第6話 先輩と一緒に狩り3

16階層で先輩と初討伐を終えた僕たちは反省会に入った。

勿論反省会前に、先輩に回復をかけておくのは忘れずにやっている。


さて、反省会の原因だが、僕が最初に倒しすぎたのが理由だ。


簡単に言えば12匹のゴブリンのうち僕一人で2/3に該当する8匹を倒してしまったため、僕とパーティーを組むうえでの先輩の実力値が分かりにくいと・・・

先輩自身から申し出があった。


今後深い階層に行くにあたってはこのスタンスで問題ないが、いざというときにどれだけ自分がこのパーティーの中で動けるのかというのが確認できなかったという事であった。


そこで僕は一つの提案をしてみることにした。

「それなら難易度を11階層にさらに下げて、今度は僕は本当の意味で支援魔法だけで、先輩一人で戦ってみませんか?」


「えーっと・・・???」


「僕が使う魔法は基本的にホーリーフィールドとブレスのみにして、先輩があまりに危険な状態に入りそうだと僕が判断したら、ショックを連発して敵を一度吹き飛ばすというのはどうでしょうか?」


「なるほどね~・・・・うん、それなら一度やってみたいかな?」


そして僕たちは一度転移装置の場所まで戻り今度は11階層へと転移する。

11階層で出くわしたゴブリンは4匹の集団であった。


・・・・なぜだろう・・ウルフの時と言い、各エリアにおける低階層でのエンカウント時の個体数が多い。


違和感を感じながらも、先輩と一緒にゴブリンが範囲内に入るギリギリのところまで駆け寄る。

そして範囲内に入るなり、ホーリーフィールドとブレスを使用した。


すると先輩の移動速度が一気に速くなる。

範囲魔法の使用によりゴブリンも奇襲に気づいてはいたが、それよりも先輩の移動の方が段違いに速かった。


ゴブリンたちが振り向き終わるころには既に1匹が斬られ絶命していた。

驚いた様子を見せながらも残りの3匹は武器を振り上げるが、振り下ろされる前に2匹目が倒される。

ここで残った2匹の攻撃が振り下ろされることになるが、すでに盾を構えている。

そして2匹の攻撃をどちらも盾で受け止めていた。


凄いな・・・と僕は内心で思っていた。


確かにゴブリンは初心者パーティーの最初の難関とも言えるが、同時に初心者パーティーでも対応できる範囲の敵でもある。

しかし数が増え、しかも同時に攻撃を受け止めるとなると、それ相応の腕力などが必要になる。

それを筋肉の付き方の違いなどにより男性よりも力が出にくい女性がしっかりと受け止めている。


そしてそのまま盾を押し返すようにして2匹を押し飛ばし転ばせる。

瞬時に駆け寄り1匹を下から斜め上に向けてに切り裂き、

そのまま上に上がった剣を下に振り下ろし最後の1匹を斬って戦闘はあっけなく終了した。

時間にして1分もかかっておらず、30秒を少し超えるくらいだろうか・・・



お決まりとして回復を掛けようとしたが、「一切怪我をしてない」と言われた僕は安心しつつも、ヒールの使用を中断する。


「すごいですね。いくらランクを下げているとはいえ4匹のゴブリンを秒殺ですか・・・

これなら転移装置を使って11階層に難易度を落とさなくても、そのまま徒歩移動で15階層に落とす形でも問題なく倒せたかもしれませんね」

「・・・・・・・・・・・」


「どうかしましたか?」

「本気で気づいてないの?あなたの使った味方へのバフだけど、あれで大分・・・

いえ、かなり私自身の動きが変化しているわよ?

正直って最初に一瞬で距離を詰めることができた時点で驚いてたけど、2匹の攻撃を同時に受け止めることができた時は、殺される直前の火事場の馬鹿力でも出てるのかと少し焦ったくらいよ?」


「そんなに大層な支援魔法には思えませんが・・・」

「いいえ、これは間違いなくパーティー攻略をするうえで、とてつもなく重要なバフになるわ。もちろんデバフによる弱体化もあって、押し返すことができるくらいの力の差になったというもあるのでしょうけど・・」


「またまた~おだててもこれ以上は何も出ませんよ?」

「自覚なしか・・・これはきちんと見ておかないと彼自身が危ないわね」


「???」

何かブツブツと言っているが小さな声で聞き取れない。


「それにしても・・・何か変ね・・なんというか今の戦闘だけで少し力が上がっている気がするのよね・・・・・」

「もしかして・・」


「何か心当たりでもあるの?」

「心当たりというほどの物でもないのですけど、僕の常時起動のパッシブスキルに取得経験値増加の効果を持つスキルがあるんですよ。同じパーティーに属している状態で、同じ階層にいるメンバーに限定されてしまうんですけどね。

それに加えてパーティーを組んでいるので僕も経験値を少し吸ってしまっているので、結果的な効果としては少し下がってしまうんですが・・・」


「・・・・・・・・・・」

「どうしました?」


「おだてても何も出ないんじゃなかったの?」

「それほどの物では無いですから」


「私からすればそれほどの物なのだけれど?」

「そうなんですか?前のパーティーじゃ皆当たり前みたいな雰囲気でしたけど?」


「そう・・・・武君。改めて言うけど、君の前のパーティーメンバーは大馬鹿者よ」

「ええ!?」


「理由を話しても良いと言えば良いのだけど、どうせ話しても『そんなことない』とか言いそうだから止めておくわ」


どうだろうか・・・正当な評価なら受けるのだけど、先輩の評価が過大評価すぎる気もするからな~


「それで、これからどうしますか?また16階層に一度戻って、徒歩で15階層に行ってみますか?」

「そうね・・・・・・うん。そうしましょう。

いきなり難易度を21階層に上げても危険な香りしかしないから、今日のところは高難易度であったとしても20階層までにしておきましょう」




そうして僕と先輩は一度転移装置に行き16階層へ移動。

その後徒歩移動で15階層へと向かうのだった。

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