第5話 何でもかんでも経験値になっちまう…

陽が沈みかけた岩場でボーっとしているわけにもいかず、リクはなんとか挽回しようと狩りをしながら街を目指した。


《アイテム:ポーションを手に入れましたが、経験値8になりました。》

《素材:ゴブリンの皮を手に入れましたが、経験値12になりました。》

《食料:オーク肉を手に入れましたが、経験値7になりました。》


手に入れたアイテムがことごとく経験値に変わっていく。ただ、最初にロックをしていたアイテムは手元に残るようだ。


《アイテム:薬草を手に入れました。》


「何でもかんでも経験値になっちまう…」


欲しいアイテムが出てもロックをしなければアイテムとして所持できない。だが、ドロップ状態では自分の所持品では無い為、ロックができない。自動変換をオフに出来ない為、手にした瞬間に経験値になる。


「うがーーーー!!なんだよ!事前にロックできなきゃ駄目だろ!バカだろ!!」


ちなみに誰かの所持品を借りてロックを掛けるのも出来ないようだ。現に、ギルドカードは自分の名前が記録されているが、あくまでギルドからの貸し出し物である。身に着けているが、装備品ではないため消えることもなく、ロックの項目もない。


現在ロックしているこれらのアイテムは拾っても大丈夫ということになる。


武器:ブロードソード

盾:バックラー

鎧:強化革鎧

靴:強化バトルシューズ

アイテム:

薬草

たいまつ

干し肉

水筒

銅貨

閃光玉

(その他の生活必需品は省略)


だが、これ以外はすべて経験値になってしまうということだ。


その中でまだラッキーだったのは、たまたまお守りにしている銅貨をロックしていたことだ。これは親友カールと最初の冒険で稼いだ銅貨をリクは宝物にしており、その銅貨をロックしていた為、銅貨は手元に残っていたのだ。


ちなみに銅貨100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚。すべて銅貨でお金を持てば問題ないが、銅貨10000枚が金貨1枚と考えると単純に重いし嵩張る。


「お金の代わりに換金アイテムとかを持ち歩けば物々交換も…だから、今持ってないものは自動で経験値になるんだよな…」


街中での買い物で物々交換を行うこともあるが、リクが所持できるアイテムで一番高いものでブロードソードだ。交換用に何本も持ち運べるものではない。せめて宝石類を1つでもロックしていれば…。まぁ、宝石は高価過ぎて買う余裕など皆無だったが。


「なんか疲れた…とりあえず、街で色々試してみるか…」


街に戻った後、リクはEXP変換について色々試した。


まず、アイテムは自分の所持品になった時に経験値に自動変換されるようだ。アイテム屋でポーションを手に取ってみたが、経験値にはならなかった。そこで、お会計をすると…瞬時に無くなった。お店の人は驚いていたが「一瞬で飲んだ。喉が乾いていたからな。」と言って店を飛び出した。


この原理を装備品でも試してみた。


装備品も自分の所持品になった瞬間に経験値に自動変換された。武器屋で投げナイフを手に取ってみるだけなら経験値にはならなかった。だが、投げナイフに魔力を通して装備してみると…お会計前だが瞬時に無くなった。「装備する=自分のもの」というわけだ。お店の人は急に無くなった投げナイフに万引きではと警戒していたが「おお、胸の隠し場所にピッタリだ!1本だけ貰うよ。あー、全部銅貨でごめんねー。」と、なけなしの銅貨で支払いをして帰った。


ということで、リクはどれだけ強くなっても装備品はこのままということだ。高難易度ダンジョンで見つかる魅力的な武器は拾った瞬間に経験値となる。一生、リクの最高装備はブロードソードのままである。また、死にそうになった時でも高級なポーションを使えず、薬草での回復を余儀なくされる。


これが魔導系の職業だったらMPを使ったHP回復も可能なのだろう。ハッキリ言ってしまうとリクには魔法の素質がない。その分、身体強化などのオーラ系のスキルは得意だ。後々、自己回復を高めるスキルなどを覚えるしかないのか…。ただ、何かの拍子に瀕死状態になった場合は手の施しようがないだろう


そういう訳で、今日の稼ぎはすべて経験値となってしまった。手持ちの金も先程の実験の結果、ほぼ経験値となったので宿屋に泊まる金すら無くなってしまった。


「今日はオレの記念すべき誕生日だというのに…。仕方ない。野宿でもするか…。」


リクはしぶしぶ街の外に出ていくのであった。


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