第21話 救出者アルフォンス
私の名はアルフォンス。今は、記憶を取り戻したいと願う彼に、私の昔話をしている。
◇◇◇
私は人間でなかったが、同種族内でのいざこざにより、人間の住むこの地に移住した。そこで、一人の人間の娘に会った。
彼女は残念ながらとても
私は人間ではなかったので、自分の命を他者に与えることができた。そして、私の種族の寿命は人間よりは長かった。少しくらい与えても影響はないし、生きながらえた後一緒に死ぬこともできるかもしれないと思った。
彼女は命を長らえた。そして私の子どもを身ごもった。子どもが産まれたら、家族3人で幸せに暮らしていこうと思っていた。
だがその幸せは長く続かなかった。
私には人間の血が流れていた。他種族の血が混じっていることは、私の種族にとっては狩られる対象だった。そのため、実際に私も、そして妻も命を狙われた。私はもう家族の側にいることができなくなった。
私は死んだものと見せかけ、家族の元から姿を消した。
妻には私の元に届く手紙を残したので、彼女が亡くなるまでは定期的に手紙をくれた。そう、私を残して妻は旅立ってしまった。結局、私の命では、彼女をほんの少し長生きさせただけに過ぎなかったのだ。私も後を追いたかったが、自分で自分を滅する行為は種族として禁じられているのでね。彼女に分け与えた事で少なくなったこの命と共に、ここで静かに生きている。
◇◇◇
「私の名はアルフォンス。君もしばらくここにいるなら、名前がないと不便だな。」
私は、
「リシアと呼ぼう。君の容貌はなぜか私の姉を想起させるのでね。姉の名前からとってみた。」
「リシア・・わかりました。」
銀灰色の髪、桃色の瞳。あの2人の色は全く受け継いではいなかったが、彼の
少しそれた考えを追いやって、私は彼に向かって言葉を続けた。
「君の記憶を取り戻す方法なんだが。君が首に下げている装飾品を見せてもらえないだろうか。」
元々リシアが着ていた服はボロボロで、そのままだと体調が悪化するからと、この部屋に運び込まれた時に、服は着替えさせていた。その時に私は、首に下げていた装飾品を見ていた。
リシアは首飾りを外し、私に差し出した。私は、首飾りの先に着いている宝石を見つめ、指先を添えた。宝石が光り、それを中心に、はらはらと白い羽が現れては消えていく。
「それは・・?」
「これは守護石だな。」
私は指先を外すと、彼に首飾りを渡し、宝石部分を握るよう言った。彼は、言われた通りに宝石を握ると、驚いたように言った。
「なんか、すごく身体が温かくなってきたのですが。」
「私が少し魔力を流したので、相手方に気づかれてしまったようだ。その熱は相手方が流してきている魔力だ。」
「相手方って?」
「そのペンダントは、もう一方の石と対になっているのだろう。その石を持っているのが相手方。石からあふれた魔力が君に流れ込んで、君の回復をより
私は、彼が持っている首飾りの宝石を指差した。
「守護石は私の種族しか持っていない。石を持っている者をその名の通り守る。基本お守りとして持っていることが多いが、子どもができると、その子どもを守るために石を渡す。その石を君がもっているということは、君の親が私と同じ種族の者なのだろう。」
「だから私は人間ではないと。」
「そうだな。それもある。しかし、守護石2つを一対にして、魔力を流して合図をとるというのは、考えたこともなかった。どちらにせよ、その相手方を探して魔力を与えてもらえば、合わせて記憶も戻る可能性が高い。守護石を持っているということは、魔力を与えることができる
「
「そう、私の種族は
「でもどこにいるかわからない相手方を、どうやって探せばいいのでしょう?」
「相手方かどうかは分からないが、私が居場所を知っている
「それは・・?」
「先ほどの話にあっただろう?私の子、娘だ。」
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