第15話 代理人テラスティーネ
私の名はテラスティーネ。行方不明になった魔王カミュスヤーナの代わりを務めている。
目の前には一人の魔人が立ち、こちらを見上げていた。深緑の髪を後ろで緩く結び、黒い瞳をこちらに向けている。
全身は、多分海の魔獣の
その見かけからも、彼は隣の地ジリンダの出身であることが見てとれる。
「もういい加減に分かってほしいのだが。テラスティーネ。」
「それはこちらのセリフです。ブラウリオ。」
「もう、魔王カミュスヤーナはいないのだ。俺に魔王の座を明け渡せ。」
「私はカミュスヤーナ様不在の間、この地を代わりに守っている身。それにカミュスヤーナ様は生きている。貴方が倒したというのは
私の言葉に彼は不機嫌そうな顔をした。何度来られてもこちらの返事は変わらない。
彼―ブラウリオは、ここ最近この館に何度も訪ねてきている魔人だ。カミュスヤーナが海に落ちるきっかけ、彼の身体に短剣を差したのは自分だと言い出した。魔王カミュスヤーナを打ち取ったのは自分であり、この地ルグレイティは
それに、私はカミュスヤーナが生きている確かな証拠を持っている。
「俺は、君から無理やり魔王の座を奪うことも可能なのだが?」
「だから、私は魔王ではありません!カミュスヤーナ様を倒したというのであれば、その証拠でも持ってきてください。そうすれば、この地の
私の言葉にブラウリオは悔しそうに口を
彼が死んだというのならば、私の前に死体でも持ってきて見せろ。
「センシンティア。お客様がお帰りです。門の外までお見送りを。」
センシンティアが扉のドアを開け、ブラウリオに部屋の外に出るよう
ブラウリオは私に強い視線を向けながら、部屋の外に出て行った。私は大きく息を吐いて、背後の椅子に倒れこんだ。
胸元にある首飾りの宝石を握りしめ、魔力を流す。しばらくしてから、首飾りを引きだす。首飾りの宝石が光っている。
「カミュス・・。」
私の視界がにじんで、頬に涙が流れるのを感じる。
カミュスヤーナが行方不明になってから、毎日首飾りの宝石に魔力を流していた。2週間くらいたったころ、やっと応答が返ってきた。こちらが魔力を流すと、首飾りの宝石が光って、熱を帯びるようになったのだ。
応答が返ってくるということは、カミュスヤーナは生きているということだ。それからも毎日魔力を流し、カミュスヤーナの生存を確認している。今のところ、確実に返答が返ってきている。
どうか、カミュスヤーナをお守りください。
私は泣きながら、愛する人の無事を祈った。
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