そして唐揚げはなくなった
冲田
第1話 そしていきなりのプロポーズ
暑い、あつい!
上は太陽の熱線、下はジリジリと焼けつく鉄板の様なアスファルト。ふわりとたまに吹く風はヘアドライヤーの温風か?
白い
この足早っていうのも加減が難しいんだ。あまり早いと身体が
その中で、僕がわきめもふらずに
研究棟に入るには、ICカードになっている社員証を、入口でピッとやる機械にかざさないといけない。工場の門でもそのピッはやったけど、もちろんセキュリティのためだ。僕は、首から下げたカードで
ここまでくれば、さっきまでの暑さとはおさらばだと思うだろうけど、そうはいかない。地球温暖化だとか二酸化炭素排出量だとかクールビズだとかエコだとか節電だとかで、廊下にはエアコンがまったく
日差しがなくなっただけマシな程度の
途中、誰かがドアをあけて廊下に出てくるタイミングで、さらっと冷気が顔を
ある扉を僕はノックと同時にあけた。涼しい空気が全身を撫でて、汗に
「はぁああ」と思わず声をもらしながら、この幸せな瞬間を存分に
そう、これが研究棟を目指す一つ目の理由。研究棟にあるこの部屋だけは、エコなど関係なく確実に涼しいのだ。
「坊ちゃん! ドアはやく閉めてね! 室温あがっちゃうから!」
中にいた男性社員に言われて、僕は慌ててドアを閉め、
僕はキョロキョロと部屋をみわたして、研究棟に来た二つ目の理由を探した。
「
さっき僕のことを坊ちゃんなどと呼ばわった彼が、僕にこそっと伝えた。隣の部屋といっても、簡易な仕切りのような壁で区切られているだけの部屋だ。
「ありがとう。でも、坊ちゃんはやめてくれないかなぁ」
「だって、この
男性社員がからかうように言う
「そう、だけど……“僕”じゃなくて立場だけで
「その“立場”を最大限に利用して、中学生のくせに企業の研究棟に自由に出入りしちゃってる人が言うせりふじゃないね」
それを言われると、ぐうの音も出ない。
ボサボサ頭、長い前髪で目がほとんど隠れた彼、
隣の部屋をのぞくと、島津さんは大小様々な機械に囲まれたデスクで、可愛い顔を
そう、ひとり! いきなりチャンスが
僕は
「島津さん!」
僕が
「僕と、結婚してください!」
そう言って僕は腰を直角に曲げて小箱を差し出す。ドキドキしながら床を見ていると、手からその小箱がするっと離れた。
がばと顔を上げると、島津さんはポカンとした顔で小箱の中身を見てくれていた。取り出された中身は指輪。僕の、精一杯の気持ちだ!
隣の部屋からこちらを
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