第4話 脱出!!…したと思ったらサバイバル?
水まんじゅうとの遭遇後、また暫らく進んで行った。
その時、ふと、微かに風が吹いた様な感じを顔に受けた。
出口かも!
これ以上の戦闘と暗闇は御免だ!
若干足早に先へ進むと、明かりらしき光が見えた!
外に出たい!
その一心で、我慢出来ず駆け出した。
風がある!緑の香りがする!
早く早くと心が急いでも足が追いつかず、途中で一度転びながら走った。
少し登り勾配になって来たのも構わず、必死に走った。
とにかく人生で一番走った。
暗闇に慣れた目に光が刺す。
眩しいけど嬉しい!
走り続け、やっと洞窟と違う地面の感触が足に伝わる。
慣れるまで、目を細めながら辺りの様子を伺う。
出られた…。
樹々が生茂る緑豊かな森がそこにはあった。
自然と涙が溢れる。
はぁと、走って乱れた息もあって、何度も深呼吸をした。
「……良かった。取り敢えずの目標達成だー。」
バンザイを兼ねた伸びをして、緊張を解く。
「出るには出れたけど……。まだまだ続くよサバイバル?って感じだな〜。」
涙が乾く前に直面する新たな試練。
大自然も現代人にとっては十分試練だ。
しかも何の装備もないどころかパジャマだし。
せめてアウトドアルックに着替えたい。
無い物強請りで、虚しい夢想を暫らく繰り広げた。
その内、心が落ち着いたのか、諦めたのかは微妙ではあるが、よしっ!と気合いを入れて動き出す。
近くの木に枯れた蔦が絡まっている。
引っ張って取ると、程良い長さとしなり具合だったので、試行錯誤しつつ篭状の入れ物を編んだ。
しかも肩掛け付き!そこに投擲用の石とガラス玉を全て入れ替える。
そうしないと私の一帳羅(パジャマ)が伸びて、その内穴が空いてしまいそうだったから。
唯一の衣類大事。
次は、飲み水と食べられそうな物探しかな。
考えながらキョロキョロしていると、緑の中に動く白い物体が見え隠れした。
その物体がヒョコっと頭を上げたのか、顔が見えた。
白ウサギだ!可愛い!
向こうも私に気付いたのか、視線が合った。
逃げちゃうかな〜?と見ていると、ピョンピョン飛んてこっちに向かって来る。
………?あれ?遠近感がおかしくなった?
やけに………デカいわ!
何食べたら中型犬を越えるサイズに育つのよ!
しかもよく見ると、額に鋭利な突起物を装備してらっしゃる。
洞窟を出て気が緩んでいた私は攻撃も出来ず、白ウサギの突撃を辛うじてで避けたが、避け切れず、パジャマにウサギの突起物が刺さってしまった。
ハッとして、抜かれる前にパジャマに刺さった突起物を右手で掴み、左手でウサギの首根っこを掴んだ。
「……どうしよう。」
ジタバタ暴れる白ウサギを手に途方に暮れる。
一帳羅には穴が空き、ウサギは、草なんか食ってられるかっ!と、肉食動物特有の鋭く生えた牙を見せて威嚇をしていた。
「…サバイバル。サバイバル。ここは弱肉強食。殺られる前に殺るしかない…。」
呪文の様に言葉を繰り返し、近くの木の側まで行き、右手に力を込め握り直すと、眼を瞑って勢いを付けウサギを木に打ち付けた。
「ギャッウ!」
…と、なんとも言えぬ声を一つ上げ、ウサギは動かなくなった。
「うぅ…。」
血の気が引いてしまい、その場にへたり座る。
ウサギはもう、完全に動かない。
右手の力を抜き、パジャマに刺さったウサギの突起物を外す。
パジャマには直径2cmの穴が空いていた。
突起物の長さは約30cm。身体に刺さっていたら間違いなく致命傷だった…。
洞窟を出たからといって、助かった訳ではなかったのに、暗闇から抜け出した開放感は、私から簡単に危機意識を削いでいた。
ここはまだ簡単に死ねる場所だ。
洞窟と違い、開放された森の中では、全方位を意識しないと直ぐに危険が迫ってくる。
危険度で言ったら、森の方が高いと改めて意識し直した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます