LV-04:トロール戦
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◆インディ(魔法使い)LV-12
右手・なし
左手・なし
防具・旅人のコート
アクセ・なし
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◆ティシリィ(戦士)LV-5
右手・なし
左手・プラチナソード
防具・聖なる騎士の鎧
アクセ・守りのブレスレット
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「ごめんね、ティシリィ……悪くない作戦だとは思ってるんだけど、ロクサスが言っている事にも一理あると思うんだ……」
「何言ってんの。本当の戦闘ならともかく、腕に電流がビリって走るくらいじゃん。性格的にもインディが後ろでHP管理とかしてくれる方が、アタシたちには合ってるよ」
ティシリィが言うように、モンスターから攻撃を受けた際には、手首に付けた端末から少量の電流が流れる。これは痛みを与えるというより、『モンスターから攻撃を受けましたよ』という通知に近い。
そうこうしているうちに、ヴァランナを出て20分ほどが経った。
モンスターは度々現れるものの、昨日のオーク以上の敵には今の所出会っていない。戦士になった事と、プラチナソードの組み合わせのおかげだろう、俺がファイラスや回復薬を使わずとも、全ての敵をティシリィが葬り去った。
何より驚いたのが、ティシリィの剣の軌跡が、光りの帯となって輝いていた事だ。ティシリィが言うには、戦士特有のエフェクトだそうだ。初めてそのエフェクトを見たティシリィは、子供のように喜んでいた。
「ところでさ……ロクサスって彼。ティシリィに気があるんじゃないの?」
「さあ、どうだろうね……奴とは往きの船で仲良くなったんだ。話をするだけなら面白い奴だしね。島に着いてからは、『パーティーを組まないか?』って誘われてたんだけど、出来ればアタシは一人でクリアしたくて。——まあ、今となっては一人でクリアなんて、無理だって事は分かったけど」
本当は一人でクリアしたかったんだ……ティシリィらしいな、と思った。
「ロクサスから、助けが必要になったら俺を頼ってくれ、なんて言われててさ。アタシは『気が向いたらな』なんて言ってたのに、再会した時にはインディと組んでるんだから。感じ悪いよね、アタシ」
「そんな事無いよ。パーティー組むキッカケなんかを知ったら、彼も分かってくれるはずだよ」
「いや、別にロクサスに分かって貰おう、なんて気持ちは全く無いんだ。ただ、気分は良くないだろうなって……」
「虹色のスライムといい、ティシリィといい、俺は横取りしてばっかりだな……」
「フッ、誰がそんな上手いこと言えと——」
そんな会話の最中、目の前にトロールが現れた。今までのモンスターに比べ、とてつもなく大きい。作り物と分かっていても恐怖を覚える。
直後、トロールが地響きを立てて、こちらに突進してきた。
地響きまで再現出来るのか……
技術力の高さへの感動と、恐怖が複雑に入り混じった。
「ティシリィ! 体当たりを食らうと大ダメージを食らうかもしれない! 出来るだけ下がって!」
「分かってる! ファイラス、使い惜しみするなよ!」
ティシリィは「おおお!!」と叫びながら、初太刀を叩き込んだ。トロールの右上にCHという文字が浮かび上がった。どうやらクリティカルヒットになったようだ。
ダメージ量を決めるのはステイタスの数字だけだと思っていたが、剣を振り下ろすスピードなどによっては、違いが出るのかもしれない。
「くっ! HPはまだ半分以上残ってるのか! ファイラス早く!」
剣を装備していない今、突き出した右の手の平からファイラスが放たれた。今後、武器を持たないことは無いだろうが、これはこれで最高に格好良かった。だが、そのファイラスをもってしても、トロールのHPはまだ1/4も残っている。今までのモンスターとは比べものにならない化け物だ。
「きゃあっ!!」
ティシリィがトロールの一撃を受けて、悲鳴を上げた。現時点での最強の防御力を備えたにも関わらず、たったの一撃でHPの半分を持って行かれた。……と言うか、悲鳴まで上げるティシリィのなりきりぶりに、俺は尊敬の念さえ覚えた。
ティシリィはトロールに二太刀目を叩き込んだが、残りの1/4を削りきれない。だが、残っているトロールのHPはごくごく僅かだ。
トロールの攻撃と、俺のファイラス、どちらが先に出せる……!? ファイラスに限らず、魔法は一度放つと次の魔法を放つまでに時間が必要だ。ティシリィはあと一撃受けると、かなりの確立で死んでしまう……
少し悩んだ末、間に合うか分からないファイラスではなく、ティシリィに回復薬を投与した。直後、トロールは棍棒を大きく振り上げ、ティシリィを殴打した。
ティシリィの身体がふらついた……!?
