第55話 マジックテントを堪能

「はぁ……。気持ち良かった…。ヤッパリお風呂はいいわ。色々リセットされるし、とってもリラックス出来る。バンディエルも気持ち良かったでしょ?」

「ふん!悪くはない。」


 本当に素直じゃないんだから…。私の後にバンディエルにもお風呂を勧めたら、最初は嫌々っぽく入って行ったのに、私と同じくらいの長風呂をしてサッパリした顔で戻って来たくせに!


「焼き肉はまた明日。今日はこれで休むわ。」

「そうだな…。」


 フロアボスを倒すと、1日は復活しないと聞き、今日はそのまま留まってテントで休む事にした。


 テントの中は広さが拡張される様になっているのか、外から見た大きさと、室内の広さに差異があった。


 キッチンには4人掛けのテーブルセットも備わっていて、寝室との間には簡易だけど仕切りもある。


 お風呂はホテルで良く見る様な、トイレの横に洗面台、その奥が浴室になっている造り。


 洗い場と湯船も別れていて、可愛い猫脚のバスタブが置かれていた。


 追々、バスソルトとかを揃えて行こう。香りの良い花があったら香料を作れないか試しても良いわね。


 シャンプー、リンスも欲しいけど、それは再現が難しいでしょうから、せめて香油を作りたいわ。


 どこに行こうとも、これだけの物が揃っていれば、小振りの1LDK・40㎡くらいのお部屋で生活しているのと同じよね。


 でも、本当に助かったわ……。正直、ある程度は慣れて来たとは言え、屋外の不安が付き纏う野宿生活を続けていたら、何処かしら変調を来してもおかしくなかったもの。


 どうせ生きるなら、万全とは言わなくても、大きな不調無く20年を過ごしたい。

 

 さあ、考えごとはここまでよ。


 寝室にあったベッドはフレームだけだったから、毛皮を敷き詰めて愛用のラビットファーの掛け布団で、もう寝ましょう。


 おやすみなさい…。




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「………ん…。あ…れ……私の部屋に戻った……んじゃないわ。テントよ…。」


 錯誤してもしょうが無いわ。素晴らしきかな、マジックテント。


「は〜〜良く寝た。寝坊しちゃったかしら?……でも今日は許して貰おう。」


 着替えて……ラジオ体操第一〜!今日も元気良く行ってみよ〜!

 ベッドは……乾燥&清浄しておきましょうか。


「バンディエル、おはよ〜!」

「……おう。」

「?あら、珍しいわね。ちょっと寝惚けてる?」

「……マジックテントが快適過ぎる。」

「そうよね!私も快適だったわ!もしかしてこの中って、魔力的に安定しているのかしら?」

「分かんねぇ…。けど、悪くないのは分かった。」


 いい事だわ!バンディエルのカリカリの原因も、その不安定さから来ていたのかもしれないわね。


 朝ごはんの用意をしようとキッチンに立った時、良く見たら二口のコンロの下にオーブンがあって、もう小躍りしたわよ!


 でも、火種は魔力だし、水を出すのにも魔力を使う所が、マジックテントならではかしら?


 まだ、少しポヤ〜として座ってるバンディエルにリンゴを切って出し、自分の朝食もサッと作ってテーブルへ。


 嬉しいわ…。ちゃんと座ってテーブルでご飯を食べてるだけなのに。


 キッチン周りも色々整えましょう!ふふ…楽しみも増えたわね!

 

「ねえ、バンディエル。今日は外に出たら、先に進んで良いのよね?」

「ああ。ただテントを出る時は必ず防御して出ろよ?それと、二層目の敵を見付けたらすぐに調べろ。レベル差があり過ぎたら撤退する。」

「そうよね〜〜。フロアボスが50レベルを超えてたんだもの、次の階層も同じ位までなら、ゆっくり行けばなんとかなるかもしれない。でも、それ以上は無理だわ。」

「ま、どんなフロアかも分からねぇ。とにかく、1度入って確認だ。」


 朝ごはんの後、防御のバリアを張って外に出た。


 ……大丈夫そうね。変化なし。


 入口と真反対に階下へと向う階段があり、ゆっくりと降りて行く。


「………随分と降りて行くわね。50段目よ……。」

「深いな…。撤退もあり得るぞ。」

「くぅ!次は登りを50段以上も…。バンディエル、ダンジョンを出る前に、セイフティーエリアで採取だけしてもいい?」

「……まあ、大目に見よう。どうせ外に出ても行く当が無いしな。」


 やったわ!今日は何が生ってるのかしら?

 進めなくても、楽しみが出来たわ!


 階段は下へと続き、100段目で終点になった。


「慎重に入れよ。」

「了解!」


 階段室から、二層目のフロアへ。一歩踏み出すとムワッと暑い熱気が襲って来た!


「……これは、日本の真夏日?!……より湿度が高いわね。蒸し暑くて不快指数が凄く高い。」

「敵はどうだ?」

「……少し行った所にいるわ。『遠見』……うわ…原色で色鮮やかな鳥がいる。……レベルは56よ。」

「全部の敵が同レベルとは限らないからな?慎重に進めよ。」


 とりあえず、慎重に行くならサプレッサー音の抑制器付きの『狙撃』で行こう。


 それじゃ……二層目に入ります!

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