第64話 肉がパワー

 ガラ場は〜続くよ〜どこまでも〜。


 山頂が見え無いまま、とうとう日が落ちた……。


 テントを何処かに立てないと…でもこのガラ場に置いて、次の日の朝に起きたら、物凄く下まで滑って落ちてました…最初から登ってね?…なんて事になったらどうしよう…。


「……どうしよう。休みたいのに平らな場所が無いわ。」

「へ?テントならどこでも良いだろ?」

「だって、テントは平らな場所に接地するものよ!それに、テントごと滑落したらイヤだもの!」

「………これマジックテント。水の上でも接地可能。もちろん地面がボコボコしてても、傾斜してても大丈夫。付属の杭をしっかり打ち込めば、間違いなくその場に固定されるぞ?」

「…………………………………そう言うのをね、私は教えて欲しいのよ!!私の常識と違うから!!」

「だって、お前の常識なんか俺知らねぇし。」


 ああ!!それなら…もっと早く休んだのに!!

 疲れたわ〜〜!


 仲鉢さん(葉子さんの通っていたマッサージ店の担当者名) 私、ここに来て分かったの!


 あなたは、ただのゴッドハンドじゃなかったって!

 

 聞き上手なあなた相手に、話す気が無くとも、つい色々と話をしていたわ。


 絶妙な相槌、落ち着いた声音、ウッカリすると愚痴も喋ってしまいそうなほど、私から自然に話をひきだして、時にちょっとしたアドバイスをくれたり、経験談から他の方法を示してくれたり…。


 それをマッサージしながら彼女はやっていたのよ?!コリが酷い時に効果のある座って出来る運動や、偏った重心を無理なく改善する方法も!


 あの時間は、私の身体だけでなく心も解してくれていたんだわ!!


 身体の痛みや疲労は魔術で何とかなっても、心は無理よ!少なくともバンディエル相手では!


 ああ……誰かと気が済むまでおしゃべりしたい!


 お茶と甘い物も欲しいわ。そうなったら、きっと延々としゃべるでしょうね……。


 もう、引かれてもいいから、独り言でも…………いえ、私が欲しているのは会話よ!


 せめてバンディエルがもう少しおしゃべりだったら良かったけど、でも、女同士で気兼ねなくって方を私は望んでいるんだわ。


 それに、今のバンディエルに慣れたから、彼が今からおしゃべりになられても……困るわね。正直、ちょっと気持ち悪い。


「………ああ!斜面に接地したのに、入ると真っすぐだわ!」

「そりゃ、マジックテントだからな。」

「………………………………………………。」

「………ああ?なんだよ?」


 諦めたらそこまでだけど、今日は勘弁して貰おう。私が分らない様に、バンディエルも分からないのよ。


 さあ!その話はまた今度。だって、今日は焼き肉だもの!


 タレが無いけど、ナズナっぽいので、脂の多い部位はアッサリ頂いて、赤身の部分はクルミペーストとハチミツを和えて野菜スープでのばした漬けタレで食べよう!


 ヒレ肉だけは、ステーキよ!


 とても1度で食べ切れる量じゃないから、骨付き肉は後日、煮込みとバーベキュー風にして食べたいわね!


 きっと、塩だけでも十分美味しいお肉よ!


 そして、バンバン出て来なさい!セロトニン(幸せホルモン)!!


「いざ!…………いい匂い!!!」

「……お!それなら俺も食うぞ!」

「ちゃんと用意してあるわよ!焼くから待ってて!」


 ジュージューと肉が焼けて脂が跳ねる。視覚的にも凄い破壊力を感じるわ!


 想像以上よ!すっごく美味しい!!

 ……ああ……幸せ!!


 さすがレ◯ドブル!!私、明日は飛べるかもしれないわ!

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