第9話 流血
「大丈夫ですか?あっ!?フェルト様、血が出てます。」
ミネルバ…、あなたが突き飛ばしたからでしょ…。
「何が危なかったの?」
「あの男子生徒が投げたボールが当たりそうだったんです。」
まさかそれだけ?
それだけのために私を思いっきり突き飛ばしたの?
「ちょっと、そこのあなた!フェルト様に謝りなさい!!」
「……っすみません!!悪気はなかったんです!申し訳ありませんっ!!許してくださいっ!!」
「謝ってすむと思ってるの?フェルト様は流血してるのよ。」
流血はあなたのせいですけどもね。
クラス中が皆青い顔をしてる。
侯爵令嬢に怪我をさせたらそうなるだろうけどさ。
「ボールには当たってないし、あなたが謝る事はないわ。」
「フェルト様…」
「今度から気を付けてね。」
「はいっ!ありがとうございます!」
私に謝った男の子は、その場にへたりこんで涙を拭っている。
シュナってそんなに怖い女なのかな。
平民からしたら貴族ってだけで怖いのかもね。この時代の仕組みって『義親と私』の国バージョンって感じかも。
たとえ自分が悪くなくても、理不尽な事に耐えないと生きていけないんだから。
「じゃあ、私はこれで。」
保健室ってあるのかな。さがそう…。
その場を立ち去ろうとすると、急にミネルバが泣きながら土下座しはじめた。
「フェルト様、申し訳ありません!!わたし、フェルト様にボールがぶつかりそうだからつい…、でも悪気は無かったんです!怒らないで下さい!」
「え?」
何を言ってるの…この人。
意味がわからずその様子を見ていると、またしてもアレックス登場…。
「ミネルバ!どうしたんだっ!!」
「あ…いえ、別に何でもありません…」
「そんな訳無いだろう。こんなに泣いてるのに。」
「いいんです!私のせいなんです!フェルト様にボールがぶつかりそうだったので、助けようとしたのです。肩を少し押したら、フェルト様は転んでしまって怪我を…。」
「まさか、それを君のせいにしたのか?」
「私のせいなのです。『頭を床につけて謝れば許す』と仰ったので、わたし…その通りにしたのに許してくれなくて。」
「シュナ、…まさか、さっきの俺の対応に腹を立ててこんな事をしたんじゃないだろうな!」
何度でも(心の中で)言おう。
なにかね、この茶番は。
てかさ、話をするにしても、私の流血を先に対処してからすべきだよね。
ハンカチもあなた達に返して貰ってないから、額から血が流れ出たままなんだけど。
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