LV-08:ランベルト城
今日は王様に謁見する日だ。
エクラウスさんのいびきが酷かったせいか、起きるのが遅くなってしまった。レストランに着いた時には、3人は装備を済ませて待ってくれていた。
「遅いぞインディ! 食べ終わったら登城だ、さっさと終わらせろ」
俺は慌てて朝食を流し込む。エクラウスさんとナイリは、ここでも装備を新調したようだ。一体、今までにどれくらいの費用が掛かっているのだろう。
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◆インディ(魔法使い)LV-32
右手・レイピア
左手・なし
防具・聖なる騎士の鎧
アクセ・守りの指輪
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◆ティシリィ(戦士)LV-26
右手・なし
左手・プラチナソード
防具・聖なる騎士の鎧
アクセ・守りのブレスレット/雨の恵
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◆ナイリ(賢者)LV-20
右手・キラーソード
左手・なし
防具・ガッテラーレの鎧
アクセ・守りのバングル※
(※守りの指輪と守りのブレスレットを合成したもの)
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◆エクラウス(僧侶)LV-14
右手・魔道士の杖
左手・ガッテラーレの盾
防具・ガッテラーレの鎧
アクセ・守りのブレスレット/雨の恵
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「多分、ここから北上するのはアタシたちが初めてだろうな。遠くに見えていた城が、こんなに近くなった」
「それにしても、PRムービー見たときは誰でも城に入れると思ったよね。参加者の半分……いや1/4も辿り着けないんじゃ無い? この感じじゃ」
「私的には燃えますね、こういう方が……今、最高にワクワクしています……」
ナイリの独り言に、ティシリィはギョッとした顔をしていた。
その時、昨日最後に戦ったコンドラが2体現れた。エクラウスさんとナイリが前に出る。
「ワシの魔法、試させてくれ! 風よ吹け、ウィンディス!」
「私も! サンドス
ウィンディスは風系の全体攻撃、サンドスαはサンドスが全体攻撃になったようだ。コンドラには風系魔法の相性がいいのか、大ダメージを与えた。そこにサンドスαがとどめを刺し、一瞬で2体は葬り去られた。
「おおっ! スゲーじゃん! 二人とも腕上げたな! で、
「『αの書』っていうのが売っていたのです。持っている魔法が全体魔法に変化します。どの魔法に設定するかは、戦闘中以外になりますけど」
俺は既に雑貨屋で見かけていたが、とても高額な魔法の書だった。
「なあ、インディ。もうこの4人でパーティー固定しちゃっていいんじゃないか?」
ティシリィがヒソヒソと俺に話しかけた。ちょうど俺もおなじ事を思っていた所だ。
ランベルト城には特に大きな結界が張られているらしく、近づくにつれモンスターの出現率が減ってきた。そしてとうとう、目的地であるランベルト城の全貌を目の当たりにした。
「ほう……これは立派なお城じゃ……」
俺たちは立ち止まって、しばし城を眺めていた。
ランベルト城は、ガッテラーレの北西に位置する。城の西側は海を背にし、陸地に対しては大きな城壁を備えていた。この島がアトラクションと知らず、上陸する人が居たら、本当に王が住んでいた城と思う事だろう。
大きな門の前に立っている番兵に謁見したい旨を伝えると、思いがけない質問を投げかけられた。
「お前たち、パーティー名は?」
「パ、パーティー名!? 必要なのか、それ?」
「無ければ、えーと……リーダーの名前が、ティシリィか。『ティシリィたちよ』になるが、構わんか?」
「イロエスでお願いします」
「な、なんだよナイリ、イロエスって」
「ギリシャ語で、『英雄たち』っていう意味です。ここに来る前に決めていたのです、私」
メガネの奥の、強い眼差しで言い切るナイリに誰も言い返せなかった。その場で俺たちのパーティー名はイロエスと決まり、門を抜け中へ入った。
