第24話 家族アルフォンス

 私の名はアルフォンス。リシアがエステンダッシュ領に向かうと聞き、話し合いをしている最中のことだ。


「・・・あの、アルフォンス。」

 リシアの呼びかけに私は片眉を上げた。


「全てが終わって、私が記憶を取り戻すことができたら、またここに来てもいいですか?」

「全てを放って、ここで暮らすのか?」

「いいえ、ただアルフォンスに会いに来たいだけですよ。」


「普通の人間にはこの家は見えないが。」

「私は普通の人間ではないのですが。。」

 はたと気づく。そうだ。彼は私と同じ天仕てんしだった。


「天仕がこの人間の住む地にいることは珍しいのでしょう?そんな中、同じ天仕である私と貴方が出会った。私にはアルフォンスが他人とは思えないんです。言ってみれば兄みたいな?」


 他人とは思えないというのは、私も同意する。だが、正直私は兄と言われるような歳ではない。見た目20歳代後半くらいだから、仕方ないが。


 私たちの種族は、人間に比べて寿命が長い。そして、20歳代中頃から身体の成長が緩やかになり、30歳代くらいで、成長が一旦止まる。だから、人間の前にあまり姿が出せず、このようなところに引きこもっている。余に見た目が変わらなさ過ぎて、人間ではないと分かってしまうからだ。


「私はいつまで生きられるかわからないが、・・・君との生活は楽しかった。」

「そう言っていただけると嬉しいです。」


 リシアが私の言葉を受けて破顔はがんする。普段は表情に乏しい彼だが、私と対する時には大分表情に気持ちが出るようになってきた。また、私と離れてしまったら、元に戻ってしまうかもしれないが。


「全てが終わったら会いに来ますね。家族に。」

 リシアは手元の葡萄酒をあおった。


「酒を水のように飲むな。もっと味わえ。」

「あまり酒の美味しさが分からなくて。まったく酔えないし。」

「せっかくとっておきの葡萄酒を出したというのに、もったいないことを。」


 私は卓の上に指に嵌める装身具を2つ置いた。

「これは?」

「まぁ、お守り代わりだ。一つはおまえの分、もう一つは娘に会ったら渡してほしい。」


 リシアは、装身具を手に取って見つめた。装身具には、赤い宝石と青い宝石がそれぞれついている。


「家族の証みたいですね。・・アルフォンスの娘さんも、ここに来る時に連れてきますよ。」

「!」


 リシアが私の薬指に嵌った装身具を見て告げた。私は、リシアの言葉に顔がこわばるのを感じる。リシアが、私の顔を見て慌てて言葉を続けた。


「もちろん本人の了承は取りますよ。お父さんが実は生きていたというのを伝えるかどうかは娘さんの様子を見て決めます。」

「まったく・・。」


 私はリシアの顔を見て苦笑した。

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