第47話 リンゴとセイフティーエリア

 森を進んで行くと、ヘビの次は蜘蛛が出て来た。


 蜘蛛は、洞窟に居た地蜘蛛から、糸を張り巡らす女郎蜘蛛ッポイのに変わったけど。

 色の配色が途轍もなく悪趣味で、それに気を取られていたら、急に糸を吐かれて捕まったわ。

 結構、飛距離が伸びる糸なのね。


「何やってんだよ!バカ女!!早く焼き切れ!」

「でも、森林火災になったら大変だわ!」

「ここダンジョンだろうが!魔物も森も復活する!」

「ええ?!森まで復活するの?!ダンジョンって凄いわね!なら、遠慮はしないわ!」


 威嚇の意味も込めた火炎放射を蜘蛛に向けて放ちつつ、巻き付いた糸を切った。

 魔物も火は嫌いな様で、私を掴もうとしたその足を引っ込める。


 そう言えば、ここダンジョンだったわ。

 それ以前に、とても自分本位で弱肉強食な世界。


 火災を起こしてでも、まず自分を守るのが先。そのくらいの気持でいなきゃダメね。

 まだそこまで吹っ切れて無いけど、目指すは、天上天下唯我独尊で夜露死苦ってところかしら?


「……夜露死苦ね!」

「何を魔物に挨拶してんだよ?!さっさと倒せ!」



糸蜘蛛


レベル33


体力 241 /241

魔力 143/156


魔術 糸吐き 吸い尽くし



 捕まったあとは『吸い尽くし』で、死ぬまで吸われるとか怖いわね…。これは嫌だわ!


「久しぶりの機関銃!からの〜狙撃!」


 近場の蜘蛛に機関銃を乱射し、その先に見えた、悪趣味な色を目掛け、狙撃も続けて放った。

 ヘビと違って、森であの色は悪目立ち過ぎよ!


「倒せたわ!」

「……お前。油断すんなよ!」

「つい、あの変な色味に惑わされたわ。ごめんなさい。」


 魔石を拾い、もう1つのドロップ品を手に入れた。

 これは……最初の洞窟でも手に入れた糸だわ!でもこっちの方が、シルクの様な艷やかな光沢と良い手触り!


「………蜘蛛をたくさん倒す!決めたわ!!」

「おい…。魔物を倒すのは構わねぇが、欲を張っても望みのモンが出はて来ねぇぞ?」

「分かってる!でも数を倒せば、ある程度は手に入ると思うの!頑張るわ!」

「……そうか、そうか。まあ、好きにしろ。」


 それから蜘蛛を探しては倒し、ヘビも居たら倒しと、森をしばらく徘徊した。

 魔物を倒す分にはバンディエルも特に文句は無いみたいだし、ついでにレベルも上がってるはずだから一石二鳥よね!


「良かったわ!結構手に入った!!」

「そうか、そうか。だが、いい加減セイフティーエリアを探したらどうだ?こういった森は特に見つけ難いぞ?そうなったら、休む事も出来ないからな?」

「あ!セイフティーエリア!!そう言えば休憩したいわね。」


 急いで地図を表示させ、歩いた場所と未踏破の位置を確認した。まだ、結構あるわね……。とりあえず、このまま先へ進もう。


「バンディエル、このダンジョンとても広そうだわ。まだ未踏破の場所が多いから、セイフティーエリア探しも兼ねて潰して行くわね?」

「ああ、そうしろ。でないと、入口まで戻る事になるからな。」


 遭遇した魔物を討伐しつつ、地図埋めの為に歩きながら、時折『遠見』を使って行った。


 『遠見』があって良かったわ。


 私の持ってた魔術でも同じ事は出来たと思うけど、私がそれに気づくかは別の問題だもの。


 すると、その『遠見』に気になる物が見えて来た。


 平らな森と平原の中に、少し小高い丘の様な場所。


 その真ん中には木が一本生えていて、見間違いでなければ赤い実を付けている!


 まさかの果物かしら?だったら嬉しいわ!


 『遠見』を止めて、真っ直ぐその丘を目指す。


 近付いて気づいたのは、バンディエルの方が早かった。


「よし!セイフティーエリアをやっと見付けたな!」

「良かった…。それと、私はもう一つ気になっている事があるのよ!」


 足を踏み入れると、洞窟でも感じたフワッとした感覚。先に休むと、バンディエルに言われたので、彼を戻してから木の実を調べた。



【アポの実 食用可能】


「やったわ!念願のフルーツよね?」


 早速、1つ採って水を出して洗い、そのまま齧ってみる。


 蜜は無いけど、甘くてとても瑞々しい!酸味はほとんど無く、皮の赤い王林って感じだわ!


「甘くて美味しい〜!!!採ってもまた生るなら、全部採って仕舞っておこう!それに、ここには水場が無いから、このリンゴがその代わりっぽいわね。」


 手の届く場所からリンゴ狩りをして、高い位置のリンゴは『脚立』をイメージしてどんどん採取した。


「果物採取も結構な労働ね。やっと終わったわ…。」


 木に凭れるように座り、ホッと一息つく。


 ……一人だと余計な事を考えそう。バンディエルに切り替えなさい!とか偉そうに言えないじゃない。


 でも思い出って、ちょっとした切っ掛けで、こうして湧き出して来るものよ。


 だってリンゴって、子供の頃に体調を崩したら、お母さんが切ってくれたイメージが強いからよね。


「……ご飯作ろう。P◯APでも歌って気分転換!」


 普段は無理をしない。


 無理をしなきゃいけない時が、きっと有りそうだから、必要な時の為に残しておかなきゃね。






左山葉子(38歳)


レベル39


体力 261/261

魔力 169/317


魔術 イメージクリエイション、影潜り、インパクト、遠見、狙撃



属魔 バンディエル

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