第30話 セーフティーエリア

 あれから、分かれ道のもう一方を進んでいる。

 蝙蝠に続いて、最初の洞窟でも見掛けた蜘蛛が続々と姿を現した。次にムカデかしら?


 正直な話、魔物って私の知っている物より数倍は大きい。初めてムカデの魔物が出現した時は、もちろん実際に見たことはないけれど、余りに大きくて妖怪大百足ようかいおおむかでかと思ったわ。


 あの大きなムカデ…目測で4mはあったわよね?

 とにかく、あんなのに噛まれたら一口で食い千切られそうだし、尻尾?の先端には洋風甲冑が手にしていそうな、ランスみたいに鋭利な棘を持っていた。

 

 刺されたら、間違いなく貫通する長さ。しかも、バンディエルに聞いたら毒を持っているって!


「森の魔物と違って、ダンジョン中の魔物は全く可愛げが無いわね。せめて毛でも生えてればいいのに。」

「さっきの蜘蛛には生えてたじゃねぇか。ちょびっと。」

「う〜〜ん。そう言う毛じゃなくて、触るとモコモコ手触りの良いのがいいのよ。」

「……なら、アレでいいじゃねぇか?」


 そう言われてバンディエルの指した方向を見ると、たしかに毛の生えた四足歩行のウォンバットみたいな魔物がいた。


 ちょっと毛が硬そう……。それにげっ歯類じゃない方が良いわね。



ビッグラット


レベル13


体力 121/121

魔力 35/35


特技 噛みつき



「ネズミだわ。疫病を持ってるかもしれないから、アレには触りたくない。」

「なら、とっとと倒せば良いだろ。」

「そうね。……えい!」


 魔力切れにならない様に、投石で倒せそうな敵は未だに石を投げて倒してる。

 出来ればもう少し近代的な武器が欲しいけど、何であっても、私自身使った事が無いから、あっても使いこなせるかが怪しいのよ。


 それに魔物にはあまり近くには行きたくないし。


「ねえ、バンディエル。ダンジョンって終着点はあるの?」


 後から続いて出て来た大ネズミに、追加の投石をしながらそう聞いてみた。あまり奥まで行くと、戻るのが大変そうなんだもの。 


「もちろん有るぞ。但し、そのダンジョンの頂点に立つ魔物がそこにはいる。さっきのグロスイーターミミックコンテナミミックよりも強い魔物が待ってるからな。」

「それじゃあ相手にならないわね………私が。」

「今のままじゃそうだな。」


 結果、5匹のネズミを討伐して、残された魔石を拾った。幸い、左側の道も今の所はこれ以上の分かれ道が無く、時折小部屋の様な空間と繋がっていて、そこに魔物が溜まっているくらい。


 通って来た道は、ダンジョン内もちゃんと地図に載るから迷う事はないけれど、だいぶ奥まで来たからそろそろ休みたいのよね……。


「あら?水の音がするわ……。」

「よし!やっと着いたな!」

「え??どこに着いたの?」

「セーフティーエリアだよ!」


 他の通って来た道より、その場所は全体がホワンと明るく、壁面近くに泉の様な湧水地が澄んだ水を湛えていた。


 入った瞬間、身体が少し軽くなったわ。不思議な空間ね。


「ここなら休んでも大丈夫だぞ。」

「良かったわ!正直、疲れていたから休みたかったの!」


 泉に近付いて中を覗くと、滾々と湧き出る湧水で、水が絶え間なく流動していた。



【セーフティーエリアの泉 疲れをほんの少し軽減出来る水が湧き出る泉。量を飲んでも効果は変わらない。】



「バンディエル!ここの泉の水!飲むと疲れをが少し取れるみたいよ!」

「なら、飲んで少し休めよ。あ、貯まった魔石を出してくれ!」


 泉の近くに腰掛け、木のカップ……と言うかボールを出して水を掬う。

 ゆっくり一口飲むと、冷たい水が身体を通って行くのが分かる。

 うわ〜…美味しい!◯◯の名水って名前が付いてもおかしくないわぁ…。


 バンディエルも魔石を潰してニヤニヤしてる。

 良く分からないけど、喜んでいるのだけは分かるわ。


 これがダンジョンに入ってから、初めての休憩だった。

 ほんと、ハードで疲れたわ〜〜。



左山葉子(38歳)


レベル26


体力 222/222

魔力 145/252


魔術 イメージクリエイション



属魔 バンディエル

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