第11話 流血3
「フェルト様。」
「何かしら?」
声をかけてきたのが誰なのか、これは挿し絵に載っていた男だから解った。
ナノ・キルテ
将来を期待されてる剣士、この国で1番出世する男だ。
いつもアレックスといるのに、何故ここに…。
「これを…」
キルテの手にはハンカチがある。
「傷痕が残るほどではないと思いますが、早く洗って消毒してください。」
この人、私を心配してくれてるのよね。
ネロ以外で私を心配してくれる人がいるなんて、ちょっと驚きかも。
「ありがとう。でも、血は染みになって取れにくいから、貴方のハンカチを汚してしまうわ。」
シュナなら弁償出来るんでしょうけど、小説の主役達に関わるのが面倒だから断っておこう。
「女性が怪我をしているのを放ってはおけません。」
「そう、ではお借りするわ。」
この小説に初めて出てきたまともな感情の持ち主!
アレックスの側にいる剣士だもの、シュナの味方になることはないと思うけど『良い人』として覚えておこう。
てかさ、普通ならアレックスが怪我をしている私を見た時にこの対応をすべきだよね。
アレックスがどんな男でも、今の私に関係ないけど。
「後日、新しいハンカチをご自宅へ送りますので。」
「えっ!?」
「……何か問題でも?」
「いえ、別に…」
キルテって冷静なキャラのはずなのに、目が泳いでる…。
まさか、このハンカチで何かたくらんでるとか?
「やっぱり、借りるのは止めておくわ。」
「ですがっ…」
「失礼します。」
危ないところだった。
小説の主役は全員シュナを快く思ってないんだから、気を引き締めないと。
1度、小説の内容を整理しないとね。
ミネルバは召喚されているけれど、回りはまだ聖女だと気付いていない段階だから、ストーリーは始まって間もない。
うーん…
いくつか起こるシュナの悪事は、本当は別の人間にはめられたのかも…。
やってない事をやったと言われるのはムカつくけど、その犯人を捕まえるとかは面倒だからしたくない。
……額の血は止まってるし、校外に出て何か食べながら考えよう!
1度学校をサボってみたかったんだよね。
私のやりたい事って安上がり…。
転生してスローライフ?そんなもの絶対にしたくありません! リオ @oimo3takeo
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