「おおー、中も立派じゃなあ! 意地でもクリアしたいなんて言ったが、もうこれで満足かもしれん」
門から城までのアプローチだけでも、かなりの距離があった。人工の池や噴水などがあり、周りは花畑で覆われていた。俺たちはいくつかの小さな橋を渡って城の玄関へと辿り着いた。
番兵2人が大きな扉を左右から開け、俺たちは城内に招かれる。
天井は高く、きらびやかな装飾がなされていた。この建物を作るだけでも、莫大な費用が掛かったことだろう。各所のステンドグラスからは暖かい光りが漏れている。
「ほう……バチカンを思い出すのう……城と言うより、教会のような感じじゃの」
「ええ……私もおなじ事を思っていました」
バチカン市国のサン・ピエトロ大聖堂の事だろう。もちろん、俺は写真でしか見たことがない。ティシリィはと言えば、子供のようなキラキラした眼差しで天井を眺めていた。
俺たちは左右に並ぶ番兵たちの間を進み、立派な玉座に座る、王の前に辿り着いた。王の後ろには、見るからに屈強そうな従者たちが仕えている。
「よく来たな、イロエスの諸君。ご存じのように、我が国ではモンスターが溢れかえり、村人は自分たちの村から移動できない状況でいる。そこで、モンスターたちを牛耳っている、ベテルデウスという魔王を倒して貰いたい。いかがかな?」
「初めまして王様、エクラウスと申す者でございます。その討伐に際して、何かしらの武器や防具などをご用意などは頂けるのでしょうか?」
エクラウスさんは一歩前に出て膝をつき、左手を胸に当て王に問いかけた。
「ハハハ、よく言った、エクラウスとやら! もちろん、その用意はある。だが、その前にお前たちの力を試してみたい。ガッテラーレ北東に、テセラという名の塔がある。その塔も今や、モンスターの住処となっているのじゃ……最上階にはこの国に古くから伝わる、『いにしえの書』が残されたままとなっておる。どうじゃ、それを取り戻してきてはくれぬか?」
「いいだろう、引き受けた! それを持って帰ってくれば、強い武器を貰えるんだな!?」
「もちろんだ、ワシに二言は無い。……逞しい女戦士だな、名は何という?」
「ティシリィだ!」
「ティシリィだな、覚えておこう。とりあえず、軍資金だけは与えよう。この城を出た頃にはお前たちの懐も多少は潤っているであろう。……それでは、お前たちの帰りを楽しみに待っているぞ」
「期待していてくれ、王様!」
そう言うと、ティシリィは勢いよく身を翻し、城の玄関へと歩き出した。俺たちはティシリィに遅れないよう、慌てて後を追いかけた。
「さっきのエクラウスさんと、ティシリィ、最高でした! まるで映画の1シーンのようだった、痺れましたよ!」
「インディには出会って直ぐに言ったんじゃが、この島に来たからには思いっきり楽しまんとな」
そう言えばエクラウスさんは、口調までこの世界に合わせていると言っていた。
「私、ロクサス達とパーティーを組めないな、って思ったのはそういう理由もあったんです。ことある毎に、『これはCGだな』だとか、『さっきの防具屋はセリフ棒読みだな』なんて、冷めることばっかり言うんです。その点、イロエスの皆は世界観を大事にされていて、大好きです」
俺とティシリィの目が合った。「イロエスだってさ」ティシリィは小声でそう言った。
「ワシなんて白髪交じりだった髪を、真っ白に染めてきたくらいだからの。髭もこんなに伸ばしたのは初めてじゃ、ハハハ。……もしかして、ティシリィの赤い髪もそうなのか?」
「……そ、そんなワケないだろ!」
そう答えたティシリィの顔は真っ赤になっていた。どうやら図星だったようだ。
城を出て端末を確認すると、ゴールドがかなり増えていた。王様から与えて貰った軍資金だ。
とりあえず今日はテセラの塔周辺まで足を伸ばし、経験値とゴールドを少しでも増やそうという事になった。ガッテラーレで今一度、装備を見直し、テセラの塔の攻略は明日とした。
テセラの塔周辺のモンスターは、なかなかに手強かった。鳥形モンスター、コンドラの複数編成は当たり前で、トロールJRジュニアというモンスターもかなり凶暴だった。
ただ、気になった事がある。
数えるほどではあったが、身体に痛みを覚えるダメージを再び受けたことだった。
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