第44話 イジケバンディエル
カラカラと、手で魔石を割もせずにもて遊び、私の少し後ろをバンディエルが着いてくる。
「ねえ。いつまで悄気げてるの?もう過ぎた事よ?」
「お前は、さっぱりし過ぎだ!下手をしたら、死んでもおかしくなかったんだぞ?!」
声を掛けると言い返して来るけど、バンディエルがあからさまにしょんぼりしてる。
意外と繊細なのかしら?
「そうね。でもその時はその時じゃない?人はいつか必ず死ぬわよ?ましてや、何だか状況が魔術師同士の魔石争奪戦みたいじゃない?そんな環境では、よりその確率が上がっても仕方無いわよね?もちろん、だからと言って抗いもせずに死ぬ気は無いけども、バンディエルみたいに、いつまで〜もイジケていたら恰好の的よ?」
「イジケてねぇよ!!」
「ならさっさとその魔石を砕きなさい。それが生き長らえる手段になるんじゃないの?」
「分かってるよ!!」
世話が焼けるわね…。まあ、この辺もお互い様かしら?
バンディエルが魔石を砕いたのを見て、手に入れた魔術を確認ね。
左山葉子(38歳)
レベル35
体力 249/249
魔力 271/297
魔術 イメージクリエイション、影潜り、インパクト、遠見、狙撃
属魔 バンディエル
「ほら、やっぱり遠距離に特化した魔術だった。しかも遠見があれば、さらに遠くからの狙撃が出来そうだわ。ふふふ……だから索敵の範囲外から、私の所まで届いたのね。」
それに、私の認識している銃での狙撃なら、風や様々な自然の状況に左右されるけど、ここで飛ばすのは魔術。
きっとそんな影響は一切受けずに、狙った場所へと一直線に飛ぶんでしょうね?
しかも“遠見”か………もしかして、地上にいながら高い位置で見通す事が出来るんじゃないかしら…。
「遠見。」
ものは試し、使ってみましょう。
湖畔の周りには、約10m程の樹木が森を作っている。
その天辺の更に上部で、2階建てのベランダから見下ろした感じだから、3〜4mかしら?
ざっくり15m上空から見てる様な視界が、その“遠見”で見えた視覚情報だった。
「ああ………これは周囲を確認したい時にも重宝するわ。ただ、視覚が上方で固定されてしまうから、スポッターの様に周囲の警戒をしてくれる人が欲しくなるわね。孤高のスナイパー ゴ◯ゴなら必要なかったろうけど…。とりあえず、それはバンディエルに頼めば解決かしら?」
そして、だいぶ離れた場所に、昨日、町から粘着ストーカーをしていたっぽい5人組が見えた。
………あの方角へ進んでいるなら、諦めて町へ帰る最中の様ね。
続いて、進行方向の南に視界を移す。
湖の先は、また広大な森が広がっていて、一際大きく育った木が一本、森から突き抜けて見えた。
湖の次は、あの木を目標にしよう。
そこまで見て“遠見”を解除する。
「バンディエル、湖の先にすっごく大きな木が見えたの。そこを目指して進むわ!」
「……分かった。」
「もう!いい加減にしなさい!いくら後悔しても、過去は変わらないのよ?!変えられないものを悔やんでる暇があるなら、今すべき事をしなさい!」
「うるせぇ!そんなのお前に言われなくても分かってる!!俺は今切り替え中なんだよ!!ちょっとは待ってろや!」
やだ、随時と遅いのね。ちゃんと更新してなかったのかしら?
ロード中のバンディエルを連れ、進んで行くけど魔物は出ず、まるで湖畔を散策している様な雰囲気。
どんな世界だろうと、この長閑な感じが続いてくれれば、とってもいいのに…。
それに、やっとイジイジバンディエルも復活して来た様子だ。う〜〜ん。バンディエルにも何か魔石摂取以外に気分転換になる事はないのかしら?
「ねえ、バンディエル。あなたは何か趣味とか無いの?ちなみに私の趣味はねぇ、買い物をと読書と音楽を聴くことと…ユーチューブ配信を見るのも好きね。あとは、何と言っても美味しい物を食べる事よ!」
「趣味だぁ?!んなもん魔石収集以外にねぇよ!それにお前の趣味なんて聞いてねぇ!ゆー何とかって意味も分かんねぇ例を上げんなボケ!」
さっき色々言った事を根に持ってるのかしら?魔石の摂取で大きくなっても、中身はまだお子様なのね。
それにしても魔石収集以外無いとか寂しいわ……。
「それなら興味を惹かれる事や物は?」
「……………得になし。以上だ!これ以上聞いてくんな!」
えーー!気分転換出来る事を一緒に探そうと思ったのに!
……しょうが無いわね。また時期を見て改めて聞いてみましょうか。
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