第8話-最初の朝

鳥の鳴き声と、遠くのから聞こえる波の音で目が覚める。


都内の自宅の天井…ではない。

夢じゃなかったか、もしくはまだ夢の中なのか…。


「俺も往生際が悪いな」

苦笑しながら窓の外を見ると、もう日はかなり高い位置にある。


この世界に来て2日目…の昼?


下の部屋からはコトコト カタンと人の気配がする。

「やば。寝過ごした。」

ガバッと勢いよく起き上がると、バタバタと階段を降りていく。

「ジョセフ、おはよ?」

俺は、ひょこりと台所を覗き見る。

ジョセフは台所に向かい、料理をしている様子だ。

「コースケ!おはようございます。よく眠れましたか?」

俺の姿を見てクスリと笑うと、ジョセフは棚から皿を出しながら言う。

「起こしてくれたら良かったのに。」

俺は寝癖のついた髪を撫で付けながら言う。

「見ず知らずの土地に放り出されて生活しようとしてるんですし、疲れてたでしょ?いいんですよ。ゆっくりで。」


「お腹減ったでしょ?ちょうど昼だし、ごはんにしましょうか。」

そう言うと、豆のスープとパンをテーブルに並べる。家で手作りの料理を食べてるなんて、凄く久しぶりで、嬉しくなってしまう。


「お口に合うか分かりませんが。」

少し緊張したように、ジョセフが言う。

「俺、好き嫌い無いし、普通に美味しそうだぞ?」


俺は席につくと、いつものように手を合わせる。

「いただきます。」

ジョセフはじっと俺を観察して、真似をして手を合わせる。

「イタダキマス?」

俺の真似をしてるジョセフが可愛い。俺はクスクスと笑うと、豆のスープを口に運ぶ。

うん、美味しい。トマトの酸味も好きだし、ポクポクした豆や柔らかい豆など色々な食感がある。

ホッとする味だ。

「美味しいよ。ありがとな。」

俺が言うと、ジョセフは嬉しそうに笑う。


「コースケ、イタダキマスは、食前のお祈りみたいな感じなんですか?」

ジョセフはパンを割るとスープに浸している。

「神様ってより食材に感謝してるんだ。命を奪って糧にしてるわけだからな。」

俺も真似してパンを割って浸して食べてみる。

硬くて食べにくいのはこう食べるのか。トマト風味の酸味のあるスープにパンはよく合う。

「食材に感謝ですか。なるほど。」

パクパクと食べながら言う俺をジョセフは微笑みながら見つめる。

「コースケ、美味しい?」

「美味しいぞ?ジョセフ料理がうまいんだな。」

ビールを飲みながら俺は言う。このビールはいくらでも飲めてしまう。冷えてれば最高なんだろうが、こればかりは仕方が無い。

ジョセフは幸せそうに目を細める。

「美味しそうに食べてくれて嬉しいです。夜はお魚にしましょうか。」

「おー!海近いもんな!今日は海行くのか?」

ずっと気になってた。綺麗な海だったから。

「そうですね。穴場があるので、そこで今日食べる分、取りに行きましょう。」

「泳いでもいい?」

「いいですよ。」

わくわくとジョセフを見つめると、彼はニコリと笑って言った。

食事が終わったら海水浴だ。久しぶりの海に俺は心躍らせながら食事に集中した。

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