第5話 ヤケクソからの魔法発動
先ずはこのウサギを何とかしよう。
確かウサギ肉は食用可能だったはず。
毛皮もこれだけ大きければ、何かしら使い道がありそうだし、このツノは武器代わりにも出来るはずだ!
そして、ウサギは洞窟の中に居た蜘蛛と違い、そのままの姿を留めていた。
ウロウロと、刃物にの代わりに成りそうな物を探す。
…と、洞窟の穴の上の方に黒っぽい石が転がっているのを見つけた。もしかしたら黒曜石かもしれない!
石が割れる様に互いに打ち付けて行くと、小指サイズの鋭利な欠片を作る事が出来た。
洞窟から少し離れた場所に落ちていた木で穴を掘り、そこで先ほど捕ったウサギの首に黒曜石の欠片を押し当てる様にして切りつける。
皮が切れて血が流れ出す。
まだ、死んでから時間が経っていないからか、これなら血抜きが出来そう。
足を持ち、逆さにしながら暫らく待つ。
「………いや無理でしょ?!30秒も持てないよ!血の匂いもそうだけど、重くて二の腕震える。手首いわすよっ…!」
何と言っても中型犬サイズだ。
少なく見積っても15〜20kgはあるはず。
すみません。私が浅慮でした…。
持ったままの無謀な血抜きで、腕が使えなくなっては、目も当てられない。
一旦ウサギを置き、長めの倒木3本と蔦を探して集める。
血抜き用の穴を中心に、その周りに木の支点となる穴を更に3ヶ所掘り、中央で組み合わせ、蔦で縛り固定。
そこにウサギを吊るしてまた血抜きを再開した。
既に頭部は真っ赤なスプラッタ状態だったので、目を逸らしてしまう。
血抜きの後にある次の行程に気が重くなったが、ぼんやり待っても時間の無駄なので、また周囲の探索に出かけよう。
とにかく水が欲しい。
ウサギを捌くにしても、一度は水で洗い流したい。
探査の途中、知ってしる形の葉っぱを見掛け、試しに1枚採り千切って匂いを嗅ぐ。
バジルの香りだ!
千切った断面を少しだけ舐めてみる。
青臭さはあるが、痺れはない。
そのままゴクリと飲み込む。
多分、大丈夫。多分…。
バジル(仮)は、その場所に群生していたので、数本枝ごと折って採取。
しばらきく行くと、薄い紫色の小さな花をつけた木を見つけた。
もしやローズマリー様では?!
また葉を一つ採り匂いを嗅ぎ、味を確かめる。
あぁ!この香りは正にローズマリー様(仮)に他ならない!こちらも枝ごと採取。
塩はないけど、香料になる葉の発見に気分が上がったわ〜。
あまり奥へ進んで戻れなくなったら大変なので、ある程度で戻る事にする。
戻って見ると、先ほどと同じ状態のウサギが吊るされていた。
……これ捌けるのかしら…?やった事ない素人が。
しかし、他に食料らしき物を手に入れられていない以上、タンパク質はこのウサギさんが頼みだ。
本来なら川に浸けながら血抜きが出来たら良かったけど、無いものは致し方ない。
血生臭ささにゲンナリしつつ、黒曜石の欠片を手にする。
はぁ。サバイバルが過ぎるわ…。
ホントに何なのかしら、この状況…………。
いきなりの狩猟民族転職。
そりゃあ、転職したいとは思ってたわよ?!
でも、これじゃないわ!どう考えても原始が過ぎるの!!文明はどこに行ったのよ!!!
これ、やって行けるかしら私……。
出勤初日で会社を辞めた人の気持ちが、ここに来て少し分かってしまった。
そして、ヤケクソ気味にウサギの腹に手をやり、願掛けよろしく願い事をつぶやく。
「寄生虫持ちとか病気の個体じゃありませんように!綺麗に解体出来ますように!」
よしっ!願掛け完了!
いざ解体!ヘソ?辺りから黒曜石のナイフを切り入れる。
そして、首まで一息に切った時、異変に気付く。
さっきまで血塗れだった頭が真っ白な頭に戻ってる…?!
「……どうして?」
意味の判らない事だらけなのに、更に追い打ち。
悪い変化ではないが、理解出来ない。
「常識を捨てよ!ってこと?それともココでは、これが正常なの?何で血が消えてるのよ!!」
もうさぁ、いっぱいいっぱいの人に追い打ちは本当に止めてあげて、お願いします…。
「…はぁ。だったら、私の手よ綺麗になれ!」
ヤケになってはいけないと思いつつも、落ちていた石を投げたり、葉っぱを千切ったり、ウサギのハラを掻っ捌いたりをしたので、諸々で汚れていた手を見て叫んでしまった。
除菌慣れした現代人舐めんな!!!
そんなブチ切れた感じで叫んだ瞬間、両手がフワッと光に包まれ、手が綺麗な状態になった。
……………なっちゃった。
「………わぁすごーい。魔法みたーい?!除菌シート要らずだわー??!!ちょー便利ー??!!」
もういい。もう考えるのヤメた。
きっとこれは私だって知ってるアレよ。アレ。
“ありのままの自分になる”のよね!なればいいんでしょ?!
出来るんだもの。しょーがないわ。少しも寒くないしね!
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