第57話 魔物ホイホイ葉子
「……バンディエル、このフロアの敵は私にはちょっと早い気がするわ。」
「弱気になるのが早ぇよ!気を付ければ大丈夫。お前の場合はビビるのが1番駄目だ!それより、さっきの猫の魔石を使えよ。」
「え?」
「余裕でお前の上のレベルだったろ?なら『高位索敵』を取っておけ。」
確かに。でも、今回は他にも有効な魔術があったわ。それじゃダメなのかしら?
「バンディエル、『俊足』では駄目なの?」
「取れるぞ?その代わり、お前の弛んだ足が『俊足』の魔術の使用でどうなろうと、俺は知らねぇからな?」
「!!……そうか…。私の身体が魔術の出力に耐えられないのね。」
「身体強化の魔術と併用するならまだ分かる。たが単独で使うなら、それに耐えうる肉体が必要だ。少なくとも、ちょっと前まで歩くのだって文句を言ってたヤツが耐えられる魔術ではねぇよ。」
なるほど…。あのヒョウであれば大丈夫だけど、私の足で同じ走りをしたら……肉離れで済むかしら?
「では、素直に『高位索敵』を取るわ。また貰って悪いわね。」
「次を回してくれれば良い。魔物はそれこそリポップをさせれば無尽蔵だしな。」
確かにそうね。さっきのヒョウだって、一匹のはずがない。でもあの魔術のラインナップなら、次はヒョウも恐れずに討伐出来る……と思う。
他にジャングルにいそうな動物って、何がいたかしら?少なくとも最初の階層にはいなかった、私を捕食対象として見ている魔物の存在には、恐怖を覚えるのよね…。しかも、私にまっしぐらだったわ。
「お前の防御は多岐に渡るし、攻撃だってそうだ。もう少し自信を持てよ。影に潜らなくても『ばりあ』、『マント』、『硬化』を併用しながら攻撃したら、先にクタバルのはあっちだ。」
「簡単に言ってくれるわねぇ…。」
「それが嫌ならさっきの『高位索敵』で、奴らよりも先に捕捉して倒すんだな。」
「……そうね。試してみるわ。」
取れる安全マージンを試さない手はないもの!
『高位索敵』が、どの程度役に立ってくれるか、見てみよう!
「『高位索敵』……………うわ!…これ……どう言うこと?」
今までは、地図埋めが出来た箇所、要は私の視界の範囲内にのみ魔物を示す白い点が表示されていたけど、『高位索敵』を使ったら未踏破の箇所にも魔物の表示が追加されている!
「バンディエル!凄いわ!『高位索敵』で見ると、今までの倍以上の範囲が見れる!」
「目安になるだろ?」
「なるわ!あ……早速、また高速で近付いて来てる魔物がいる…。」
「魔力が高いヤツは、魔物にも狙われやすいからな。殺られたら魔石をバリバリ食われるぞ?そうしてヤツ等も強くなる。」
なんですって?!じゃあ、私自身が魔物ホイホイ状態だったの?!
ああ!もう!!それは後で!!今は迎撃の準備よ!
防御重ね掛けをして、ライフルで狙う。……『遠見』の範囲に入ったら撃つわ!
「………見えた。………しぶとい!!もう一回!ああもう!サプレッサー付きだから銃弾の威力が落ちてるのよ!」
近距離のマグナムで2発。サプレッサー付きのライフルだと、ヘッドショットを決めても3発。
マグナムの2発目がオーバーキルだとしても、やっぱりライフルの威力が足りない…。
「うそ?!また他のが来たわ!!」
「頑張れ〜〜。」
くぅ〜〜〜!もういい!大口径の高威力ライフルを使うわ!私の安全が1番大事よ!
………その後も次から次へと森ヒョウが間断なく押し寄せ、その場に留まったまま狙撃を繰り返した。
倒すのに2発掛かった銃弾が、1発で済む様になった頃、森ヒョウの攻勢がやっと止まった。
「つ…疲れたわ〜!!!」
「おう!お疲れ!さあ、落ち着いたら魔石を拾いに行こうか!」
「……………バンディエル…拾って来て。いえ、その場で潰していいわ。」
「残念!俺は勝手が出来ない様に、お前から渡された物しか手に出来ないんだよ〜!」
………………その機能、私の許可制に改善して!!
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