第2話 レアEXスキル「EXP変換」取得!
「ちーっす。リュスリムさん、いる?」
「相変わらず、神の前だというのに礼儀がなっておらんな。」
神殿の奥から神官・リュスリムが現れた。
「うーん、どうも村の教会にある孤児院で育ったんで、逆に神殿に来ると親しみが湧いちゃうというか…和んじゃうというか…」
「まぁよい。リクの純粋さと日頃の行いに多少の無礼も神は許すだろう。ところで、今日は…もちろんアレじゃな?」
「そうそう、『EXスキル』をもらいに来た!ああ、オレ、とうとう16歳になったんだー!!」
身体全部を使って喜ぶリクを見て、リュスリムはニッコリとほほ笑んだ。
「よく頑張ったな。お前は何度も死にそうになってここに運び込まれてきたからな。」
「ホント、リュスリムさんにはお世話になりました。」
「構わんさ。ワシも若いころは散々教会にはお世話になったからのう。」
「なんだ?リュスリムさんも冒険者だったのか?」
「昔の話さ、そんなことより、リクよ。すぐに神託が欲しいんじゃないかい?」
「ああ、もう我慢できない!!」
「よろしい。では、祭壇の上にある『導きの書』に手を当てて、自分の望む能力を求めなさい。」
導きの書はどの神殿にも置かれているとても貴重な品に思えるが、実際は教会で作られている何も書かれていない1000ページの白紙の辞典だ。だが、神官が神の力を借り、成人を迎えた人間が魔力を注ぐことで効果が発動する。発動時には選ばれたスキルのページだけに神託によって文字が浮かび上がり、取得したEXスキルを知ることができる。そして、神託が終わると数分で内容は消えてしまう。そのEXスキルの数はページ数と同じ1000と言われ、未だに発現されたことがないスキルも存在するため、その正確な全容は解明されていない。
幼い頃から村の教会で育ったリクの近くにも常に「導きの書」はあった。それを見る度、リクは欲しい能力を昔から考えていた。リクはその想いを心に満たすように呟く。
「冒険者として、誰よりも早く強くなりたい…」
願いを込めて導きの書に触れると、ポウッと光を帯び、ページがパラパラと開いていく。
「始まったな。止まったページがリクのスキルになるぞ。」
パラパラと本が自動的にめくられていく。
パラパラ…
パラパラ…
パラパラ…
…おい、結構長いな。
「なぁ、リュスリムさん。これ、いつまでパラパラしてるんだ?」
「むむむ…まだ止まる気配が無いな。すでに本の三分の二をめくっておるというのに…。」
「最後までめくって『貰えませんでした!』ってことはないだろうな?」
「そんな話は聞いたことがない。ただ、後半に行くほどレアなスキルとなることは多い。かなりレアなスキルが貰えるかもしれんな。」
導きの書の最初の方には一般的なものが、後半には特殊なものが記述されているのが通例だ。基本的に前半に記述されているスキルを授かることが多いが、まれに後半のページにあるスキルを授かる者もいる。前半にはメジャーなEXスキルが多く、後半はレアなEXスキルが多い。ただ、メジャーなEXスキルよりもレアなEXスキルの方が良いとも限らない。メジャーなEXスキルは内容も分かりやすく汎用性があるが、レアEXスキルはクセが強く、使いこなすのが至難の業の場合もあるのだ。
「変なEXスキルだけは勘弁して欲しいよな…」
「安心しろ。神はリクが生きていくために最良のEXスキルを分け与えられるだろう。」
「そうだといいんだけど、神様、頼みます!!」
パラパラ…
パラパラ…
「ヒィィ~~!!もうページが無くなりそうだ!!大丈夫か!!!」
とリクが声を上げた時に、ページがめくられるのが止まる。そして、リクに与えられたEXスキルは…
EXスキル「EXP変換」。
「『EXP変換』とな…。これはワシも今まで聞いたことがないスキルじゃが…1000ページある導きの書でもかなり後方のページじゃ。相当特別なスキルの可能性が高いのう。」
神官がページを読む。
「スキル能力は『アイテムや装備品を経験値に出来る』というもののようだな。」
リクはアイテムを経験値に変えることが出来るスキルを手に入れたようだ。
「『EXP変換』!!なんだろう?でも、このEXスキルを駆使すれはなら誰よりも早く経験値が上がりそうだな。経験値が溜まればレベルが上がる!レベルが上がれば、誰よりも強くなれる!!やったぜ!!!」
神官がスキルの内容を読み終えると、導きの書はまた白紙に戻った。
「リクよ、かなり変わったスキルを手にしたようだ。これは神がお前に何か使命を与えようとしているのかもしれんな。」
「うーん、オレは普通に冒険者として活躍できればいいんだけどな。」
「フフ、まぁ、冒険者として『名を馳せたい』リクにとって、レアEXスキルを取得したことはきっと有利になるのは間違いないわい。」
「となると、オレも有名冒険者『確定』って感じかな?」
「『確定』とは言えん。世に名を馳せた者の多くの者が特別なEXスキルではあったが、名を馳せた者のすべてが特別なスキル持ちというわけではない。また、特別なEXスキルを持った者全員が名を馳せた訳ではない。」
リュスリムは真剣な顔でリクに言う。
「どんなEXスキルでも、その使い方次第では成功もするし、失敗もする。つまり、大事なのは日々の努力と正しい道を進むことじゃ。まずは命を大事に、誠実に励むのだぞ。」
「まかせて!オレはいつか伝説の冒険者になるんだ。だから、EXスキルだけに頼らず、真剣に冒険者として頑張るぜ!」
「うむ、良い答えだ。頑張るんだぞ。」
ただ、リクは心配事があった。
「で、リュスリムさん…。レアなスキルは国に報告するって聞いたことあるんだけど…、オレも報告されちゃうんかな?そうなったらオレ、冒険者じゃなくて騎士にならなきゃダメかな…。」
「フォッフォッフォ、それはレアなスキルを持った人物であれば国が今後の生活をバックアップしてくれるからであって、自ら国への報告を願い出るケースが多いからじゃな。だが、ワシは国に縛られたくない者達まで無暗に報告するつもりはない。それにリクのスキルは聞いたこともないスキルじゃ。今は報告する価値があるか分からん。となれば、冒険者として活躍すれば自然と国に情報が入る。それでも遅くないじゃろう?」
「さすがリュスリムさん!オレの気持ち分かってるぅ~!!大好き!!」
「フォッフォ、リクの活躍を楽しみにしとるぞ。」
リクが手にしたEXスキルは、過去に誰も手に入れたことがない激レアEXスキルだった。リクは本格的に冒険者として活動できることと共に、誰よりも最短で最強に近づけそうなEXスキル「EXP変換」を手にしたことに、大きな幸せを感じるのであった。
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