第64話 初めてのダンジョン配信 2
俺は80階フロアボスを瞬殺し、『空飛ぶトカゲ』のいる90階を目指す。
そして90階へ到着する。
「ここは『空を飛ぶトカゲ』が大量にいるフロアだ」
〈トカゲが空飛んでるのかー!どんな感じかなー?〉
〈きっとトカゲに羽が生えてるだけのモンスター。どんなのかはやく見てみたい〉
「ははっ。焦らなくてもたくさんいるから……っと、そんな話をしていると、さっそく出てきたぞ」
俺は目の前に現れた『空飛ぶトカゲ』を視認する。
〈お、お兄ちゃんっ!こ、これってドラゴンだよ!逃げなきゃ!〉
〈ユ、ユウ。逃げた方が……〉
すると、トカゲを見た美月と紗枝が逃げるよう提案してくる。
「大丈夫だよ。コイツならすでに50体くらい倒してるから」
そう言って2人を安心させようとするが、2人は聞く耳持たず、逃げるように促してくる。
「確かに、最初見た時は驚いた。ドラゴンっぽい見た目をしてるからな」
全身には赤い鱗を纏い、口からは火のようなものが見える。
それに加え、凶暴そうな目に人間の体など簡単に噛みちぎることのできそうな歯。
「でもな、見た目に惑わされたらダメだ。先入観で敵を格上と決めつけたら勝てるものも勝てないんだ」
これは和歌奈さんから教えてもらった言葉。
見た目や事前の情報から『勝てない』と自分で思ってしまったら、良いパフォーマンスができず、負けてしまう。
すなわち、ダンジョンで死を迎えてしまう。
そのため、そういった先入観を捨てろと教えられた。
「牛のように俺が倒すところを見ないと安心しないよな」
未だに逃げるようにコメントしている2人を安心させるため、トカゲの討伐に移る。
「ガァァァァァッ!!」
俺に攻撃を仕掛けようと、咆哮しながら俺目掛けて突っ込んでくる。
〈お兄ちゃんっ!〉
〈ユウ!危ないっ!〉
コメント欄を見てないが、2人から心配されていることがわかる。
「安心しろ、2人とも」
そう言って俺は腰にぶら下げている剣の柄を握る。
そして大きな口を開けて襲いかかってくるトカゲをギリギリまで引き付け、一気に剣を引き抜く。
「はっ!」
すると、俺に襲いかかってきたトカゲが真っ二つに切り裂かれ、魔石だけを残して消滅する。
〈う、うそ!お兄ちゃんがドラゴンを……〉
〈ユウ、すごい。ドラゴンを一瞬で倒すなんて〉
「ははっ、2人ともありがと。でも、このモンスターは何度も言ってるけどドラゴンじゃないぞ」
〈そ、そうなの?〉
〈ドラゴンっぽいけど……〉
「あぁ。だって冒険者になって1ヶ月も経ってない俺が倒せるんだぞ?ドラゴンなわけないだろ」
〈た、確かにっ!〉
〈ドラゴンといえばきっと最強モンスター。そんなモンスターが1ヶ月も経ってない新参者のユウに瞬殺されるなんてあり得ない〉
〈そうだね!お兄ちゃんでも倒せるんだから、他の冒険者でも瞬殺できるね!〉
「だろ?だから、これからコイツを見ても慌てなくていいぞ。今みたいに瞬殺するからさ」
〈なるほど!ドラゴンもどきなんだね!〉
〈ドラゴンに似せるのはやめてほしい。雑魚は雑魚なりに雑魚い見た目をすればいい〉
「俺もそう思うが、見た目は強そうなやつがこれからもたくさん出てくる。でも、出てくるモンスター全てが雑魚だ。だから安心して視聴してくれ」
〈わかったー!これからは慌てないよ!〉
〈ん、ユウの身は心配せず、配信を楽しむ〉
「あぁ。もう少しトカゲを討伐する予定だから、安心して見ててくれ」
そう言って俺はトカゲを探し回る。
すると、すぐに1体のトカゲが目に入る。
〈お兄ちゃん!トカゲが殺されに来たよー!〉
〈ん、サクッと倒して〉
「あぁ、任せろ!」
俺は特攻しているトカゲに対し、先程と同様に素人では視認できないほどのスピードで剣を振る。
すると、顔面から真っ二つにトカゲが裂ける。
「グォォォ……」
そして力のない声と共に地面に落下し、魔石となる。
〈すごいよ!お兄ちゃんっ!〉
〈剣が見えなかった。ユウ、すごい〉
「ははっ、ありがとう。でも、このモンスターは雑魚だから、そんなに褒めなくてもいいぞ」
〈確かに!見た目は強そうだったけど、ものすごく弱かったね!〉
〈強そうな叫び声をしてたのに〉
「他にも『白い虎』や『赤い雀』、『亀と蛇が合体した雑魚』や『シェ⚪︎ロン』といった、見た目だけ強そうなモンスターが出てくる」
〈〈シェ⚪︎ロン!?〉〉
「あぁ。シェ⚪︎ロンの見た目をした雑魚だけど」
〈すごい!そんなモンスターがいるんだ!〉
〈ん、会ってみたい。そしてお願い事をしたい〉
「それが、お願い事を言っても叶えてくれないんだ。それどころか襲ってくるし」
〈それはお兄ちゃんのやり方がダメだったんだよ!〉
〈ユウはボールを7個集めた?〉
「そーいえば集めてないな」
〈だからダメだった。次はボールを7個集めて『シェ⚪︎ロン』に挑もう〉
「そうだな。もしかしたらダンジョンのどこかに転がってるかもしれない」
〈だね!私、願い事考えとくよ!〉
〈ん、私も願い事考えないと〉
「気が早いなぁ」
そんな話をしながら、俺の初めてのダンジョン配信が終わった。
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