第54話 めざせ焼き肉マスター
「バンディエル!!あそこを見て!!下へ行く階段があるわ!」
「お前が見えてんだから俺だって見えるわ!一々騒ぐな!」
強がり言って、草に隠れて見えなかったじゃない!
それにしても…あれは階段への入口を隠してるつもりかしら?確かに見つけにくいけど。
「おい、いいか?階段を降りるのは途中迄だ。もし、そこに見える敵がいたら直に調べろ。」
「分かったわ!」
ゆっくりと階段を降りると、広間の先にドアが見えた。他には………何もいないわね。
「バンディエル、何もいないけど、ドアがあったわ。」
「………そうか。お前、今何レベルになった?」
左山葉子(38歳)
レベル43
体力 273/273
魔力 216/337
魔術 イメージクリエイション、影潜り、インパクト、遠見、狙撃
属魔 バンディエル
「わ!随分上がってたわ!43レベルよ!」
「そりゃ、あれだけの数を倒せばな。ウサギ以外は、喜々として倒してたじゃねぇか。」
それはそうよ!糸は手芸の必須アイテムだし、ハチミツはそのままでも食べられるし、お料理にも使える!しかも入っていた小瓶が可愛い!
牛肉は、言わずもがな。愚問よ愚問!私は食に好みはあっても、主義は無いわ!食べれるのなら、とりあえず食べてみる!その結果、合わなかったり、アレルギー反応が出たら売却するだけよ。
「扉を少し開けて、中を見れるか?出来れば直接覗かない方がいい。」
「……そうね出来ると思う。やって見るわね。」
合わせ鏡をイメージし、扉を少し明けて中を写して見る。バンディエルが私の後ろから覗き込んでた。
鏡が珍しいのかしら?
「………あ、居たわ。え〜〜〜?何アレ…物凄く大きい赤ウシ……。」
「ソレ越しに鑑定出来るか?」
大赤ウシ
レベル 54
体力 504/504
魔力 192/192
魔術 突進 突き刺し 大暴走 地揺れ 硬化
「あの〜〜向こうのレベルの方が随分高いわ。」
「10レベル程度なら、誤差の範囲内だ。寧ろ、格上相手に大番狂わせをしてヤツの魔術を奪え!」
「え?!そんな事が出来るの??」
「魔物相手の場合は、10レベル以上の格上を倒せれば1つだけ奪える。『硬化』を得られれば、お前の防御の補強になるだろう。それに、あれだけのデカさだ。さっきからうるさく、かるびだ、ろーすだ訳分からん事を言ってた肉も揃うんじゃないか?」
だって、もう焼き肉の頭になってたんだもの!しょうが無いじゃない!それなのに、ヒレ肉のあとはバラ肉と、ホルモンが出ただけで、角と皮ばかり!!
「………私、やるわ!焼き肉を!」
「それは倒してからにしろ!!」
いけない…先走っちゃったわ。でも、そうと決まれば、対策を練らないとね。
体力も多いから一撃は難しいとして……狙うのは足ね。太いからウォーターレーザーで切れるかしら…?
タンスの角で小指をぶつけるとメッチャ痛い、そんな攻撃を目指そう。
あ、ウシって……………小指無かった!蹄だわ!
なら、狙うのは足の関節よ!スネ肉が落ちるかもしれないし!
防御はいつものバリアに、物理攻撃を撥ね退ける、例のヒラッとした赤いマントをイメージしたわ!
さあ!
「初撃は、ウォーターレーザー!」
「ブモゥオオオォォーー!!!」
私を見付けた途端、突進して来た!
勢いすご!怖っ!!
ただ、大赤ウシは足にウォーターレーザーを受けて、そのまますっ転んだ……膝カックンと砕け、私に向かって。
これじゃ4tダンプと人の正面衝突だよ!
勢いは無くならず、前倒しにこちらへ来る大赤ウシ。
マントよ、お願い!!
バリアも全開よ!!
