第60話 瑠璃色の魔物

「また来たわ!インパクト!」

「ギャウッ!!」


 バンディエルの言った通り、倒したはずの魔物はリポップされ、ぜーんぶ元通り。未踏破方面に進んでいる合間にも、次々と襲って来てくれる!


「バリアの堅固さには安心したけど、やっぱり私を狙って来てるわね。」

「お前自身が魔物寄せだから、しょうがねぇだろ?」


 それを何とかしたい!レベル上げに討伐が必要だったとしても、セイフティーエリア探索の足止めになるのはイヤよ!


 だいぶ慣れて来たお陰で、バリアに突っ込んで来て、それに当たった森ヒョウをインパクトで攻撃して倒している。2発も撃てば倒せるけど、これって威力の加減は出来ないのかしら?


 2発目はもう少し弱くても大丈夫そうなのよね…。


「……慣れるしか加減は出来ない…感じ?試すしか無いわね。」

「熟練度が上がれば、調整も可能だぞ?」

「やっぱりそうなのね…。なら、尚更使う様にしないとね!」


 進むにつれ、森ヒョウよりも猿の出現が増えて来た。猿がまた厄介で、木の上からも襲って来るし、物を投げ付けて来るのよ。


 そして、また落とす物は魔石と毛皮。

 毛足の短い茶色の毛皮だから、森ヒョウよりはまだ何かで使えそうだけど…。


「ジャングルって、自然が沢山あるのに、食べられる物は少ないのね。魔物も今の所は毛皮ばかりだし、木に実がなってる様子も無いわ。」

「もう、十分持ってるだろ?まだ要るのかよ…?!」

「私のいた世界がね、飽食と言うか何でもある世界だったの。肉の種類も野菜の種類も、加工品にしたって好きな物を選べる環境が当たり前だった。それからしたら、今の現状は無いにも等しいわ。なので、優秀な容れ物もある事だし、もっと色々と欲しいと思ってます!」

「欲張り…。だから重いんだよオメぇは。」


 そんな事無い!……と声を大にして言いたいけど、いまいち自身が無くて言えない!


 女性にしては、身長がある方だと思う(縮んで無ければ171cmあった)し、体重だって自分で決めた上限を超える事は無かったわ!


 お腹も出てないし、大丈夫だと思うんだけど…。


「もう!あの猿は!後ろから物を投付ける程度では、猿知恵って言うのよ!」


 バリアの背面に何かが当たったから振り向くと、案の定、木の上には例の猿。目視で確認し、マグナムを一発。


 猿は、外さなければ一発で倒せる。ただ、森ヒョウよりも個体数が多く、複数で攻撃して来る場合もあった。


 集団で寄って集って物を投げ付けてくるから、即座にやり返すけど気分が悪いのよ。


「早くセイフティーエリアを見つけたいわ…。」

「そうだな…。結構踏破してると思うんだが。」

「…ねえ、バンディエル。一応聞くけど、セイフティーエリアが無いケースは……ある?」

「あ〜〜……ある。こればかりは、探した結果の話だから、どちらとも言い切れないが、この階層はちょっと怪しいな。」


 私の楽しみが!!このままでは、モチベーションが保てないわ!!


 そうは言っても、進まざるを得ない。

 大丈夫!頑張ったご褒美があると信じて行くのよ!


「…あら?違う魔物かしら?」


 不規則な動きをしながら、こちらに近付いて来る。早さは無いけど……何かしら?


「『遠見』…………まあ!鮮やかな蝶だわ!」

「……その見た目ほど優雅じゃねぇと思うぞ?大抵、そういった魔物は、他の魔物や動物の体液を吸う肉食だ。」


 ああ〜……ロマンが続かない。



瑠璃大蝶


レベル 58


体力 529/529

魔力 241/241


魔術 鱗粉飛ばし、吸取り、誘引、麻痺、産み付け



「イヤ!魔術のラインナップがエグいわ!!!絶対に近寄らせない!!」

「だから言ったろ?綺麗な魔物と、見た目が一見弱そうだったり、可愛気があるヤツ程、厄介でエグい魔術を持ってるぞ!」


 もう!ここのフロアは癒やしが足りなさ過ぎよ!


「『狙撃』!」


 蝶がフヨフヨと舞って来ている。『鱗粉飛ばし』の有効範囲も分らないから、出来るだけ早く倒そう!


 あ!エアカーテン!


 万一、知らぬ間に誘引されたら一貫の終りだもの!


「………フラフラと…狙い難い!」


 それでも、なんとか狙いを絞る。

 私だってレベルが上がって、スナイパーとしても練度を重ねているのよ!


 一撃目で撃ち落とせた。でも、まだ魔石に変わっていないわ!距離を取ったまま追撃を放つ。


 まだ、2撃必要か………。


 討伐し、魔石と変わったのを確認して、一息付く。


「もう…。今日こそは焼き肉にしよう!セイフティーエリアがあろうと、無かろうと、絶対に焼き肉!決めたわ!」

「好きにしろ〜。……だけどまだ終わってねぇようだぞ?」


 バンディエルに言われ、索敵を確認すると、さっさと同じ動きの移動物体が、複数こちらへ向かって来ていた。


「『遠見』………………………嘘でしょ…?」


 そう言えば、蝶って群れたりするわね……。あれ、何匹いるのかしら?


 『遠見』で見えた視界の範囲一杯に青い浮遊物。

 綺麗ね……で、終われれば良かったけれど。


「物凄くたくさんいるわ……。もう、私ってば大人気ね。」

「栄養が良いから美味そうに見えるんだろ?」

「あなた達の餌になる為では無いわ!」


 でも、とても『狙撃』で倒せる数じゃない。


 エアカーテンを維持しながら、殲滅方法を考える。


 幸い、ある程度まとまって飛んでいるわ。……よし。追い風を吹かせて……あちらにしたら向かい風なのに、随分頑張って飛んで来るわね。


 もう、10mぐらいの距離まで来たかしら?そうしたら行くわね。


「きっちりカット出来る様に賽の目レーザーよ。」


 これを避けられるのは、エ◯ダ・ウォンだけよ!


 そのままレーザーを前進させ、蝶の群へ。向かい風を受け、懸命に飛んでいる所を悪いわね?


 レーザーに触れ、カットされた蝶はその場で賽の目状になって落ちると、魔石に変わった。


 何匹かはレーザーから外れ、半端に負傷した蝶や無傷の蝶が数匹残ったのみだ。


「残りはマグナムで仕留めれば良いわね。」 

「…………………お前、本当にとんでもねぇよな。」

「どうしてよ?!あっちの方が余っ程とんでもないわ!しかも集団!卑怯でもあるわよ!」

「いや、でも、お前……あの攻撃は避けれねぇだろ?」

「避けられるわ!エ◯ダ・ウォンなら!」

「だから、誰だってんたよ……。」


 索敵反応……無いわね。


 はあ……。また凄い数の魔石だわ。それに変な小瓶も落ちてる。

 



【瑠璃大蝶の鱗粉 麻痺の効果がある】




 …………何に使えと?


 それなら、綺麗なビーズの方がよっぽど嬉しかったわ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る