第46話 大木の洞ダンジョン

「おい!これダンジョンだぞ!」

「やっぱりそうなの?木の洞にしては大きいし、底が見えなかったから、怪しいとは思ってたのよ。」


 湖の先に見えた大木の根本まで到着し、ポッカリ空いた洞を2人で覗き、吹き上がってくる風を受けていた。


 本当にダンジョンってどこにでも出来るのね…。

 これだけの大木だと、深度もありそうだわ。


「このダンジョンは、もしかしたら洞窟型じゃないかもしれないな…。」

「?ダンジョンって、そんなに色々な型があるの?」

「基本、何でもアリだ。ダンジョンの数だけあると思った方がいい。だからここも入ってのお楽しみだ。」


 今の所は、ダンジョンは修行の場所で、お楽しみって要素は………宝箱のドロップくらいよね?


 とりあえずは入ってみましょうか!


 バンディエルと一緒に、大木の洞ダンジョンへと歩みを進める。


「うわぁ……!!凄いわ!森からまた森じゃない!でも、こっちの方が高木が少ないわ…。代わりに草原が見える!」


 あら!久しぶりの突進角ウサギ!……でも、ダンジョンは栄養が良いのかしら?羊より大きくなってる!


「バンディエル!あのウサギって、前に外の森で獲ったのと同じなの?」 

「ああ、そうだ。倍以上のデカさだがな。それと、お前も調べる癖を付けろ。中には特殊な能力を持つ個体もいるんだ。」

「そうなの?!分かったわ!」



角ウサギ


レベル31


体力 238 /238

魔力 81/81


魔術 突進 突き刺し 



「ねえ、バンディエル。あのウサギ結構レベルが高いんだけど…。このダンジョン難しいんじゃない?」

「かもな。でも、まだお前の方が上だろ?そんな時は……地道に倒せ。」

「やっぱりそうなるのね………。」


 若干、遠い目をしてしまうのは致し方無いわ。

 修行って果てしないものね……。


「なら、どんどん行くわ!」


 丁度、ウサギのいる場所は草原で、たくさんの草が生えていた。あの草を使おう…。

 風に揺れていた草を、鋭く長い剣山になるイメージでウサギの下から出した。


「……草で串刺して………。」

「ん?串刺しと言うより、針山の方が正しいわね。串だとどうしても、私のイメージが焼き鳥に引っ張られてしまって駄目なのよ。……焼き鳥食べたいわ。」


 討伐したウサギは、その場でドロップ品に変わった。足元…と言うか私の腿まで伸びた草は、ドロップ品の回収にとても邪魔ね。


 今回は近いから良いけど、何かいい方法は無いかしら?考えながらも回収に向かうと、そこには白い毛皮が落ちていた。手に取って広げると、1枚の大きなラビットファー。触り心地も柔らかくてフワフワだわ!


「これは………私の手芸魂を揺さぶってくるわね!」

「どっちにしろ、そう言うのは後にしろ!」

「そうね。……それに魔石も外のウサギより大きいわ。バンディエルどうする?」

「今はいいから貯めておいてくれ。ここは洞窟と違って遮蔽物も多く、視界も悪いんだ。草や木に隠れたり、擬態したりする魔物もいる可能性があるから、注意してし過ぎる事は無い。」


 索敵はしいてるけど、擬態されると確かに見つけ難いわね。それに、360度、全てに気を配らないとならないのも大変だわ。気温は適温で過ごし易いのに……。


「……温度か。生体センサー的な事が出来ないかしら?……外気と異なる温度に色を付け付ける感じね。後は心動かしら?………………よし、見えるわ。形からしてウサギね。」


 索敵+所により生体センサーを使い、進んで行く。


 ダンジョンの魔物はリポップがあるから、こんな環境で時間を掛けて倒すのは愚策。いつ背後を取られるとも限らないわ。サクサク行きましょう!


 ウサギのドロップ品は、マストで魔石。あとはランダムで毛皮と角と肉だった。解体する手間が掛からないのは楽で良いけど、欲しい物があった時は、確実に取れないのが痛いわね。


 草原を抜けると、また木が疎らに生えた森に当たった。……何かがいるけど、判別が付かないわ。

 ……でも心動はある。……あ?…………あ、あ〜。中々のサイズだわ。あなた、映画に出れるわよ?




呑み蛇


レベル33


体力 271 /271

魔力 93/93


魔術 丸呑み 消化促進




「随分と貪欲な魔術を持ってるわね。でも、さすがに近寄らなければ呑めないでしょ。『狙撃』。」


 他に魔物がいないのを確認し、倒した獲物の戦利品を取りに行くと、立派な蛇皮に魔石が転がっていた。


「木の影に同化されると、目視は難しいけど、何とかなるわね。」

「……どうやって見付けたんだ?」

「魔物にだって、体温もあれば心臓もあるわよね?見難い時は、それを魔術で感知出来る様にしたのよ。」

「……その発想こそ、お前が、此処ではない場所から来た証拠だな…。」

「そうだと思うわ。でも知らない事は、いくら魔術があっても再現出来ない。その代わり知ってさえいれば、厳密に知識が無くとも使えるし、実在しない物をこうして使う事が出来る。結構ズルいわよね?」

「ズリぃ何てもんじゃねぇよ!普通は、1つの魔術で単一の事をするのみなのに、お前は知ってさえいれば、何でも再現出来るんだからな!」


 でも、だからといってスーパ◯マンの様な身体を使っての魔術は多分難しい。だって、私自身が自分の運動神経に懐疑的だから。


 そこは無理はしないわ。


 ただ、もし、必要に迫られたら、パワードスーツを着る用意はあるけどね!

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