第59話 残念なお知らせ

 あら?今何時かしら?

 ……何時でも良いわ。今日はお休みだもの。


 少し寝すぎたせいか……ちょっと身体が重い。目覚めのラジオ体操をゆっくりやって、温めのお湯でお風呂に入ろうかな……。


「……おい、起きろ。」

「ん?おはよう〜バンディエル。」

「おはようじゃねぇ!お前……覚えてないのか?!」

「ええ?な、何を?」


 え?本当に何を言ってるのか分らないわ…。

 昨日は凄く疲れてお風呂に入って……入って……どうしたかしら?お風呂に入って、疲れが滲み出て来た〜って所までしか………記憶が無い。


 ……あら?私お風呂出た?


「……お風呂に入った所までしか、記憶にございません。」

「そうだろうな!テメェは風呂でぐっすり寝てやがったからな!呼んでも起きねぇし、叩いても起きねぇし、挙句の果てに湯に沈んでも起きやしねぇ!」

「………それだけ疲れていたのね。」

「その上、まる1日以上も眠りっ放しだったんだ!」


 ……え?まる1日以上…?嘘でしょ?!


「私のお休みは?!」

「………もう終わった。」

「……え〜あのね、バンディエル。私のいた世界は週休2日制と言う制度がありまして、出来ればそれを採用したいのだけれど…。」


 確かに休みの1日目って、前も気が済むまで寝たら午後だったり、夕方だったりした事はあったわ。

 でも、丸々1日寝てしまうなんて無かった。それだけ、昨日……いえ一昨日の討伐が負担だったんだわ。


「…ここには、その制度は適用されてねえ!それに、風呂で寝たお前を、俺がここまで引き摺って運んだんだからな?!凄え重かったんだぞ?!」

「え?!それは……ごめんなさい。でも、引き摺らないで運んで欲しかったわ…。」

「重くて無理だアホが!テメェ普段から食い過ぎなんだよ!重量オーバーだ!」

「私は太っては……いないわよ?!服だって前のがちゃんと着れているし!きっと、動き回って筋肉が付いたんだわ!」


 それか、バンディエルに力が無いのよ!……言わないけども。………やだ、本当だわ。タオル巻いてるだけだ。両膝に擦り傷あるし!脚の甲にも!


「………私のお休み…。」

「とっくに終了。それに倒した森ヒョウから何からとっくに復活してるからな?」

「ええ?!」

「当たり前だ!1日以上経てば全部リポップ済だ!」


 朝一番で、立て続けに残念なお知らせラッシュ。

 もう活動限界です……。


「……お風呂入って来ても良い?」

「それより飯を食え!」

 「は〜い……。」


 言われてみれば、あの日の夜から何も食べてない。あ、お腹が鳴ってるわ。……消化に良いものと言っても……リンゴジュースとパンをスープで軽く煮て、パン粥風にして食べよう。野菜もクタクタに煮込まれてるから大丈夫よね。


「……美味し〜い。沁みるわ〜。」


 バンディエルもその横で魔石を潰してる。


 森ヒョウか……。レベル差も2つまでに縮まった。

 当初の恐怖心もだいぶ和らいだ。


 1度、近距離で戦ってみよう。……狙撃って結構疲れるのよね。魔石拾いも大変だったし。


 大丈夫であれば、未踏破の方へ向かいつつ進んで行って、セイフティーエリアと次の階層への階段を探そう。


 それに、1日以上寝たら気疲れみたいな感じは消えたわ。身体が重いのは寝過ぎの代償よね。


 私が全然起きなかったせいで、バンディエルには随分心配を掛けてしまった様だし…。


 これからはテントで定期的な休みをちゃんと取れば、ここまでにはならないはずよ。


 そうと決まれば、休みはまた今度のお楽しみにして、セイフティーエリアにあるかもしれない、実のなる木を目標に進みましょう!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る