第二十五話 受付へ向かうまでの幕間
今回かなり短めです。
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「───よし、出来た。」
多い空白を埋められるだけ埋めきった所で、私はそんな満足気な声と、ペンの蓋を閉じる軽快な音を鳴らす。
『ん、もう出来たか?』
その声を聞いては、頭の中のモラグも深層意識から現れてはそう言って、その用紙を数秒眺めた後『うむ、問題ないようじゃな!』と頷いた。
────自動的にダブルチェックになって、こういう系だと強いな。等と、くだらない事を思いながらも、私はゆっくりと立ち上がり、再び、緩慢でも迅速でも無い、普通の足取りで
『む。』
そんな中、モラグは不意に声を漏らす。視線の先にあるのはさっきのとは別の人だかりだ。
『なんじゃ?あれ。』
────多分クエストボード、指名じゃなくて、無差別な人向けの依頼を紹介してる所だろうね。
それこそ弱めの害獣の駆除とか、逃げたペットの捕獲とか、土木の雑用とかね。
『成程のう…。じゃがこれは…』
────そうだね。とはいえ、あの量は少し異常かも、何か珍しいものでもあったのかな?
モラグの疑問にそう返しては、折角なので、受付へと行く前に近寄って見てみる。
聞こえてくる声はと言うと───
「まさかこんな大物の討伐依頼が俺たちに出るとはなぁ…」
「『墓地』には近づかないようにしないといけないわね…」
「にしても、『暗殺蛇』の討伐依頼を国が出すなんてな、そんなに長い事とどまってんのか…?」
「それもこんな大金で…。───まさか、まんまと誘き寄せられた俺達を始末しようと…」
「それはねぇだろ…」
────どうやら、『暗殺蛇』と呼ばれる何かの討伐依頼らしい、モラグは何か知ってる?
『余か?いや知らん…。と言うより、数年貴様のうちで引き篭っていた余が、魔物でもない最近の何かを知るわけもあるまい。』
────…えぇ。いやだって、『嫌われるべき者』?だっけ、その人達の事は全部知ってるんでしょ?
じゃあ別に知ってても───
『…。……だあああ!喧しい!ほれ、人集りが空いてきたぞ、それほど気になるのなら、さっさと依頼を見るが良い!!』
───………はーい。
一瞬、虚を突かれたような顔をしたモラグは、瞬く間に顔を赤くしては、そんなヒステリックな大声を出して私を依頼を見ろと急かしていく。
私のことは知っていたのに何故知らないのか、とかそんな疑問はあるのだが、無理に反論、質問しても意味は無いだろう。
と言うよりも、その権能の発動条件が「直接認識する」とか、そんな感じなのだろうけど。
まばらにいる人を掻き分けては、クエストボードに目を凝らす。
「───さて、どれどれ?」
『暗殺蛇』というキーワードを釣り針に端から端へと眺めていれば、ボードの中心程で引っかかる。
遂に目当てのそれを見つけた。内容はと言うと
“討伐対象:盗賊『暗殺蛇』ムラサキ 目的地:地下迷宮『ハデス』 報酬金:金貨20枚────”
『ほう、【ハデス】────。』
内容を大まかに見渡したところで、モラグがそう声を漏らす。
それほど面白そうな情報はなかった筈だが…。
「知ってるの?モラグ。」
『うむ───とはいえ、それほど珍しいこともない、ただこの街の地下に広がる迷宮と言うだけの話よ。────無論、その迷宮はこの余が知っている程に古いのだが。』
「…古い、って言うと─────」
古代の迷宮…と聞いて頭に過ぎるのは
胴体と二の腕を擦りながら、げんなりとした、グロッキーな様子でミノスに質問を返す。
「…私でもちょっと危険なくらい?」
『いや、今中にいるヤツらは奴ほど強くもあるまいて。…というより、そのレベルで危険な奴らが居るのなら、こんな大衆向けの依頼は出すまい。……だがまぁ、このハデスの歴史が少々興味深くての。』
どこか神妙な顔で、頷くように語るモラグ、『…少々長くなるが、知りたいか?』と聞いてくるのだが…はっきり言って、その情報にあまり魅力を感じない。
モラグの正体に少しでも近づけるのなら良いのだが…そうでも無さそうだし。
数秒、押し黙る私に対し、モラグは何処か呆れ口調で『興味が無いのなら良いわい…。』と不貞腐れては、私では認識すらできない深層意識へと潜っていく。
「…拗ねたな。」
そう、こちらも呆れるように、伽藍堂とした思考に呟いては、ゆっくりとクエストボードから離れ、
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