第77話 春山さんからのお礼 2

 春山さんから貰った服を着てダンジョン探索に臨む。


「うん!似合ってるよ!」


「ん、春山さんのセンスが光ってる。とてもいい」


「全く嬉しくないけどな」


 俺は絶賛してる2人にジト目で言う。


 今の俺は、白のブラウスにピンク色のカーディガン。そして膝上までしか長さのない黒色のスカートを着ており、美月や紗枝が着るような可愛らしい服装だ。


 しかも、ご丁寧に新しいウイッグまで買ってくれている。


「この服装……完全にダンジョン探索用じゃないよなぁ」


 上はカーディガンを羽織り、下は膝上までしか長さのないスカートを身につけている。


 そのため動きにくさしか感じない。


「春山さん、もしかして見た目重視で選んだんじゃ……」


「似合ってるから大丈夫だよ!」


「ん、どこに出しても恥ずかしくない女の子になってる。自信持って」


「やかましいわ!」


 相変わらず外野がうるさい。


「まだお前たちが選んだ服の方が良かったぞ」


 美月と紗枝はアホだが、ダンジョンで着る服ということを考慮し、動きやすい服を選んでいる。


 スカートも着たことはあったが、ロングスカートだったため、スカートがめくれる心配を多少する程度で探索することができた。


「紗枝さん!私たちの服の方が良かったって!」


「ん、嬉しいことを言ってくれる。明日、ユウの服をたくさん買ってくるから」


「要らんわ!」


 俺は紗枝たちにそう言って玄関へ向かう。


「じゃあダンジョンに行ってくる。春山さんも配信を見てくれるって言ってたから」


 事前に連絡を取った俺は、春山さんが視聴できる時間に配信をすることにした。


「ん、頑張って」


「お兄ちゃん、頑張ってね!」


 笑顔で俺を見送る2人に「はぁ」とため息を吐きつつ、俺はダンジョンへ向かった。




 俺はドローンカメラを用意して、配信に臨む。


「こんにちは。今日は女装してダンジョンを探索しようと思います」


〈キター!裕哉ちゃん!ドラ⚪︎ンボール探し以来だぞ!〉


〈よっ!待ってました!〉


〈今日も可愛いゼ!〉


「相変わらずテンション高いなぁ」


 待ち焦がれてましたといった反応がたくさん来て、俺はため息をつきたくなる。


〈あれ?裕哉ちゃん、元気ないね?〉


〈なんか嫌なことでもあったのか?〉


 そんな俺の表情を読み取った視聴者が、俺のことを心配してくれる。


「いえ、なかなか気分が乗らないなぁと思ってですね」


〈ど、どうした!今日は本当に元気がないぞ!?〉


〈も、もしかして体調が悪いのか!?〉


「いえ、体調も問題はないのですが……」


〈ってことは服か!妹たちに買ってくれた服が気に入らないのか!〉


〈あり得る!今日はいつも着ている服とコーディネートが違うからな!〉


〈裕哉ちゃんの趣味に合わない物を選んでしまったのか!〉


「!?」


 その言葉を聞いて俺は慌てる。


(まずいっ!今日の配信は春山さんが見てる!俺のテンションが低い原因が着ている服と勘違いされたら春山さんが悲しむぞ!)


 もちろん、気分が乗らない理由は女装してることなのだが、春山さんを悲しませるわけにはいかない。


(っ!今回だけ!今回だけ張り切って配信をするんだ!)


 そう心の中で決意した俺は、テンションを上げる。


「や、やだなー!見てよ!今日の服!なんと俺、いつもより短いスカートを着てるんだー!」


 俺は心の中で血涙を流しながら、全身のコーディネートを見せつける。


〈おぉ!素晴らしい!〉


〈この服を選んだ人、センスあるわぁー!〉


〈いつもより裕哉ちゃんが可愛く見えるぜ!〉


〈なんだよ!スカートが短くて恥ずかしかっただけかよ!心配したわぁー!〉


(ふぅ、何とか誤魔化せたが……はやく家に帰りたい……)


 配信を始めて数分で、そう思わせてくれる。


「そ、そうなんだよ!スカートがいつもより短くて恥ずかしかっただけだ!だから、元気いっぱいだぞ!」


〈良かったぁ。裕哉ちゃんに何かあったのかと心配したぞ〉


〈あぁ。裕哉ちゃんは俺の生きがいだからな。今後、裕哉ちゃんが見れなくなるとなれば、夜しか眠れなくなってしまう〉


〈〈〈〈それな!〉〉〉〉


「健康体かよ!」


 相変わらず、俺の視聴者はバカしかいない。


〈で、今日はどこに行くんだ?〉


「あ、そういえば何も言ってなかったな」


 視聴者から指摘され、まだ女装の話しかしてないことを思い出す。


「今日は95階で虎の抹殺計画を実行する。ヤツら、ギルド対抗戦では俺から逃げやがったからな」


 ギルド対抗戦の予選で俺は3時間かけて虎を25体しか討伐できなかった。


 和歌奈さんから30体討伐すれば罰ゲームなしと言われており、虎を30体討伐できれば、ギルド対抗戦の決勝戦で女装することなんかなかった。


 そのため、かなりの恨みがある。


〈いつまで恨んでんだよww〉


〈そうか、今日が白虎の見納めになるのか〉


〈今までありがとう、白虎。お前たちのことは忘れない〉


〈ダンジョンだからいずれ復活するけどなww〉


 俺は95階に行くことを伝え、95階へ向かった。




*****


【リメイク版について】


 先日、作者はこの作品のリメイク版を投稿しました。


【リメイク版】


https://kakuyomu.jp/works/16817330668215656342/episodes/16817330668215915713


 リメイク版では女装展開のないストーリーとなっております。


 新作(リメイク版)の方もよろしくお願いします<(_ _)>

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