第56話 底辺配信者、ギルド対抗戦に参加する。17

 芽吹ちゃんのエクスプロージョンで敵2人を気絶させ、 残りの敵は『牙狼』ギルド2名、『霧雨』ギルド1名となる。


 対する俺たち『閃光』ギルドは5名全員が生き残っている。


 しかし、美柑は重傷を負っており、千春さんも美柑と合流するまでの間、1対2と不利な状況で敵と戦っていたため、満身創痍の状態。


 そして、愛菜さんは『霧雨』ギルドで最も実力者であるハルカさんと対峙しており、防戦一方だ。


「よしっ!次は千春さんの援護に回るぞ!千春さんの手があけば回復してもらおう!」


「はいっ!」


 俺はお姫様抱っこしている芽吹ちゃんへ次の行動を確認する。


「というわけで下ろすぞ」


 そう言って俺は芽吹ちゃんを地面に下ろす。


「あっ……」


 すると少しだけ残念そうな顔をする。


「ど、どうした?」


「あ、いえ。裕哉先輩にもう少しだけお姫様抱っこしてもらいたかったなぁーって思っただけです。って、こんな時に思うことじゃないですね」


「えへへ」と苦笑いする芽吹ちゃん。


〈芽吹ちゃん、裕哉ちゃんにデレデレやん〉


〈俺の芽吹ちゃんがぁぁぁ!!!〉


〈あれ?俺たちは今、何を見せられてるんだ?〉


〈美少女と女装している美少女のイチャイチャだな。癒されるわ〉


〈違うわww。冒険者同士の戦いを見てるんだよww〉


 俺は芽吹ちゃんの発言に驚くが、すぐに冷静になる。


「俺にお姫様抱っこされることで移動するエネルギーを節約しようとする気持ちはわからないこともないが、自分の足で移動できるなら、自分の足で向かった方がいいぞ」


「………そうですね」


 なぜかガッツリしながら納得される。


〈まさかの鈍感キャラかよww〉


〈美柑ちゃんをお姫様抱っこした時も美柑ちゃんの好意に気付いてなさそうだったからな。死ねばいいのに〉


〈てか、あと千春ちゃんと愛菜ちゃんをお姫様抱っこしたらコンプリートするくね?〉


〈そんなことしたら俺たちから裕哉ちゃんが殺されるだけだ〉


〈だから返り討ちされるわww〉


 ガッカリしている芽吹ちゃんと一緒に、千春さんと美柑の援護に回るため動き出す。


 遠目で見る限り、戦況は押されている。


 理由としては、重傷を負った美柑が弓で千春さんの援護をしているが、千春さんがバフの得意な支援タイプなので、いつ千春さんが脱落してもおかしくない状況だ。


「芽吹ちゃん。俺が時間を稼ぐから攻撃の準備をしてて。美柑と千春さんを芽吹ちゃんの攻撃が当たらない位置に移動させるから」


「はいっ!」


 俺は芽吹ちゃんに指示を出して詠唱させる。


 そして本気の脚力で千春さんのもとへ向かう。


 すると、千春さんが短剣2本で『牙狼』ギルド2名の剣技を捌いており、なんとか耐えている様子が見えた。


(どうする。千春さんが2人からの攻撃を耐えてはいるが、3人の距離が近すぎる。これじゃ、地面に斬撃を飛ばしたら千春さんに危険が及んでしまう)


 現在の俺は敵への直接攻撃を愛菜さんから禁止されており、今までの敵は地面に斬撃を飛ばす、もしくは地面にライ⚪︎ーキックを見舞うことでリタイアさせてきた。


〈さぁ、千春ちゃんにダメージを与えずにどうやって助ける?〉


〈『牙狼』ギルド2人の足元に攻撃をしたら絶対に千春さんが巻き込まれるからな。今までの方法じゃ千春さんを助けられないぞ〉


(となると、これしか方法はないよな)


 俺は助走をつけたままジャンプして、剣を地面に向ける。


 そして、千春さんから数10メートル離れた地面へ剣を突き刺す。


 すると“ドゴっ!”という爆発音のようなものが周囲に響き渡る。


「な、何!?」


「地面が揺れてるっ!」


 その衝撃を受けて美柑や千春さんを筆頭に、周囲にいた人たちがバランスを崩す。


〈いやいやww。どんな威力してるんだよww〉


〈裕哉が攻撃した場所は裕哉を中心に地面が抉れ、その周囲は地面が割れてるんだけどww〉


〈立ってるのもままならない程の威力やんww。千春さんたち、戦いどころじゃなくなってるぞww〉


〈でたーっ!お兄ちゃんの地割れ攻撃!別名マグニチュード7!超が付くほどのレア技だよ!〉


〈その通り。あれは封印されし技の一つ、地割れ攻撃。面白半分であの攻撃を地面にし続けたら剣が折れたので、泣く泣く封印することになった技。マグニチュード10を目標にしてたけど断念する結果となったのが未だに悔しい〉


〈そりゃ折れるわww〉


〈むしろ折れないと思って連発してたんかよww。剣が可哀想なんだがww〉


〈いや、マグニチュード7を人間が引き起こすとかヤバすぎだろww〉


〈てか、封印されし技の一つなんだ。あと何個あるかものすごく気になるww〉


 俺の地割れ攻撃で立ってることもままならない千春さんたちを確認し、狙い通り戦いが中断しているのを確認する。


 そして、俺は急いでふらふらしている千春さんを助けに行く。


「きゃっ!」


「すみません。俺のお姫様抱っこなんて嫌だと思いますが、少しだけ我慢してください」


 そう一言声をかけて芽吹ちゃんのもとに向かう。


「今だよ!芽吹ちゃん!」


「揺れのせいで詠唱が中断しました!むしろ、裕哉先輩が何事もないかのように立ってることに驚いてます!」


「………そりゃそうだ」


 美柑に至っては立つことができず倒れ込んでるくらいだ。


「じゃあ、俺が片付けてきます」


 そう言って地面に手をついて立ちあがろうとしている『牙狼』ギルド2名の足元にライ⚪︎ーキックを見舞う。


 “ドカっ!”という音と『牙狼』ギルド2名が明後日の方向に飛んでいくのを確認。


 そして「『牙狼』ギルド2名の気絶を確認。リタイアします」というアナウンスを聞いた。

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