LV-10:テセラの塔(前編)

 武器屋、防具屋が開店する時間に集合し、俺たちは最終装備を調えた。


 軽く食事を取った後、今日の目的地テセラの塔へ向かう。今日も快晴だ。少し強い風も心地良い。


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◆インディ(魔法使い)LV-42

右手・プラチナソード

左手・なし

防具・ガッテラーレの鎧

アクセ・守りの指輪

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◆ティシリィ(戦士)LV-36

右手・ホーネットソード

左手・キラーソード

防具・ガッテラーレの鎧

アクセ・守りのブレスレット/雨の恵

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◆ナイリ(賢者)LV-28

右手・キラーソード

左手・ガッテラーレの盾

防具・ガッテラーレの鎧

アクセ・守りのバングル/雨の恵

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◆エクラウス(僧侶)LV-26

右手・魔道士の杖

左手・ガッテラーレの盾

防具・ガッテラーレの鎧

アクセ・守りのブレスレット

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 俺たちは話し合って、現時点でベストだと思われる装備を調えた。ちなみに、俺のプラチナソードはティシリィからのお下がりだ。


 今日のファーストコンタクトは、見慣れてしまったコンドラたち3体。いつものように、ティシリィが果敢に前へ出る。


「ほら、届けよ! 全員くたばれ!」


 ティシリィは新しく手に入れた、ホーネットソードを斜め上方向に、鋭く振るった。剣先から、鋭い針がいくつも飛び出し、コンドラ全てにダメージを与えていく。


「くそっ、一振りで全滅は無理か!」


 コンドラたちのHPは僅かに残っていた。だが、かなり役に立つ武器と言っていいだろう。俺も装備したかったが、ホーネットソードに関しては戦士以外は使うことが出来ない。


「消し飛べ! ウィンディス!」


 残りはエクラウスさんの風魔法で掃討した。バトルを重ねる内、いかにMPの無駄遣いをせずに全滅させられるか、全員が把握出来てきている。


 俺はと言えば、昨日やっと全体攻撃の魔法『メテオレイン』を覚えた。しかし、かなりのMPを消費するため今も試さずにきている。ティシリィのホーネットソード、俺がメテオレインを覚えたことで、メンバー全員が全体攻撃を使えるようになった。パーティーとしての戦力は、かなり上がったと言える。


 テセラの塔付近になったからだろうか、モンスターの出現率がグンと高くなった。モンスターの住処すみかになっているのだから、当然と言えば当然だろう。そして、幾多のバトルを乗り越え、とうとう俺たちはテセラの塔の入り口に辿り着いた。


 5階建てで石造りの塔は、旅立ちの村ルッカに入ったときから、遠目に見ることが出来た。俺はともかく、前へ進めずルッカ周辺で狩りをしていたティシリィにすると、感慨深いものがあるだろう。その円形の塔を何も言わず、皆がじっと見上げていた。


 ティシリィが右手を上げる。塔へ入っていく合図だ。


「暗くて気味悪いところですね……壁があちこち剥がれてるけど、倒れたりしないのでしょうか……」


 ナイリが言うとおり、内部は暗く、損傷が激しかった。本当にモンスターたちに乗っ取られ、何十年も住み着かれたかのように。


「うっ……!」


 背後からエクラウスさんの悲鳴が聞こえた。いつの間にか、モンスターに背後を取られていたようだ。


「汚いやつらめ!」


 ティシリィは先頭に居たにもかかわらず、デスリーパーという骸骨がむき出しになったモンスターに飛びかかった。利き手に持っていたキラーソードが残す軌跡は紫色だった。ちなみに、同じキラーソードを持っているナイリがこの刀を振っても軌跡は出ない。戦士特有のエフェクトだからだ。


「ふう……一撃で倒せたか。エクラウス、今のもダメージを受けたか?」


「そうじゃな、今の敵は強い。さっきの攻撃だけで1/4も食らってしまった。これからは後ろも気をつけんとな」


「いや、そうじゃなくて、本当の身体へのダメージだ」


「あ、ああ……そっちか。確かに、つい声に出てしまってたの。初めてコンドラに全体攻撃を受けたときくらいの痛みかな? 気にする程じゃ無い、大丈夫じゃ」


 うーん……度々襲う、イレギュラーな痛み。サポートセンターからは依然、何の連絡も無い。



 テセラの塔では今までとは違って、後方の敵にも注意しながら前に進むという、神経をすり減らす戦いとなった。モンスターも塔外のものと比べるとかなり強く、回復を繰り返しながらの戦闘が続いた。


