第35話 バンディエルに報告
「バンディエル!扉を見付けたから呼んだんだけど、もう大丈夫?休憩足りた?」
「おう!もう十分だ!んで、扉って………………は?何だよこれは?!」
「え?ダンジョンが意地悪く扉を隠していたから、手前にあった壁を壊しておいたのよ?」
壁の残骸を前に、バンディエルが無言で立ち尽くしていた。
どうしたの?壁を壊すのは待った方が良かったのかしら?
「ここに来る前にね、岩の人形みたいな魔物が出たのよ。ソイツ等を倒す要領で壊せたから……行き止まりで他に道も無かったし……。」
「……ゴーレムまで出たのかよ…………。」
呆然と瓦礫を見つめるバンディエルは、そう言って黙ってしまった。
ふーん。ごーれむ………え?まさかレゴブロックみたいにバラバラになる物だったのかしら?
壁も?遊べるおもちゃを私は壊しちゃったの?
バンディエルも男の子だから、図体は可愛くなくなったけどレゴで遊びたかったのかも……悪い事したわ。
「……ごめんなさい。みんな壊しちゃったわ。他に使い道があるとは知らなくて…。」
「いや、壊すのは別に良いけどよ……まさかの力任せかよって唖然としてただけ。」
あら?やっぱり壊して平気だったのね。そうよね…継ぎ目の様な接続部分も無かったもの。良かった。
「お前、この残りの壁に魔力を流してみろよ。」
「魔力を流す?」
「魔術を使う要領で魔力を通すんだ。」
「魔術を使うみたいにね……分かったわ、やってみるわね。」
端っこに残っていた壁に触れ、魔力を通してみると、瓦礫も含めた壁の全てが、アッという間に消え去ってしまった………。待って!どう言う事なの?!
「まあ、今度こういった行き止まりにブチ当たったら、先ずは壁を鑑定しろ。それでも無かったら、床と天井の確認だな。」
「………鑑定したら何と出たの?」
「“隠蔽の壁:魔力を流せば消せる”と、出たぞ?」
壁は壊す為にあるのよ!!
………ああ、負け惜しみ。何て無駄な魔力と労力を消費したのかしら。知っていたらやらなかったわ…。
いや、前向きに考えよう!リポップに続きまた1つ学んだわね。先ずは鑑定で確認。それから対処。
ええ、分かりましたよ。次は見てなさい!
「それにゴーレムも倒したんだろ?どのくらい湧いたんだ?」
「そうなの、聞いてよ!もう、通路を塞ぐ様にたくさん詰まってたのよ?!邪魔で進めなかったから、粉砕して魔石に返してやったわ!」
「は?」
「あ!しかもその前にはね、水まんじゅうが一杯つまっだ小部屋もあったのよ?!全部倒した後に魔石を数えたら468個!信じられる?!さっきの壁をと言い、ダンジョンって本当に意地の悪いの造りをしてるのね!」
「…………468個?」
「でもね、水まんじゅうの詰まった部屋にはまた宝箱があったのよ!そっちはちゃんと調べたわ!そしたら、火矢の罠がついてる宝箱だったの!討伐のご褒美なら、すんなり渡して欲しいわよね?」
「……火矢??」
「それでね、宝箱から出て来たマントがこれなんだけど、素敵じゃない?私、30レベルも超えたから、街に行って身の回りの物を買いたいの!!」
バンディエルに一通り報告したけど、あとは無いわのね?…うん、大丈夫だわ。
私の話を聞き終えたバンディエルは、何故かその場で頭を押さえて坐り込んでしまった。
え?調子が悪いのかしら?!
