第68話 シェ⚪︎ロンに願いを叶えてもらおう! 4

 俺はシェ⚪︎ロンを瞬殺した後、ドラ⚪︎ンボールを求めて歩き出す。


「視聴者のみんなもドラ⚪︎ンボールらしきものが見つかったら遠慮なくコメントしてくれ」


〈だから絶対ないってww〉


〈ダンジョンにドラ⚪︎ンボールがあるわけないだろww〉


〈いい加減諦めろ〉


「うるせぇぇぇ!俺は女装までしてるんだ!絶対にドラ⚪︎ンボールを見つけるまで帰らんぞ!」


〈【悲報】裕哉ちゃん、一生98階層から出られなくなる〉


〈可哀想に。俺、お前のこと絶対忘れないから〉


「やかましいわ!」


 好き勝手言われ、視聴者にツッコむ。


 しかし、俺のツッコミなど聞く耳を持たない視聴者たちが、コメント欄を荒らしてくる。


〈いや【悲報】じゃなくね?俺、裕哉ちゃんおらんでも悲しくないし〉


〈あ、そっか。なら【朗報】にしとくか〉


「おめでたいニュースじゃねぇよ!」


 相変わらず俺の視聴者には変なヤツしかいない。


「好き勝手言いやがって!せっかくドラ⚪︎ンボールを見つけたら1つくらい分けてやろうと思ってたのに!」


〈1つだけもらってもゴミだよww〉


〈お前、実はシェ⚪︎ロンの呼び出し方知らねぇだろww〉


 これ以上、視聴者と会話してても埒があかないと思い、俺はコメント欄を見るのをやめ、歩き出す。


 しかし歩いても歩いてもドラ⚪︎ンボールが見つからない。


「だーっ!全然見つからねぇ!」


〈当たり前だww〉


〈見つかるわけねぇんだよww。いい加減諦めろww〉


「これじゃあ俺が無駄に女装しただけじゃないか!」


 俺は視聴者のコメントに反論する。


「くそっ!イライラしてきたっ!」


 探しても探しても見つからないドラ⚪︎ンボールにフラストレーションだけが溜まっていく。


 そのタイミングで前方から3体のシェ⚪︎ロンが現れる。


〈お、おいっ!3体はさすがにヤベェ!急いで隠れろ!〉


〈もう隠れるのは遅い!逃げるんだ!〉


〈まぁ、落ち着け。3体くらい裕哉ちゃんの敵じゃない〉


〈そうだそうだ。慌てずお茶でも飲みながら視聴しろ〉


〈俺は昼間っから酒を飲んでるぞ〉


〈それは羨ましいっ!〉


〈視聴者の間に温度差があるっておかしくね!?〉


「俺のストレス解消にシェ⚪︎ロンが3体もやってきたぞ。せっかくだしサンドバッグになってもらおうか」


 そう言って俺は不敵に笑う。


〈ほらな。余裕らしいぞ〉


〈青龍って今まで誰も討伐したことないS級モンスターなんだけど!〉


 俺は鞘に納めていた剣を引き抜く。


「グァァァァァ!」


 それを見たシェ⚪︎ロンの1体が突っ込んでくる。


「はぁーっ!」


 もはや作業のように俺はシェ⚪︎ロンを顔面から真っ二つにして、残り2体に特攻する。


「俺の願いを叶えろやーっ!」


 “ザシュっ!”


 フラストレーションの溜まった俺の一撃に1体のシェ⚪︎ロンが魔石となる。


 そして残り1体となったシェ⚪︎ロンは俺に突進してくる。


 俺はその突進を横目に見つつ、剣を鞘に納める。


〈お、おい!アイツ、剣を鞘に納めたぞ!〉


〈死ぬ気か!?〉


〈それはさすがに自殺行為だ!はよ、剣を抜け!〉


〈おー!久々にお兄ちゃんのボクシングが見れるよ!〉


〈ん、超久々。今回は何秒耐えることができるだろうか………相手が〉


〈あ、青龍がリンチを喰らうのは確定なんだ〉


 シェ⚪︎ロンが突進してくるのを理解している俺は、その場でジャンプして回避する。


〈跳びすぎww。50メートルくらいジャンプしてるぞww〉


〈今からボクシングが始まるんだよな?もう既に、別の競技が始まってないか?〉


 そして上空からライ⚪︎ーキックを喰らわせる。


「ライ⚪︎ーキック!」


「グォっ!」


 俺が流星のごとく落下するところを視認したシェ⚪︎ロンが驚きの声を上げる。


 しかし、回避することは叶わず“ドゴっ!”という音が響き渡り、シェ⚪︎ロンが地面にクレーターを作って埋もれる。


〈凄すぎww〉


〈青龍が地面に埋もれてるんだけどww〉


「手加減しといた。お前には俺のストレスを解消してもらわないといけないからな」


 俺は魔石へと変わらないよう、1番硬い部分にライ⚪︎ーキックを喰らわせたため、シェ⚪︎ロンは地面に埋まるだけで魔石へと変わっていない。


 そんなシェ⚪︎ロンに歩いて近づき、俺は手加減しつつシェ⚪︎ロンを殴る。


「おらっ!ドラ⚪︎ンボールを出せ!お腹か!?お腹の中に保管してんのか!?」


 そして拳のラッシュを喰らわす。


〈青龍がサンドバッグにされとるww〉


〈埋もれてる青龍が抵抗できずに殴られてるぞww〉


〈ヒュー!お兄ちゃん、かっこいい!まるでプロボクサーだよ!〉


〈ん、きっとユウのボクシングセンスにプロボクサーも驚いてる〉


〈青龍をサンドバッグにしてたら誰でも驚くわww〉


〈むしろプロボクサーが引退するレベルww〉


 俺は手加減しながらシェ⚪︎ロンをサンドバッグにする。


「どこにあるか分からない?お前、神様だろうがっ!」


 そう言って殴り続ける。


〈モンスターに分かるわけないだろww〉


〈理不尽な理由でサンドバッグにされてる青龍が不憫なんだがww〉


〈てか、青龍を神様だと思ってるんなら、神様をサンドバッグにしてる事実に気づけww〉


 そんな感じで俺はストレス発散をする。


「ふぅ。いい汗かいたな。そろそろ討伐するか」


 俺は飽きたので思いっきりシェ⚪︎ロンを殴る。


 “ドゴっ!”という良い音と共に地面に埋まっていたシェ⚪︎ロンが魔石となる。


「さて、飽きたし帰るか」


 俺は踵を返して出口に向かう。


「帰ったら妹たちとドラ⚪︎ンボールを見つけることができなかった原因を考えるか」


〈〈〈〈まだ諦めないんかよ!〉〉〉〉


 そんなことを視聴者がコメントしていた。

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