第2話 そしてやっぱりふられた
島津さんの口から、どんな言葉がとびだすかと心臓をバクバクとさせていると、彼女はおもむろに立ち上がって、その指輪をぽいっと、机に乗る程度の大きさの機械の中に入れた。
「え?」
何をやってるんだろうと思っているうちに、島津さんは機械に
「ええ! ちょっと待ってよ! 何してんですか⁉︎ 溶けたり爆発したりしないの⁉︎」
僕は、電子レンジに金属を入れてしまったときのスパークを思い浮かべながら、大慌てで言った。機械の
「大丈夫よ。
「ひはかいぶんせき……? いや、そもそも、大丈夫とかって話じゃなくてですね!」
一応、
そんなことをしている間に、装置は止まったようだ。パソコンには、あまり
「うーん、プラチナリングを用意できないお子様には興味ないなぁ?」
島津さんがニコニコとしながら、僕の心をえぐる一言を放つ。
岩城さんが
「シルバーでもいいじゃないですか。親のカネ使ってプラチナ買ってくるより、好感もてないっすか?」
──つまりこういうことだ。
島津さんのいる、この寒いくらいに涼しい部屋、このチームは
ここに置いてある大小様々な機械は全て分析装置。それぞれの装置が何を分析しているのか、インターネット検索をしてみたって僕にはさっぱりわからないけど。
正しい分析結果を出すためには、その室温を
ちなみに、僕がまず足を踏み入れた部屋のほうは、まるで学校の理科室みたいなところだ。棚の中には、ビーカーやフラスコといった理科の実験で見たことがあったりなかったりするガラス器具が置いてあって、鍵がかかっている棚の中には色々な化学薬品が入っている。こちらの部屋では、分析したいモノを装置に入れる前の、
島津さんが指輪を入れた装置は、
そういうわけで、僕の指輪はシルバー製であることがわざわざ分析によって
──ふられたわけだ……。
岩城さんの解説を聞きながら、僕はがっくしと肩を落とした。
「まあ、問題は指輪の素材じゃなくて、物事の順序じゃない? “結婚してください”の前に“付き合ってください”だろ?」
「だって、女の子はアクセサリーをプレゼントすればイチコロで、告白はまわりくどいことしないほうがいいって……」
「ドコ情報だ? それ?」
岩城さんは声を出して大笑いして、他のメンバーは完全に、おじさんおばさんが
僕は恥ずかしさに小さくなるしかない。
島津さんは無傷の指輪を小箱に戻すと、僕に差し出した。
「
これを受け取っちゃったら、失恋を受け入れないといけないと思うと、手が伸びなかった。僕が子供だからダメだというなら、あと何年か後なら受け入れてくれるんだろうか。大人って、どうすればなれる?
僕がなかなか小箱を受け取らないのをみかねて、島津さんは僕の手をとって、小箱を無理やり握らせた。手を取られて僕はドキドキしてるけど、彼女はきっと、なぁんとも思ってないんだろうな。
「ところで、岩城さん」
と、島津さんのこの一言で、この告白劇は完全に終了する。
「うちの
島津さんが完全にお仕事モードで、プリントを岩城さんに見せながら僕には理解ができない話をし始めた。
と、いうより、就業時間中に仕事の邪魔をしたのは僕だ。すごすごとその場を離れて、フリースペースになっているデスクに宿題を広げた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます