第33話 殺意高めの玉手箱

「はぁぁぁぁ〜〜~!!もう信じられない!!468個もあったわ!!468個!!背中も腰もビッキビキよ!!……ああ!太腿もだわ!中腰作業無理最悪!!マッサージに行きたい!!仲鉢さん助けて!(葉子さんの通っていたマッサージ店の担当者名)」


 水まんじゅうは、間隔を空けないとくっついちゃうのよ!こんなに詰め込んで入れたのは誰なの?!


 そして、この水まんじゅう詰込み部屋の中には、また宝箱があった。これは、私の労力に見合う物が入っていると信じているわよ?!


 それなのに、調べたら『宝箱(罠有り:火矢)』って表示が出た……。

 

 今回はミミックでは無かったけど、ダンジョンって宝箱を置いてもタダでは渡さないぞ!って意地の悪い造りなのね?!良ーーく分かったわ!!


 でも火矢だったら、開口の反対側から開ければ問題無いでしょ?簡単、簡単〜!


「………嘘でしょ?!玉手箱タイプなの?!殺意が高くない?!」


 片開きタイプの蓋だったら良かったのに、蓋を持ち上げて開けさせるなんて酷いじゃない!!

 しかも、蓋にも深さが付いていて、片方へ傾けながら開く事も出来なさそう。


「絶対に取ってやるからね!!ちょっとそこで待ってなさい!!」


 先ずは、まな板代わりの石板を宝箱の乗ってる台座の上に立てて、自分が立つ側をカバー。

 次に、途中の川で作った釣り針に鹿の皮の紐をつけ、箱の蓋2か所に引っ掛ける。


「仕上げに、初の防衛魔術ね。そんな大層な物はいらないけど、警察の人が使ってる様な防御盾をイメージしよう。」


 魔術展開よし!石板位置よし!さあ、オープン!!


 宝箱改め、火矢付き玉手箱の蓋を真上に持ち上げると、私の動体視力では到底追うことの出来ない速さで射出された火矢が、一気に四方八方へと飛び出した。


 え?………これ、本気で殺すタイプのやつ。しかも周囲巻き込みますよね……。


 壁や石板に刺さった矢を数えると、全部で12本。

 一面から3本ずつ火矢が発射され、しかもそれぞれの矢にしっかり角度を付けて扇状に拡がる様に調整されていた。


 悪意がてんこ盛り。…………お代わりはいらないわよ?!本当に来ないでね!!


 そして鹿皮の紐を引っ張って蓋を外し、魔術の防御盾を維持したまま玉手箱の中をソッと覗いた。


「??何の生地だろう…。手に取るのは調べてからにしよう。」


【マジックマント:(基本性能)自動温度調整、自動補修、隠蔽、防御力アップ、(追加性能)魔力を流すと浮遊可能】


「え?!パー◯ン?!あ、違うわ…浮遊か……。飛べる訳じゃなかった。」


 高い所にある木の実を採ったり、足場の悪い所を浮かんで通ったり出来るのかしら?


 それと、そのまま残っていた玉手箱。入れ物として丁度いいけど……蓋を閉める度に火矢の罠が復活したりは………しなかった!台座からも取れるし、これも頂きます!


「じゃあ“リポップ”される前に、この部屋を出ましょうか。他に取り零しは………無いわね!」


 水まんじゅうの部屋を出て、先へと進む道に戻ってから、さっき手に入れた『マジックマント』を羽織る。


 色は薄いグレーで、落ち着いた雰囲気。手に取った時も思ったけど、羽織っても驚きの軽さだわ。

 それに両腕の所にはドレープが付いていて、動き易くフワッと仕上がっていた。


「……素敵なマントね。それに旅人感もアップした気がするわ!防御力もあるって事だし、ユニ◯ロパジャマのみより安心!」


 ダンジョン内の明るさが変わった訳ではないけど、気持ちが上向くと違って見える。


 それに仲鉢さんのマッサージは受けられないけど、魔術で回復したら肉体疲労も無くなったし!


「さあ、進むわよ!バンディエルが起きた時に『全然進んでねーじゃん!』とか言われたくないしね!」


 このまま行ける所でまで進んで、バンディエルの休憩が終わった時にまた相談をしよう。


 私では、このダンジョンを最後まで行くことは出来ない。

 折り返す目安は、バンディエルの方が的確な判断が出来ると思うの。


「ふふっ。中はまだユニク◯パジャマだけど、これなら街へ行っても変に浮いたりしないんじゃないかしら?魔物の皮とか要らない物を売って、お金に替えたらお買い物がしたいわ!」


 レベルは目標に到達した。

 でも、あまり浮かれ過ぎると、また怒られそうだから自重しなきゃね。

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