大赤ウシは私の眼の前で、スルッと左に流れる様に曲がって行き、階段近くの壁に敢え無く激突した。
「あ、ありがとう!!ド◯えもん!!」
「誰だよ?!それより、さっさと起きあがる前に追撃だ!」
「そうね!」
ウォーターレーザーで前足がプランと、痛そうな方向へ向いていたから、効いてはいたのね。
この距離なら、集弾性の低いと言われたマグナムでもイケるでしょ。
「アディオス。」
「だから、何をいってんだよ!!」
「決め台詞よ!マグナムを撃つなら言うべき一言よ!」
頭を目掛けて放つ。1、2、3発目で大赤ウシは消え、大きな魔石とお肉を残して逝った。
「良かった…。やっぱり大きいと威圧感があるわ。」
「お前のご希望の品も出たんじゃないか?」
「そうね!魔石も大きいわ!はい、バンディエル。」
「いや、今回はおまえが潰せ。さっきの魔術を得るにはそれが必要だ。」
「そうなの?なら魔術師を倒した後の魔石も同じ?」
「相手がお前よりレベルが上ならな。俺が潰して吸収すれば、その縛りは関係しない。」
ふ〜〜ん、そうなのね。でも、こんなリンゴみたいな大きい魔石を潰すって……なら、ここはまたドラちゃん頼みね。
スーパー手ぶ◯ろ!魔石を割るわよ!
手袋のせいかは分からないけど、サクッと魔石は割れ、いつもバンディエルがそうしている様に、キラキラとした物が私を包んで消えた。
「確認してみろ。」
「分かったわ。」
左山葉子(38歳)
レベル48
体力 288 /288
魔力 163 /362
魔術 イメージクリエイション、影潜り、インパクト、遠見、狙撃、硬化
属魔 バンディエル
「レベルがまた上がったわ!魔術も増えてる!」
「そりゃ10レベル上の相手を倒したんだ。それくらは恩恵があって当たり前だろう。」
「『硬化』……………硬い……。乙女の肌に有るまじき硬さだわ!」
「死ぬよりましだろ?」
「ん〜〜そうよね。確かに、これなら普通の攻撃は通らないわね。」
「そこらの雑魚の弓矢なんかで、もう傷を負う事もない。」
……そうね。きっとあの時、バンディエルは私の中でとても焦ったでしょうしね。
こうして存在を知る前だったから、危険を察知しても知らせる術も無く、歯痒い思いを何度もしていたんだわ。
「肉はいいのか?」
「良くない!!すぐ拾います!!」
【大赤ウシの肉セット 各種部位が揃っている 食用可能】
「ん〜〜〜!!!希望の物が手に入りました!!」
「そうか、良かったな。あとはアレだ。」
「アレ?」
最初に大赤ウシがいた所には、例の台座と宝箱が鎮座しているじゃない!久しぶりだわ!!
「宝箱!!」
「周りも含めて鑑定してから近付けよ?落とし穴の罠がある場合も想定しろよ?!」
「………なんて意地悪なの?宝箱を前に目の前で落とされるとか、コントじゃないのよ?!」
「ダンジョンはそう言うモンだ。」
【ダンジョンボスの宝箱 近付くと周囲1mに穴が開き落ちると死ぬ】
「……ダンジョンのばか。」
「方法はあんだろ?さっさと取れよ。」
マジックハンドをイメージし、箱の蓋を開ける。
……中身が見えないわ。
ミラーで確認すると、アイボリーの布地に見えるわね…。さっきより大きなハンドで布地を掴み、そのまま引き寄せる。
台座の箱は消え、罠も同時に無くなった。
「取れたけど………何かしらね?服にも見えないし。素地が硬いわ。」
「調べりゃ一発だろ?」
その通り。でも、考察時間も好きなのよ?
【マジックテント バス、トイレ、キッチン付き/不壊・防汚・所有者限定・認識阻害付き】
「…………バンディエル。少し騒いでもいい?」
「ああ?!何を騒ぐ必要があるんだよ?!」
「とても、良い物を手に入れました。嬉しくて爆発しそう!」
「……少しだぞ?ここはボス以外は出ないからな。」
「やったわ!!!ありがとうダンジョン!最高の報酬よ!!早速お風呂に入りたい!!お料理も色々出来るわ!!」
「踊るな!!うるさい!!」
「でも聞いてよバンディエル!マジックテントだったの!これで野宿をしないで済むわ!お風呂にも入れる!!」
「は?マジック……テントだと?」
葉子に言われて確認すると、確かにそれはマジックテントで、しかも高性能な機能が付いた物だった。
普通は50レベル程度のボス報酬では出ない…。
これは葉子の運が良いからなのか?答えの無い疑問が増えたバンディエルだった。
「……本当に意味がわかんねぇ…。」
既にテントを広げ、中に入って行った葉子の後を追いながら、そう呟かずにはいられなかった。
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