第3話 まだまだ洞窟 食べられない水まんじゅう

明らかに、さっきよりも活発な音に警戒しながら、恐る恐る先に進み様子を伺うと、デカ蜘蛛2匹が互いの足を絡めて争っており、噛みつかんと牽制しあっていた。


うん。これは暫く傍観だな。


2匹いっぺんに向かって来られたら嫌だし、他の蜘蛛もいないので、静かに結果を待つ。


2〜3分ほど格闘した結果、若干大きい方の蜘蛛が勝利した様で、小さい蜘蛛が動かなくなった。

よし!時は来た!我こそ漁夫!いただきます!

私は生き残った蜘蛛目掛け、狙いを定めて振りかぶった。


ここが何処かは分からない。

けど、少なくとも今置かれている状況は、弱肉強食の世界。


それなら、背後から奇襲しようと、弱っているところを追撃しようと、勝った者が正義よね?


そして残った蜘蛛は、先の戦闘で弱っていた所を私の不意打ちをまともに食らい、一撃で同じ様に屍を晒した……はず。


動かなくなった二匹の蜘蛛を視界に入れたまま、予備の石をいざ投げ……………消えたよ!また!


代わりに例の黒玉子が2個残された。


「え〜?!蜘蛛って倒すと玉子に戻る……訳ないよね…。」


とは言っても実際に蜘蛛の亡骸はなく、代わりに黒玉子が転がっている事実も変わらない。


「まぁ、虫の死骸よりかはマシかな?」


納得いかないまま、黒玉子を追加で2個拾う。

その時、白い糸束が1つ落ちているのを見つけた。


「まさかね〜蜘蛛の糸?」


ここに来てまさかの芥川?

それは地獄待った無しだから、止めて欲しいわね。


真偽のほどはともかく、糸は何かの時に使えるだろう。

しかし、蜘蛛といい、倒した後の変化といい、ここが普通の洞窟と違うのは間違いない。

まぁ、普通の洞窟を語れるほど詳しくないけど。


とにかく脱出!を目指し、また歩き出す。

またしばらく進む。

唯一助かったのは、分かれ道が無い事かな。

たまに広めの空間がある位で、迷わず進んで行ける。


「……ん?」


音は無かったが、何かが動いて視界に入った。


「……デカい水まんじゅう……?」


そこには、サッカーボール大で真ん中に入ってるあんこは少な目。

そんな見た目の水まんじゅうが鎮座していた。


フルフルフルフル揺かなきゃいいのに…。

動いてる時点で怪しすぎて近寄れないわよ!


迷わず投擲開始します。

当たりはしたが、効いているかが分からない。

しかも、飛び跳ねながら近付いて来るし!


後退しつつ投擲を続けると、偶然、あんこ部分に石が当たり、ガンッと硬質な音と共に、その水まんじゅうはベシャっとその場で潰れてしまった。


「………水まんじゅう。いや、あんな生き物?あり?…無いでしょう?」


潰れた水まんじゅうの跡には、例のガラス玉。

蜘蛛と違って薄い水色だった。


拾い上げたガラス玉をしげしげ見ていると、また視界に動く物体が。

水まんじゅう再び襲来!

もう無意識に、手にしていたガラス玉を投げた。


投げ慣れて来たせいか、勢いとコントロールが良くなった気がする。


「一撃必殺だよ!」


一発で倒せて気を良くしました、私。ガッツポーズ!


戦果のガラス玉を拾おうと、のこのこ向かって行くと追加の水まんじゅうが!団子で来た!


慌てて距離を取り、石を拾いつつ、手持ちを投げ切った所で、水まんじゅう達も全て倒せたのか、お代わりが来なくなった。


「うゎ〜。6匹もいたのか…。」


素早く投げた石とガラス玉を拾う。

ポケットがジャラジャラになってしまうが、他に対抗する手段も無いので、やむ無し。


「なんかこのまま続いたら、右肩痛めるとか有り得そうでヤバい。今時どこの高校球児よ。」


でも進まない選択肢は無いので、ジャラジャラさせながら歩み始める。

ヤダな〜。

何だか、小銭をポケットに直接入れてる人みたいだわ。


量が増えて重いし、何か容れ物欲しいな…。

それにこのままじゃ、いつか重さでズボンが落ちる未来しか見えないわ!

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