愛と祝福に涙を隠して
私達って何時から付き合うことになったんだっけ?
……痛い痛い。冗談だからそんなに怒らないで。
そんなに私の頬を引っ張ったら取れちゃうから。
そうそう、付き合い始めたのは私達が中学を卒業する時だったよね。大丈夫、ちゃんと覚えてるからそんな不安そうな顔をしないで。
お互いに違う高校に行くことになっていて、卒業式の日に貴女にいきなり校舎裏に呼び出されたのが始まり。
当時はそれは驚いたよ。卒業までお互いに話したことだって無かったんだから。
誰もいない校舎裏で。いや、本当は陰から私を心配した友達がこっそり覗いていたんだけどね。真っ赤な顔で震えながら、だけど決意を帯びた表情で私に告白をしてきた日は忘れようも無いよ。
あの日は私が告白を受けたわけだけど、あの後の貴女の積極的で情熱的なキスは刺激的だったわね。懐かしい。
あの時は思わず気持ちのタガが外れたって?
初めてで舌を入れるほどのディープなキスをするとか、どれだけ興奮してたのよ。あそこで友達が出てこなきゃ最後まで致す気だったでしょ。
そんなこと無かったって? 本当かしら? 目を逸らさずに白状なさい。
……まあ、後でゆっくりお話しするとして、その後は偶然ではあったけれど、通うことになっていた高校の通学がお互いに同じ電車で、毎日時間を合わせて一緒に通学していたわね。
それから高校を卒業して更に大学を卒業するまで、お休みはデートしたりお互いの家にお泊りに行ったり、清くてエッチなお付き合いを続けていた訳で。
「ねえママ、お母さん。その話長くなる?」
おっと、テーブルを挟んで私達の目の前に座る愛娘が半眼でこちらを見てくる。その隣で困ったように笑うおっとりとした顔つきの女の子は、紹介したいと娘が連れてきた子だ。
娘の話では中学生の頃からずっとお付き合いをしていたとか。
まあ私達は知っていたけど。……そんな二人揃って宇宙猫みたいな顔しないの。
何時紹介してくれるのかって、ずっと楽しみにしていたのよ。
その後は自己紹介を済ませて、高校卒業後には結婚するとか、そんな話をした後、娘達は揃って出かけて行った。これからの話をしに行くとか。
……うん、テーブルの下でずっと手を繋いでいてくれてありがとう。せっかくの娘の幸せだもの。泣いたりなんてしないわ。
……嘘。やっぱり寂しいからちょっと慰めて。
抱きしめてくれたら、またいつもの私に戻るから。うん、ありがとう。
私も、いつまでも愛してる。
END
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