第9話 姉ミルカトープ
私の名はミルカトープ。湯あみの後、自室でくつろいでいると、部屋の扉が大きな音をたてて開いた。
一人の女性が、その美しい顔に
「ミルクレインテ。部屋に入る前に
「私とお姉様との間なのですから、堅苦しいことはいいではありませんか。」
ミルクレインテは、私が言ったことをくみ取るつもりはないようで、私が腰かけている目の前の長椅子に腰を下ろす。
ミルクレインテは、私の妹に当たる。確か18歳と、私とは歳はだいぶ離れているが。私と同じ紺色の髪と金色の瞳を持っているが、私より色合いが薄い。着ている服はだいぶ薄い生地で、その下の肌や体形を隠しきれていない。かなり
「カミュスヤーナ様からは、お呼びがかかりましたか?」
「花のことか?断られたが。」
問いかけの形でありながら、絶対にそうなると断定の気持ちを上乗せしてきた妹に、私はすげなく答えた。
「え!そんなの噓です。ありえません。」
「カミュスヤーナに薬を盛ったのはそなたの側近か。」
「・・・何のことでしょうか?」
「しらばっくれても無駄だ。もう吐いている。」
カミュスヤーナが、連れの魔人とともに下がった後、カミュスヤーナの酒を用意した侍女を捕まえ、暗示をかけ、誰に指示されたかを聞きだしているのだ。まぁ、酒を飲んだカミュスヤーナの様子から、盛った薬も想像がついたので、誰がやったのかもおのずと分かってはいたのだが。
「まったく。カミュスヤーナとは友好関係を築いていきたいのに、横やりを入れおって。」
「だってぇ。お姉様。カミュスヤーナ様は私の理想の殿方なのですよ。手に入れようと工作してもいいではありませんか。」
と言ってはいるが、ミルクレインテは、自分と釣り合いの取れる
「カミュスヤーナには、手を出さない方がいいと思うが。」
「なぜですか?カミュスヤーナ様は、異性に興味のある男性ですよね?私にも十分勝機はあると思います。私は美しいですし、魅力的だと思いません?」
ミルクレインテはあの整った
「カミュスヤーナはエンダーンを倒しているのだ。生半可な強さではないぞ。」
「強いからいいのではないですか。きっと私が落としてみせますわ。」
「忠告はしたからな。どうなっても知らぬ。こちらに火の粉が降りかからないようにしてくれ。」
私はミルクレインテに対して、手を振ってみせた。早く帰れの合図だ。
ミルクレインテは、そのまろい頬を膨らませて抗議する。
「なんですか!お姉様。その態度。私がカミュスヤーナ様を手に入れるのが、悔しいのですね。大丈夫です。そのままカミュスヤーナ様の正室に収まって、隣のルグレイティの地の利を、ここジリンダに
ミルクレインテは、ぱっと立ち上がり、風のように部屋から出て行った。相変わらず人の言うことを聞かない妹だ。行動力にあふれると言えば、聞こえはいいが。
「すまない。カミュスヤーナ。」
私は、本人には聞こえないであろう謝罪を口にした。
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