……まさか、さっきの悲鳴も本物だったのか!? 何かがおかしい。ゲーム上のHPも、再び瀕死の状態に追い込まれている。
俺は2度目のファイラスを放ち、炎に包まれたトロールは大きな地響きを立てて地面に倒れこんだ。
「すっ、すまない、ファイラスが間に合うかどうか自信が無かったんだ……それより、大丈夫か!?」
「い、いやそれはいい……それより、モンスターのレベルのせいなのか、ビリっていう電流のレベルじゃなかった……アタシは大丈夫、気にするな……」
どう見ても大丈夫には見えない。俺たちは来た道を戻り、ヴァランナの村へと戻った。
***
「ふう……さっきのはホントに効いた。倒れるかと思ったよ」
先ほどティシリィが受けたダメージに関して、サポートセンターに問い合わせをした。モンスターの強さによって電流の強さは多少変わるとの事だが、悲鳴を上げたりする程の電流はありえないと言う。だが、ティシリィが受けたダメージは明らかに普通では無かった。
「何か分かったらサポートセンターから連絡くれるって。一体どうなってるんだ……」
俺たちはレストランで水を飲みつつ、身体を休めていた。有り難いことに、水だけは無料で飲める。
「あらあら、もう戻ってきたのか。練ってた作戦ってのは上手く行かなかったようだな。お前たちには悪いが、俺たちは臨時パーティーでミッションをこなすとするよ」
ロクサスだった。仲間たちと外に出るようで、長剣を2本、左右の腰に下げている。
「——なんだよ、ミッションって」
「バーに告知されてたの見てなかったのか? てっきりお前たちもトロール退治に出たのかと思ってたぜ」
「トロール……? そいつならさっきやっつけてきた所だ。なあ、インディ」
ロクサスの後ろにいた仲間たちがざわついた。
「最低でも4人はいないと難しいミッションって書かれてたよな……?」
「こいつらが強いのか、トロールが弱かっただけなのか、どっちなんだ……」
「お、おい、ティシリィ。本当に2人だけで倒したのか? なら、守りの指輪を手に入れたはずだ。どうなんだ」
俺とティシリィは顔を見合わせた。そう言えば何体もモンスターを倒したが、宝箱などをドロップしたモンスターには出会ったことが無い。
「ん? ちょっと待てよ……ホントだ、端末に通知来てる! さっきはダメージ食らって、それどころじゃ無かったからな!」
ティシリィの端末を覗き込むと、守りの指輪を手に入れたというチケットが追加されていた。防具屋に行けば交換してくれるらしい。
「わ、分かった……倒したってのは信じる。それより、ダメージを食らったってどういう事だ? 敵が強くなると微電流が流れるだけじゃなくなるのか?」
「それに関しては、サポートセンターにさっき問い合わせてみたんだ。ティシリィが受けたダメージがおかしいって。でも、サポートセンターからはそんなことはありえないって返事で……」
「おかしいダメージってどのくらいだよ? ほら見ろ、下らない作戦考えるから、こんな事になるんだ!」
「うるさいな、黙ってろ! そんなダメージ受けるなんて、誰が想像出来るんだ! ……それより、さっさとトロール退治行ってきな。かなり強いとだけ忠告しておいてやるよ」
もしかして、あんな作戦を立てた事へのペナルティーだったりするのだろうか。いや、そんな事は……そんな事は無いはずだ……
ロクサスを含む6人組のパーティーは、複雑な表情のままレストランを出て行った。
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