第62話 樹海の先へ
その後はさすがの私も、実のなる木に行きたいとも思わず、それこそ脱兎の如くダンジョンを後にした。
でも、帰り掛けに、赤ウシを討伐してお肉が出たのはラッキーだったわ!
「……はあ。やっと外に出られた〜〜!」
「お疲れだったな…。だけど、もう少しここからも距離を置こう。あの転送陣はダンジョンの罠ってよりも、人の………他の魔術師の作為を感じた。そんな事が出来るのは、少なくともお前よりも格上の魔術師で、一度はここのダンジョンにも来ただろうからな。」
「そうね…。お近づきにも、お友達にもなりたくないからそうするわ〜。」
『大木の洞ダンジョン』を出て、当初の予定通りに南下して行く。
外の時刻も昼頃で、まだ行動可能な時間帯で良かったわ。
「ん〜〜〜!やっぱり外の方が落ち着くわね。一層目みたいに環境が良くても、ダンジョンはダンジョンって事かしら?」
「そりゃそうだ。ダンジョンは魔力の塊みたいなもんだ。お前程度のレベルじゃ、まだまだダンジョン内の魔力が濃くて、それが圧になってるだろうよ。」
「………ねえ、バンディエル。そう言う情報って結構重要なのよ?それって言ってみれば、いつも平地にいる人が、いきなり標高の高い山で高地トレーニングをしている様なものじゃない!」
「お前の調子が悪くなる様なら言ったさ。多少の違和感程度なら誤差の範囲だ。動きにも魔術の発動にも問題無かった。」
「それでも教えて!!」
「え〜〜〜〜〜?面倒くせぇ…。」
まったく!バンディエルには、もう少し私にしている配慮を言葉にして欲しいの!
分らない事がまだ多いんだから、気付けないじゃないのよ!!
「とにかく、面倒でも教えてね!」
「……善処しよう。」
「それは、ヤル気のない人がする返事の代表格よ?!」
肩をすくめるだけで、返事をしないバンディエルをひと睨みして再び歩き出す。
ダンジョンのジャングルと違って、外の森はどちらかと言うと“樹海”かしら?
湖から離れれば離れる程、冷え固まった溶岩流の跡みたいなゴツゴツした岩肌と苔生した地面が増え、樹木も鬱蒼と茂って来てる。体感温度が低く感じるわ。
「『遠見』で見ても、どこまでこの森が続くか分からないのよね。このまま進んで平気なのか……森が深くて心配だわ。」
「ん〜…平気じゃねぇ?魔力の濃さも変らないし。ただ、少しずつ登り傾斜してるから、このまま行けば山に当たりそうだけどな。」
「ええ〜〜!私、登山用の装備とか無いわよ?!」
今の所、マジックブーツが優秀だから足元に困った事は無いけど、登山にも対応出来るのかしら?
「そのブーツとマントとがあれば大丈夫だろ?」
「軽装!!山は侮ってはいけないのよ!!」
「寒く感じたら、沢山持ってる毛皮を使えよ!」
「……毛皮。それで防寒服を作るしか無いのかしら…。」
もう少し進んで、早目に今晩の宿営地を決めよう。
そうしたら、持っている毛皮でコートの様な服を作って、下は……サルエルパンツみたいにしようかしら…?ああ、でも股下がそんなに空く必要は無いのよね……足元がよりキュっとなって機能的なズボンといったら……ニッカポッカ?!
何かそれは…ちょっと違う様な……でも天候や工事現場の色々な状況にも向いてるから、今も現存して愛用されているんでしょうし……。
ニッカポッカにプラスして巻きスカートを作ろう。それなら面倒は無いし、他にも流用出来るわ!
大体の予定を決め、先を目指す。
私、出来れば山登りじゃなくて、街に行きたいんだけど…。
何処にあるかが、分からないのよね……いいわ!進みつつ、頑張って街を探そう!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます