第5話 先輩と一緒に狩り2

翌日、僕らはラウンジで待ち合わせをする。

やはり2~3日で噂が落ち着いたりなんて言う都合のいいことは起きないようだ。

みんな遠巻きに僕を見ながらヒソヒソと話しているのが見える。

そうして不快な思いをしながら待っていると百川先輩がやってくる。


「ごめん!昨日の件でクラスで発表があって遅れちゃった!」

「いえ、それは大丈夫ですが、昨日の件・・・とは?」


「あ~・・・私はクラスメイトとパーティーを組んでたのよ。だからそのパーティーメンバーが停学になったから・・・」

「なるほど・・・」


き、気まずい・・・

「そ、それじゃあ行きましょうか、先輩」

「そ、そうね」


というわけでは僕たちは早速ダンジョンに入る。

今日は昨日よりも階層を下げて16層に入った。

確かに僕は一人ならば21階層~30階層までは安定した狩りができるだろう。

しかし先輩は違う。

昨日なんとか21階層まで到達したばかりであるのだ。


それならば安全領域を確保するためにも、難易度を下げてお互いの実力を確認したほうがいい。

それに今までとはパーティーの構成も大きく違ってくるのだ。

どのような連携が取れるのかなど、しっかりと把握したほうがいいだろうとの考えあってのことだ。



先輩と一緒にダンジョンへと入る。

16層ではゴブリンが主要な敵だ。

ウルフよりはスピードは遅いが、15層にもなればそこそこの集団でいることが多く、捕まった冒険者はろくでもない未来しか待っていない。

男ならばなぶり殺しにされるし、女ならば人としての尊厳を踏みにじられた行為をされたうえで、殺される。


どちらかというと女性にとってみたほうが、危険度の高いエリアと言える。


そんなエリアだが、先輩のスタイルは片手剣に片手で持てる盾のスタイルだ。

攻撃から簡単な防御まで広くこなせるがゆえに、一桁階層においては滅多なことでもない限り危険な状態に入ることがなく、初心者にとって戦いやすいスタイルだ。


「先輩、先に説明させてもらいますが、僕は支援魔法特化型です。

この階層であればかなりの余力を残した状態での戦闘が行えますが、基本的には接近戦は当てにしないでください。」


「ええ。それはもちろんわかってるわ。魔法使いは弓使いとおなじく、中遠距離での攻撃を得意とする職業だもの。そのうえで支援特化職だものね。

ただ、回復とかは期待させてもらうわよ?」


「それはもちろんです。支援は任せてください!」


元気に返事を返すと、何かがおかしいのか少し笑っていた。

だが嫌な感じのする笑いじゃない。

なんというか、『微笑ましい』と思ってくれているような笑顔だ。


そうしてしばらく歩くと、ゴブリンの鳴き声が聞こえた。


「武君・・・」

「はい、この先に居ますね」


「どうやって対処しようか?」

「基本的には先輩には僕の護衛みたいな役割でいてほしいです。」


「というと?」

「僕は中遠距離での攻撃となるので、それで倒す戦法で行こうと思います。

ただ、攻撃されればゴブリンもこちらに向かって駆け出してきますので、

それからの防御を先輩に任せたいです。

なるべく一度に多くのゴブリンが来ないように攻撃していきますので・・」


「わかったわ。どこまでできるか分からないけど任せてちょうだい」


そこまで話してあとは無言で進む。


そしてゴブリンの集団がいた。

数は12匹。

なかなかの数だ。

4匹ずつで少し距離がある感じだ。


まずは先制攻撃だ!

確実に減らすためにマジックボルトよりも少しばかり魔力消費は多くなるが、誘導性のある攻撃を選ぶことにする。


「ホーリーアロー!!」


ホーリーアローは何本か同時に生み出せる魔法の矢だ。

今回は多少狙いが甘かったとしても全て当てられる領域として4本作り出した。


ウルフの時は既に先輩に取りついていたので、少しも外すことができないと判断して1本だけを選んだわけだが、今回はこれといって助けなくてはいけない人がいるわけでもない。

そのため4本とした。5本以上になってくるとちょっと狙いが甘くなるし、10本となると最早牽制と本命と入り混じる状態になる。

というか正直な話どれだけ敵が密集していても2~3本は外れてしまう。


かなり余裕のある状態から打ち込んだため12匹のゴブリンのうち最前面2体と、中衛1体、そして後方1体のゴブリンを正確に仕留める。


これで残りは前衛2匹、中衛3匹、後方3匹の、計8匹だ。

流石に後方にまで届く攻撃が来たことでゴブリンは侵入者である僕たちに気づいて武器を手にして駆け出してくる。


そしてゴブリンたちが駆け出して直ぐに範囲内に入ったので魔法を発動する。


「ホーリーフィールド!!」

「ブレス!!」


ホーリーフィールドは言うまでもなく、敵を弱体化させる範囲魔法だ。

つまり敵に対するデバフという事だ。


ブレスは名前だけ聞くと、まるでドラゴンとかが吐いてくる攻撃のように思えるが、聖魔導士のブレスは攻撃ではなく、味方に対するバフ支援となる。

各種ステータスの向上が期待できる。


つまりこの範囲内においては敵は弱体化し、僕と先輩は強化されるという事になる。

ちなみに先輩を助け出す際に使わなかったのは、21階層の数でのウルフであればステータス強化をしなくても、防御と敵との距離を作る魔法だけで対応できると判断したためだ。


続いて4本のホーリーアローをもう一度出し、攻撃する。

今度は前衛1匹に中衛2匹、後方1匹が狙いだ。

こちらも問題なく命中し絶命する。


これで前衛1匹、中衛1匹、後方2匹まで減少する。


しかしここでゴブリンたちが、僕の少し前にいる先輩に到達する。

だが前衛の残り1匹を問題なく倒し、わずかな間をおいて中衛の残り1匹を倒す。

問題は後方にいた残りの2匹だが、1匹の武器を盾で、1匹の武器を剣で受け止めている。


先輩とゴブリンとの距離を1匹だけでも作れば、先輩は残りの1匹の攻撃を盾で防ぎながら、剣で倒すことができる。

僕がは先輩に走って近寄り、ショックをゴブリンに向けて放つ。


少し後ろに飛ばしたのは剣で受け止めていた方だ。


理由は2つ。

1つは盾で止めていた方は、先輩の盾が少し障害物となってて十分な効果が得られないという点。

もう1つは剣で受け止めている方を吹き飛ばせば、そのまま空いた方の剣で、盾を使って受け止めているゴブリンを刺せるという事だ。


そうして剣で受け止められていた方のゴブリンは一度距離を離されて、その隙に盾で受け止められていたゴブリンは先輩の剣で刺されて絶命する。


最後にもう一度残ったゴブリン1匹が先輩を攻撃するが、こちらも盾で受け止められている隙に、剣で斬られて絶命した。



特にこれと言って特筆すべきこともないが、同時に各段危険と言えるような状態でもなく、安定した戦いで先輩との初陣は終わった。









改装設定間違えました。

15階層じゃなくて16階層ですね。

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