第31話 思惑と夢
「でも良かったな?他に誰もいなくて。」
「え?」
「ダンジョンなんて誰でも入れるんだから、他の人間がいてもおかしくないぞ?」
「え〜〜〜?!それじゃ休めないわ!他に人がいたら絶対に無理!……じゃあ、もしかすると後からここに入って来る人がいる可能性がまだ残ってるのね?」
「そうだな。誰でもダンジョン内ではセーフティーエリアを目指す。エリア内での腹の探り合いは、人間同士の問題だしよ。」
既に2度も遭遇した人達に襲撃された経験が、私を人間不信にさせていた。
それに、こちらはバンディエルがいるとは言え、実質一人だし。
ああ、迂闊!!さっき
しかも、ダンジョン内ではいつもの棺ベッドが造れないと言われて、愕然としたのもつい今しがたよ!
「とりあえず、俺が見てるから休め。この先を進むにしても、途中でまともに動けなくなっちまったら全て水の泡だ。」
「バンディエルは休まなくても平気なの?」
「俺は後で召喚を戻してもらえば大丈夫だ。流石に召喚中は活動している状態になるからな。ただ、疲労はお前程ではない。」
「そうなのね…。ありがとう!なら、先に休ませて貰うわ。時間になったら起こしてね?」
「おう。」
バンディエルの言葉に甘える事にして、先に休ませてもらおう。
そして、収納から寝具代わりの毛皮を出して横になると、あっという間に意識が無くなって行った…。
「……………順調に育ってんな。早く俺に自由をくれよ?バカ女…。」
◇◇◇◇◇
「……いっ!」
ああ……。お隣のサラリーマンが出勤用意を始めたのかしら……。相変わらずうるさいわ…。
でも、毎朝毎朝、自己肯定の言葉を口にして自分のテンションを上げて行かないと務まらない様な会社って相当マズイわよ?微ブラックな会社務めの私から見てもマズく感じるわ。
「おいっ!起きろ!」
“俺は大丈夫!俺は大丈夫!俺は出来る!俺は出来る!立て!立ち上がれ!”って、既にコーナーの椅子に腰を落として、真っ白になってる人に掛ける言葉よ?
それを聞いてたら可哀想になって、管理会社にクレーム入れる気も削がれたのよね…。
「起きろってんだろ!!」
そうしたらある朝、その言葉も聞こえなくなって、玄関ドアの開く音だけが聞こえたのよ。
他人事だけど、流石に心配になったわ。
マンションのエントランスを出て、会社に向う途中、そのお隣さんと私とは反対側で接している男性入居者が、2人で座って話をしているのを見掛けた。
慰めてあげているのかしら?
頑張らなくて良いから、自分を守ってあげてね。
それから何度か2人が楽しげに出掛けている姿を見掛けた。あの自己肯定の声はもう聞えないけど、元気ならいいわ。
2人の距離感を見て、ちょっと残念に思ったけどね。
……素敵な人だったのにのな。性別の不一致では致し方ない。
「い・い・加・減・に!起きろやクソ女!!!」
「はっ!!おはようございます!!」
「テメェは寝起きも悪いのかぁ〜〜?!とっくに朝だ!何が“起こしてね”だ!!全然!起きやしねぇ!」
「ごめんなさい!!思ったより疲れてたみたい!」
何か夢を見てた気がするけど……。
とりあえず先にバンディエルと交代しなきゃね!
「本当にごめんなさい!ちゃんと起きたわ。バンディエルは戻って休んで!」
「進んでもいいが、昨日言った扉があったら呼べよ?!絶対に勝手に入るなよ!!絶対だからな!!」
「大丈夫!扉があったらすぐにバンディエルを呼ぶから!」
バンディエルの召喚を戻して、泉の水を頂き1杯飲む。
顔は魔術の水で洗おう。作り置きの食べ物で朝ごはんを済ませ、さあ!気合入れて行くわよ!
昨日と同じく無理せず進もう。それにもうすぐ30レベルになるわ。
1つの目の目標達成まであと少し!
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