥ゆかしく一部部分しかみせていないために最近の「マスク美人」みたいな現象に陥っているのかもしれない。
でも美人だろうがそうではなかろうが、怖いものは怖い。それはいるはずのないところにいるからであり、死んだ者は生き返らない、という私たちの絶対的な経験則を根底から覆す存在だからだ。だから怖い。
けれども思う。もし自分が見えるような人であれば。それを祓ったりとか、ブン殴って成仏させるとかできて、まだ怖くないかもしれない。けれどそんな大層な能力は、あいにく持ち合わせていなかった。
一方的に見られるだけ。それもあり得ない場所、タイミングで、いやもしかすると常に。そんな状況だから怖かったのだと思う。
それは学校や家での日常生活では、まったく気づくことがなかった。けれど夜の静けさが訪れ、昼間の喧騒が身を潜めると、その途端に存在感が増して主張してくる。
下から俺を見上げる「それ」の存在は、日に日に確信へと変わっていった。けれど、何をしてくるわけでもない。悲鳴を上げたり、ばあと驚かすでもなく、ただただ下にいて、見上げてくるだけだ。
その合理性のなさが恐ろしい。俺に恨みを持ってるとか、生きてる人間を驚かせることに全てを賭けているとかそんなのであれば、まだ合理性が見出され、理解もできる。けれど意味不明なのである。
目的もないのに赤の他人が自分の部屋に夜な夜な居座ったとしたら、誰でも迷惑かつ恐怖であろう。生きる人間だろうが、すでに他界している人間だろうが恐ろしい。そんな日々が1週間くらい続いただろうか。だんだんと家に帰ること、自分の部屋で寝ることが憂鬱になってきていた。
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