第22話 天仕リシア
私の名はリシアになった。今、私を助けてくれたアルフォンスが、記憶を取り戻す為に、彼の娘に会ってはどうかと提案してくれたところだ。
「ただ、問題もいくつかある。」
「問題ですか?」
「そう。まず、私の娘が今どういう状態にあるかが分からない。私は娘と顔を合わせたことがない。娘がまだ妻のお腹の中にいる時に、私は離れざるを得なくなった。娘であることは知っているが、妻からの手紙も途切れてしまっているから、もしかしたら、私が知る居場所にいないかもしれない。」
「それはありえそうですね。」
「あと、魔力を相手に与える方法が特殊だ。魔力は命の
「口づけですか・・?」
私は顔に熱を帯びるのを感じた。
「娘が縁もゆかりもない異性である君に、口づけで魔力を与えてくれるものかどうかわからない。」
普通は、嫌がるだろう。特に相手は女の子だし。
「さらに。」
「まだ、あるのですか?」
彼は、再度私が持っているペンダントを指差す。
「それは、婚姻の証かもしれない、ということだ。」
「は?」
「人間は婚姻する時に、婚姻の証として、首から下げる装飾品を交換する。かくいう私も妻と交換して持っている。」
彼は自分が身につけているペンダントを取り出して、私に見せてくれる。宝石の色が違う。私が持っているものは乳白色だが、彼が持っているものは深い青だった。
「婚姻の証についている宝石は、皆違うのですか?」
「婚姻の証は、交換する者がそれぞれ作る。通常は石屋や金物屋に依頼する。もしかしたら、予め持っていた守護石を婚姻の証に使った可能性も否めない。」
「・・そんなことをしたら、自分の子どもに守護石を渡せないのでは?」
「守護石は
「・・・。」
ちょっと分からなくなってきた。頭の中でアルフォンスと話したことを整理する。
もし、この首飾りの宝石が、私が予め持っていた守護石なら、私は
この首飾りが婚姻の証だとすれば、私は婚姻していて、この首飾りは妻から渡されたことになるから、妻が
私が
「守護石以外の石と対になっている可能性はありますか?」
「守護石は、一般にある宝石とは違い、
「これが婚姻の証だった場合、これから私の身元を特定する方法は?」
「婚姻の証に使用する宝石は個人によって違うが、宝石に個人を特定する機能は持たせていない。守護石を使っているのは珍しいが、見た目は他の宝石とあまり変わらないから、これから君の身元を特定するのは難しいだろう。」
「・・すると、ひとまず
魔力を
「体力が回復するなど、いろいろな準備が調ったら出発するといい。ここからは遠いぞ。」
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