 そして建物の突き当たりにある、2階への階段へ辿り着く。塔は5階建て。かなりの長丁場となりそうだ。


「ワシが昔やったゲームだとな、階層毎に出てくるんじゃよ、中ボス的なモンスターが」


「確かに、そんな雰囲気が漂ってるな。——皆、大丈夫だな? 回復は済んでるな?」


 ティシリィの問いかけに、俺たちは頷いた。


「エクラウスさん、後方確認はお願いします。ティシリィ、ここは俺が先頭を歩くよ。たまには代わろう」


 何か言い返されるかと思ったが、ティシリィの引き締まっていた表情が少し柔らかくなった。


 階段の1段目に足を乗せたが何も起こらない。そのまま、ゆっくりと一歩一歩足を進めた。フロア事に中ボスが出てくる事は無いのかもしれない。そのまま踊り場も通り過ぎ、あっけなく2階へ辿り着いてしまった。


「余計な心配させてしまったのう。ずっとドキドキしてたから肩が凝ったわ」


 最後尾のエクラウスさんが2階を上がりきり、少し進んだ所で地面が大きく揺れた。


「きゃあっ!」


 ナイリが声を上げる。エクラウスさんのすぐ後ろに、天井にも届きそうなトロールが姿を現した。まるで、1階への退路を防ぐように。


 普通のトロールじゃない、ダークトロール……? あの苦戦したトロールより強いはずだ。だが、俺たちもあの時の俺たちじゃ無い。


 今も単体攻撃で一番使えるのはファイラスだ。だが、この辺りまで来るとファイラス一発で倒せる敵はいない。


 紫の軌跡で初太刀を加えたティシリィの攻撃は、通常攻撃にも関わらずHPの1/4近くを削った。加えて俺のファイラス、ナイリのサンドス、エクラウスさんが放ったハイスリープのおかげで、HPは残り半分を切り、その上眠らせる事も出来た。


「ちょうどいい。試してみたかった事があるんだ、どうだ!!」


 ティシリィは、利き手である左手のキラーソード、右手のホーネットソードを同時にダークトロール目がけ振り下ろした。キラーソードからは紫色の軌跡、ホーネットソードからは白い軌跡が、弧を描いた。


「どうだった? インディ」


「初太刀のキラーソードのみの方がダメージ出てたね。単体相手にはキラーソードだけの方が……」


「インディ! 前!」


 ティシリィの攻撃で目を覚ましたダークトロールが、俺に向けて棍棒を振り上げていた。


「うあああっ!」


 まただ、また激しい痛みが俺を襲った。HPは幸いにも少し残っていた。


「大人しくおねんねしてろっ! このデカブツがっ!」


 大きく振りかぶったティシリィの攻撃はCHクリティカルヒットとなり、同時に放っていたナイリのサンドスでダークトロールは地面に倒れ込んだ。


 俺に駆け寄ってきてくれたナイリとエクラウスさんの向こう側で、ティシリィは端末に向かって大声を出していた。


「大の男が悲鳴上げるほどのダメージを受けてるんだよ! そんな不具合はありませんって言ってる場合じゃ無いだろ! 今回で何度目だと思ってんだ! しかも、他のパーティーで同じ話は全然聞かねえんだぞ。先頭走ってるからって、嫌がらせなのか!?」


 すまない、ティシリィ……本当なら、ティシリィが最初にダメージを受けたときに、俺が取るべき態度だった。


「とにかく! すぐ返事をくれ! 今、テセラの塔の2階で大事な所なんだ! 頼んだぞ!」


「サポートセンター? 答えは今までと同じだったのですか?」


「ああ……不具合は無い、強い敵には多少強い電流が流れる程度です、だとよ」


「すまないティシリィ、大げさな声を出してしまって。時間も無いことだし、このまま進もう。もし連絡が入ったら、バトル中にでも出てくれたらいい」


 ティシリィは「分かった」と言って、先へ進み出した。エクラウスさんは俺の肩を、ポンと優しく叩いてくれた。

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