「た、大丈夫?バンディエル!具合悪いならもっと休んでいいのよ?!あの扉だけどうしたらいいか、助言を貰えると助かるんだけど…。」
「……頭は痛ぇが、具合は悪くないから大丈夫だ。これは、お前の行動に頭痛がしただけ。」
「なんでよ!!」
「まあ、リポップも知らなかったヤツに言ってもしょうがねぇか…。」
居住まいを正してバンディエルが話を始めた。
ええ…何を言われるのかしら…。不安だわ。
「まずは、お前の言ってる“みずまんじゅう”って、ここでは“スライム”と呼ばれている。」
「そうなのね……私の知っている“スライム”は、もっと不定形なやつを言ってたのよ。」
「で、そのスライムが詰まってた部屋は“モンスターハウス”と呼ばれている。お前も見た通り、大量の魔物が配置された部屋の事だ。」
「あれは多過ぎると思うの!そのモンスターハウスって、何時もあんなに入ってるの?」
そう聞き返すと、バンディエルは首を横に振って否定した。
「いくら何でも多過ぎる。通路にいたゴーレムも然りだ。もしかすると、このダンジョンは長年入るヤツがいなかったのかもしれないな。それで、魔物が通常より増えて、溢れ返る直前なのかもしれない。」
「溢れ返る?」
「ダンジョンってのは、適宜に魔物の間引きをしないと、魔物が外に溢れるんだよ。その予兆が魔物の異常増加だ。ただ………今回はお前が結構倒したみたいだから、暫くは落ち着くかもな?」
「そんなの放置したら危ないじゃない!何で国は対策をしないの?!」
水際対策や防災意識がここには無いのかしら?!もし、あんなに沢山の魔物が出てしまったら、森林破壊されてしまうわよ?!ダンジョンの魔物は食べられないのばかりなんだから、外の魔物がいなくなったら食糧危機にも発展しかねないじゃない!!
「あ〜〜憤ってる所を悪いが、ダンジョンがいくつあると思ってるんだよ。それこそ未発見も含めれば限りがないぞ?だから、攻略出来るダンジョンは最後まで攻略する。そうすれば、そのダンジョンはただの洞窟に戻るんだよ。」
「なら、頑張りましょう!その扉の先にはまだ続きがあるんでしょう?」
「いや…お前は今何レベルよ?勇ましいのは勝手だが、無謀と履き違えるなよ?」
左山葉子(38歳)
レベル32
体力 240/240
魔力 113/282
魔術 イメージクリエイション
属魔 バンディエル
「……32レベルです。」
「話になんねぇよ。さっきのグロスイーターミミックのレベルを見ただろ?下手をすればこの先にいるのが最後を守るヤツかもしれない。そうしたら、ダンジョンの餌になってサヨナラだ。ここは進まず、さっきお前が言っていた様に、ダンジョンを出て街にいこう。そこで情報収集して欲しい物を買えばいい。魔物の皮や牙を売ればそれなりの金にはなんだろ。」
うう…。危険と知ってて放置するとか、凄く気が咎めるんですけど?!
でも、確かに今の私ではどうする事も出来ない…。
「ねえ、バンディエル!街に行ってその報告をしたら、そこの役人の人が対処してくれないかしら?」
「アホぅ。何で俺が街に行く基準を30レベルにしたと思ってんだよ?!街の住人や役人のレベルの平均がだいたい20レベルなんだよ。10レベルも差があれば死ぬ事はないと踏んで、街へ行く許可をしたんだ。そこへお前が迂闊な報告をしようもんなら、ヤツ等お前にその対処をさせようとするぞ?」
そんな……。ならこのまま放置しかないのかしら。
もし溢れたら街にいる人達はどうなるの?ミエルの村の様な簡素な造りだったら、籠城も出来ずに潰されてしまうわ。
「まあ、その辺はお前が心配することじゃねぇよ。街のヤツ等の方が余っ程対応慣れしてるし、ある程度の街には防壁がしっかり建造されてるからよ。」
「え?そうなの?」
「当たり前だろ?魔物の溢れを経験してないのは、小せえガキぐらいだ。それにダンジョンの魔物は1日耐えれば消えるからよ。」
「そうだったの?!」
あ、ちょっと安心したわ。ここから街までの距離が分からないけど、街に着くまで猶予があるなら、避難も出来るしね。
「分かったわ!なら、このままダンジョンを、出て街へ向かいましょう!」
「……途端に元気だな。そうだ、魔石くれ。」
「はい、どうぞ!いっぱいあったから、この箱に入れてあるの!良いでしょ?」
「え……?これって……。」
【マジックボックス:容量無限、不壊、現所有者・左山葉子】
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