死の淵にて
けい
第1話
「僕はお先に失礼するよ」
「やっぱり私も行く…」
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→2年前
32歳。独身。彼女いない歴=年齢のフリーター。世間一般的には「負け組」とでもいうのだろうか。コンビニでバイトをして文化的最低限度の生活とやらを送っている。
コンビニバイトに世間はどのような印象を抱くのであろうか。20xx年。いま、この国には何の比喩表現でもなく、5万と言った数のコンビニが存在する。「コンビニエンスストア」。直訳すれば「便利なお店」だろうか。しかし、そこは社会の縮図だ。
田舎の田んぼのど真ん中にある、駐車場だけがだだっ広いコンビニ。昼間に働くのは学生バイト。「社会勉強の一環だ」とまじめに働く彼らは、最低賃金にも近い安価な時給で馬車馬のようにこき使われている。
昼間のコンビニは平和なもので、現れる「お客様」はせいぜいトラックドライバーや、近所の人たちくらい。彼らは、毎日のように顔をだす。決まって同じようなものを買っていく。どこのお店でも同じようなものだろう。彼らのおかげでこのお店は成り立っているといえるだろう。
これが俺の働く夜になると事情は異なる。害虫が夜の蛍光灯の光に惹かれるように「お客様」はどこからともなく集まってくる。ワンオペのコンビニ前はヤンキーのたまり場である。百害あって一利なし、いや売り上げは確かにある。百害を受けるのは彼らの散らかしたごみを片付ける俺くらいだ。鳥の鳴き声がうるさい朝を迎える前に彼らは帰っていく。まるで吸血鬼のように。早番に引き継ぎをして、コンビニを出ると長い夜は明け始めていた。
一日の始まり。俺にとっては一日の終わり掛け。昼夜は完全に逆転してしまった。
いつものように自転車を走らせる。
町に唯一と思える信号に止められる。ついていないなと思った瞬間、頭に強い衝撃が走った。
次の瞬間、俺は意識を手放していた
死の淵にて けい @keiyoutubejp
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