第11話 現状の確認 不穏な社会だ…と?

彼女からは、一般的な基礎知識を答えられる範囲で仕入れさせてもらった。


国名→キリエス

地名→ガルバ

ミエルの住んでいる村→ルース

クソ領主→オストラン

通貨→ディス(1ディスで小鉄一枚、10ディスで大鉄一枚=小銀一枚、後は同様に金まであるらしい。)


“魔法”と言う呼び名は無く、“術”とそれを扱える“術者”がおり、使える人は、ほぼ国に勤めているらしい。

私みたいな野良は珍しいのね。


自分勝手に聞きたい事を聞いていた私に、ミエルはおずおずと逆に聞いても良いか?と断りを入れてきた。


「ヨーコさ…まは、術者なんですか?」


あれ?様?何で変えたのかな?

術者って偉いの?


「様も敬語もいらないよ〜。で、ミエルの言ってる術っぽいのが使えるから、私も術者なのかな?他の術者を知らないから正しいか自分でも判らないのよ。」

「だったら教会で調べてもらえば判るよ!私達も7歳の時に調べてもらったの。」

「教会ね……。とりあえず、術は使えるから調べるのは大丈夫。ちなみに調べた結果、術が使える子供がいた場合はどうなるの?」

「国の訓練場に行けるの。私の幼馴染が術が使えるのが分かったから、訓練場に行ったんだよ!部屋が一人づつ用意されてて、毎日ご飯が3回も出るって聞いて、とっても羨ましかったの〜。」


何だか子供を餌で釣ってる様にも聞こえるけど…。

それによっては、術者である事を伏せた方が良さそうね。


「そう…。それは凄いね。たまには幼馴染は帰って来るの?」

「グインのお母さんに聞いたら、術の訓練があるから戻って来れないって言ってた。術者になったら貴族と同じで偉くなるから、もう会えないのかな…?」


う〜ん。やっぱりキナ臭いなんてもんじゃないな。

歩きながら聞いた話しは、どれも好転を望める内容ではなかった。


まず、奴隷・強要された隷属関係・貴族制度がある時点で、時代または世界が違う。


で、術者・術がある時点で、世界が違うのは既に確定済。


しかも、服装、食事、通貨の製造技術からして、この世界の発展度合いは、日本で例えるなら江戸時代?それより少し前?くらいかしら?


三人組から頂いた袋の中に入っていたコインを見ながら、見通しが付かず暗くなってしまった。

しかも三人組もミエルも顔立ちが西洋風。

和テイストが全く感じられない。


…と言いう事は、私は顔立ちからして、周りから浮きまくるだろう。

あの三人組の行動から見ても、同じ人同士と言うより、人(男)vs獲物(女)の構図だったしな。

しかも容赦なく矢を放って来たし(怒)!


やりたい放題の領主や貴族がいるって事は、階級社会あるあるの封建的な制度や、現代人からしたら理不尽な事柄も、当たり前に罷り通っていると思った方が良さそうだ。


はぁ〜当てが外れたな…。

人と合流出来れば、帰れるかもと思ったけど、見込み無し……。


馴染めなさそうな社会だけど、暮らして行く上で必要な物を手に入れる手段は得たいので、最低限の接触で済む方法を考えないとなぁ。


「ミエル〜。ルース村迄はどのくらいで着きそう?」

「……多分、日暮れ前には着けると思うの……。」

「そっか。じゃあ、頑張って歩こう!村に着く少し前になったら教えてね!」

「はいっ!」


渓流の側から少し逸れ、森の中を二人で歩いて行く。

川からあまり離れない所を見ると、彼女の村は川を生活でも使っている気がする。やっぱり水辺には人も獣もいると……。


途中で猪らしき獣に気付き、討伐しようか迷った。距離があったのと、私がミエルに術を見せたくなかったので、今回は見合わせた。


さよなら。私のジビエ……また来てね。

待ってるからね!

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