第14話 困惑者テラスティーネ
私の名はテラスティーネ。魔王カミュスヤーナと婚姻している者である。
「カミュスヤーナが行方不明?」
私が仕事を終わらせ、ルグレイティの地に転移したと同時に、宰相であるアシンメトリコより報告を受けた。
2日前、私がカミュスヤーナと通信機を通じて会話した次の日。カミュスヤーナは、ジリンダの地の魔王ミルカトープと共に、その土地内をめぐる予定だった。その道中、魔王
カミュスヤーナは、自分が敵を足止めしている間に、ミルカトープ達に館に戻るよう考えたらしい。そして、それを実行。足止めは成功し、ミルカトープ達は無事館に戻った。その後イスカンダル等を
捕縛者より当時の様子を聞き出したところ、カミュスヤーナは足止め時に負傷し、魔法を持続させることができなくなり、海に落下。そのまま行方がわからなくなった。
カミュスヤーナの捜索は、命を救われた魔王ミルカトープが、ジリンダの勢力をつぎ込んで探してくれると請け負ってくれ、アシンメトリコと以前エンダーンが買い上げた魔人センシンティアは、このルグレイティの地に戻ってきたのだ。
昨日もその前も、首飾りとして下げている婚姻の証に、魔力を流して呼び出しても応答はなかった。今同じように呼び出しても応答はない。だから、彼が生きているのかは分からないままだった。
「テラスティーネ様。申し訳ございません。この身に代えましても、カミュスヤーナ様をお守りするべきでした。」
沈痛な面持ちで、アシンメトリコとセンシンティアが私の前に
「いえ、きっとカミュスヤーナがおっしゃったのでしょう?この方法が最善だと。」
私は泣きたくなるのを抑えて、大きく息を吐いた。
「あの人が言いだしそうなことです。」
「テラスティーネ様。」
「捜索については、ジリンダの地について、地の利のあるミルカトープ様にお任せしましょう。カミュスヤーナが無事であれば、何らかの方法で連絡があるでしょう。それまではルグレイティの地を何とか維持してください。アシンメトリコ。私ができることがあれば教えてください。」
「かしこまりました。」
「あと、ジリンダの地とカミュスヤーナが落下した海の位置関係が知りたいわ。地図などはあるかしら?」
「はい、こちらにお持ちしております。」
アシンメトリコが、テーブルの上に、魔人の住む地の地図を広げる。
「ここがルグレイティの地、その南がジリンダの地です。ミルカトープ様が住んでいる館の位置がこの辺りです。」
センシンティアが続いて説明をする。
「当日はこの館から港町カイヤに向かいました。飛竜に騎乗していきましたので、最短距離を取っています。奇襲があったのはこの辺りです。」
「で、カミュスヤーナはここに落ちたと。この海の先には何があるのかしら?」
「・・・人間の住む地です。」
「そう。」
私は、人差し指を耳下に当てた。カミュスヤーナが流れ着くとすれば、ジリンダの地から続く海沿いの魔人の住む地、またはその先の海に面した人間の住む地。その時の海流がどうなっていたかは分からないから、どちらもあり得るということ。
「・・・ミルカトープ様に連絡を取って、海に面した他の地に流れ着く可能性もあるので、カミュスヤーナの容姿を伝えて、もし同じ容姿の人物が見つかったら、こちらに連絡をくださるよう、その地の魔王の方にお願いすることは可能かしら?」
「ミルカトープ様から他の魔王に連絡を取ってもらえば可能かと。」
「ではそのように。人間の住む地の方は、私の方で手配するわ。一度向こうに戻るけど、手配が終わったらしばらくルグレイティに滞在します。カミュスヤーナが、ジリンダに持っていった荷物の中身を見せて。」
「キュリエ。」
アシンメトリコが、カミュスヤーナの従者のキュリエを呼ぶ。持ってきてもらった荷物の中から、通信機を取り出した。通信機と地図を持って、アシンメトリコの方を振り返る。
「この通信機は、向こうとのやり取りに使うから持っていくわ。説明したらまた戻ってくるから、部屋と夕食の手配はお願いします。エンダーンとは、また日を改めて会うから、今日は控えてもらって。」
「かしこまりました。」
皆が礼を取るのを見ながら、私は部屋を後にし、転移陣の間に向かう。
カミュスヤーナ、ご無事をお祈りしております。私は強く目を閉じた。
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