第7話 人里求めて 森からの脱出も大変

……。多分、朝。


疲れからか、予想以上にしっかり寝た。

何事もなく朝を迎えられて、本当に良かった。

スモークの火は、微かに残る埋火のみになっている。


ウサギさんの毛皮を外す。

皮面の乾燥も出来ており、これなら使えそうだ。

毛皮は、手足を結んで手さげにする。


スモーク肉は出来にムラがあったので、仕上げに魔法で乾燥をしっかり掛けてから一纏めにした。


目標、今日は進む。

無理だったら引き返す。


早速、洞窟から出て辺りを伺う。

やだ…。やっぱり昨日使った血抜き場所が掘り返されてる……。


現場からは以上です。

こんな森だもん、いるよね!夜行性動物。

朝ご飯などと悠長になれず、現場と反対方向へ歩き出す。


歩きながら、大きな目印になりそうな木にマークを付ける。

簡単な矢印で、どちらから歩いて来たのか、方向を見失った時の為に。


昨夜作ったスモーク肉を齧りながら歩く。

食べ終わったら、また周囲に気を配りつつ歩く。


でも、やっぱり「ながら」は駄目だな。

一度、肉を齧っている最中に蜘蛛とニアミスしてしまった。


肉を口にしたまま投擲し、何とか危機は免れた。

そして、蜘蛛は屍を晒し、ガラス玉に変わる事はなかった。


多分、探せば心臓付近にあると思う。

でも、それだけの為に手を付けたいとは思わなかったので、放置確定です。


蜘蛛は食べれないし。

食用可だったとしても食べないし!


森の果ても分からねまま歩き、太陽が頂点から西に傾き始めた。焦りもあるが、慎重さを忘れない様に進み続ける。


しばらくすると木がまばらになり始めた。

当たる日差しも増え、風が強く吹く。


「抜けた!やったー…………ぁあ?」


森は抜けた。きっちり抜け出した。

抜けた先には、見渡す限りの大草原が広がっていた。


遥か先に木が1本見える。

見渡せるのに、それ以外何もない。

小さな家もない。こんな大草原なのに!


ダメだ…少し休憩。

大きな木を背に、風そよぐ草原を見ながら肉を齧って水を飲む。

帰る場所があるなら、悪くないロケーションだ。

映えそうだしね。


時折、草の陰に動く物がいる。

耳が丸見えだね。ウサギさん。

水まんじゅうもいるね。元気に跳ねて。


幸いにも、洞窟や森で遭遇した個体よりだいぶ小さくサイズダウンしている感じ。

私は、昨日倒したウサギさんの角を手に、魔法を唱える。


「2mm研磨して平らになれ!」

「鋭利になれ!」


切れ味はともかく、刺す以外も出来る様に角を加工した。

ここでは投擲には不向きだったから。


弾数制限があるのに投擲したら、膝下まで繁った草に直ぐ飲まれてしまう。

運良く拾い直せても、時間を無駄にするのが目に見えるわ。


「はぁ〜〜〜行くか。」


とりあえず、目印の木に向けて歩きだす。

角剣を右手に草を払いつつ、前進!


「………歩こう〜歩こう〜わ◯しは元気〜?歩くのどちらかといえば好きじゃない〜でもドン◯ン行こう〜♪」


景気付けに歌ってみたけど、あまりテンション上がらなかった。

あ、草と一緒に水まんじゅう切ったぽい。


またビシャったわ。

彼らだけは消え方が同じなんだな〜。

玉子からビー玉にサイズダウンしたガラス玉を拾い、また進む。


ウサギさんも向かって来る以上は倒します。

カプ◯コ角を刺そうと突進してくるウサギさん。


動きが直線的だから苦戦はしないけど、小型犬サイズのウサギさんは可愛らしく、その角で刺そうとしなければ、フレンドになりたかったよ。


私にはムツゴ◯ウさんの資質は無いのか…。

でも他の動物ならいけるかもしれないので、検証は続行しよう。

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