第70話 裕哉、テレビに出演する 2

 俺は春山さんとダンジョンに到着する。


「私はコチラでドローンカメラの準備とインカムの準備に取り掛かります。裕哉さんも配信の準備を行って構いませんよ」


 とのことなので、俺は配信の準備を行う。


 そして準備が完了し、カメラに向けて話しかける。


「こんにちはー」


〈繋がってるよ、お兄ちゃん!〉


〈ん、今日もバッチリ〉


 俺の発言に真っ先に美月と紗枝が返答してくれる。


〈お、今日も配信か〉


〈待ってました!〉


〈さて、今日はどんな面白いこと……ではなく探索をしてくれるのか〉


 そして俺のチャンネルを登録している方々も続々と視聴を始める。


「今日は配信を行う前に、みんなに重大発表があります」


 俺はそこで一拍置き、大声で言う。


「なんと!情熱⚪︎陸に出演することが決まりましたー!」


〈な、なんだと!?裕哉が情熱⚪︎陸に出演!?〉


〈そりゃ重大発表じゃねぇか!〉


〈お前のドキュメンタリー番組とか面白すぎるだろ!〉


〈それ!絶対見るわ!〉


 等々、俺の重大発表に対し、様々なコメントが見られる。


 その内容の多くは自分ごとのように喜ぶコメントで、俺は嬉しくなる。


「お前ら……やっぱり良いヤツだったのか……」


〈当たり前よ!今ではお前の配信が俺の生活の一部になってるからな!まぁ、お前が配信辞めても全く寂しくないけど〉


〈どれだけお前の配信に笑わせてもらったか。間違いなくお前の配信が俺の活力になってるぞ。まぁ、お前の配信が無くても、他の配信見て活力を得るけどな〉


「一言余計だ!」


 相変わらず可愛くない視聴者共。


 そんな視聴者共を無視して俺は言いたいことを言う。


「こほん!というわけで、今日が情熱⚪︎陸の収録だ」


〈えっ!そんなの配信していいのか!?〉


〈俺たち、視聴したら悪い気がするぞ!〉


「安心しろ。許可は番組側にとってある。むしろ、番組側は快く快諾してくれたぞ。宣伝になるからって」


〈なら遠慮なく視聴させてもらおう〉


〈確かに良い宣伝にはなるな。実際、俺はここで配信を見て、情熱⚪︎陸も見る予定だからな〉


 そんな感じで、俺の配信も見て情熱⚪︎陸も見ると言ってくれる人が多くいる。


 そのことを嬉しく思いつつ、みんなに向けて話す。


「だから今日は情熱⚪︎陸のスタッフさんも俺の配信に同行することとなってる。邪魔はしないと聞いてるが、時折、画面に映り込むことがあるかもしれない。その時は気にしないでくれ」


〈了解した〉


〈そのスタッフってあの女性か?〉


 そうコメントされ、俺は後ろを振り返る。


 すると、俺たちにお尻を向けて一所懸命に準備している春山さんがいた。


「そうだ。あの女性が俺と一緒に探索するスタッフさんだ」


〈ほう、100点のケツですな〉


〈良い尻をしている。エッチぃぞ〉


〈大きいお尻を見せつけてるのは俺たちへのご褒美か!?〉


「っ!」


 そう言われて俺は春山さんを隠す。


「ここには変態しかいないのか!」


〈〈〈〈類は友を呼ぶって言うだろ?〉〉〉〉


「俺は変態じゃねぇよ!お前らと同類にするな!」


 俺は視聴者に向けて叫ぶ。


 すると、後ろで変態と騒いでる俺に気づいた春山さんが俺の方に歩いて来る。


「騒がしいですが、準備はできましたか?」


〈う、嘘だろ!?めっちゃ美人やん!〉


〈お前、こんな美人さんを連れてダンジョンを探索するんかよ!〉


〈裕哉ばっかりズルくね!?ただでさえ美女と美少女しか周りにいねぇのに!〉


〈死ね死ね死ね死ね死ね………〉


 俺も美人であることは否定しないが、コメント欄が一瞬にして春山さんのことで盛り上がるのはおかしいと思う。


「どうしましたか?」


 そんなことを思っている俺に首を傾げながら春山さんが聞く。


「い、いえ!なんでもありません!さっそくダンジョンに潜ろうと思います!」


「分かりました。監督にもそのようにお伝えします。ちなみに、何階層に行かれますか?」


「95階です。ギルド対抗戦では白い虎に屈辱的な仕打ちを喰らったので、今日は皆殺しにしようと思ってます。対抗戦で虎が逃げたりしなければ、俺は和歌奈さんから罰ゲームを受けることなく、ギルド対抗戦で女装なんてすることもありませんでしたから」


〈どんだけ恨み持ってんだよww〉


〈【悲報】白虎、全滅する〉


〈モンスターだから一定時間経ったら復活するけどなww〉


 俺は今から95階に行くことを伝えると、何故か春山さんが固まる。


「きゅ、95階……ですか」


 しかも顔を引き攣って。


〈俺もあの人と同じ立場なら絶対引き攣るわww〉


〈死の宣告と同じだからなww〉


〈あの女性の実力は知らんが、95階層を潜ることができる実力なんて裕哉しか持ってないだろ 〉


〈それは行かない方がいいww〉


〈でも、ここで裕哉と一緒に行ったら95階層に潜った2人目の冒険者になるぞ〉


〈確かに!ってなると行ってみたくなる………わけねぇだろww。裕哉と逸れたら死ぬんだぞww〉


「え、えーっと……」


「……?どうしたんですか?」


 俺は春山さんが引き攣る理由がわからず問いかける。


「い、いえ。95階層だと私では足手纏いになってしまいますので、できれば他の階層にしていただきたいと思いまして……」


「なら98階でシェ⚪︎ロンでも倒しますか?」


「なんで95階よりも上に行くんですか!」


〈お、素晴らしいツッコミ。才能ありだな〉


〈必死なんだよww。死にたくないからww〉


「私のオススメは40階です!そこでスライムをたくさん倒しましょう!」


「却下です!スライムなんて強すぎて勝てません!だって捕食者や大賢者とか、チート技ばっかり使ってくるんですから!」


「どこのファンタジーですか!」


〈ホントそれww〉


〈この世界に転⚪︎ラのスライムは出てこねぇよww〉


〈誰だよ!スライムが最強モンスターって裕哉に伝えたの!?〉


〈私たちだよー!〉


〈ん、ユウにはスライムを見たら逃げろって伝えてる〉


〈もう、お前ら喋るなよww〉


 そんなことを視聴者がコメントしていた。

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